第18話「休日のデート?」
さっそく私服に着替え準備をするノエル。
しかし…僕には気になることがひとつあった。
「そういえばアイリの服、昨日の戦闘のせいでかわからないけどちょっとボロボロでかわいそうだよなぁ…せっかくあんなに喜んでいたのに」
少し考える。
「でも家には女の子の服なんてないしなぁ…どうしよう」
コンコン!部屋をノックする音が聞こえた。
「はい、どうぞ」
ガチャっとドアが開き、アイリが入ってきた。
「ノエルー準備出来た?」
「僕のほうはもうすぐ終わるんだけどさ、そのアイリはその格好でいいのかなって…」
「えっ私?」
「アイリが今着ている服、昨日の戦闘の影響かわからないけど汚れてるからさ。どうしようかなって」
「それなら問題ないよ」
「どうして?」
「私の戦闘時以外で今着ている服も戦闘時に着ている服も私の体と同じナノリペアマシーンが入っているから、時間が経てば修復してくれたり汚れや菌とかも除去してくれるんだ」
「あぁなるほど…ちなみにどれぐらいで治る?」
「う~んざっと見て5時間ぐらいかな…」
「5時間かぁ…」
今は朝の8時なのでアイリの服が修理する頃には13時でお昼が過ぎてしまう。となると、じいちゃんの買い物を済ませるのが1~2時間ぐらいと予想してアイリと一緒に街をまわる時間が15時からということになる。これはちと時間がもったいない気がした。
「アイリ」
「ん?何」
「5時間だとアイリと外で一緒にいる時間が短くなっちゃうから着替えたほうがいいよ」
「う~ん、そうだね。うん、で着替えは?」
肝心のアイリの着替える服がなかった。
「そうだよなぁ…う~ん」
と悩んでいる途中
「あっ私ノエルが着ている服着てみたい!」
突然のアイリからの提案だった。
「えっ?僕の服」
「うん、ほらこれとか結構私に似合いそうじゃない?」
部屋のハンガーにかかっているパーカーを指さしそう言った。
「僕の服で良ければいいけど、じゃあちょっと適当に服を出してみるね」
そう言うと僕はアイリが着てもおかしくなさそうな服を何着か押し入れから出した。
「とりあえず、この中からアイリが着たい服適当に選んで着替えて。僕は部屋の外にでてるから、着替え終わったら呼んでね」
「うん、わかった」
そう言うと僕は部屋を出てリビングでゆっくりした。
「アイリと一緒に出かけるって言ってもどこへ出かければいいのかなぁ…でも基本こういうのって映画館とか喫茶店とかファミレスとか行けば良いのかな?とりあえず…」
今日のお出かけは昨日のお礼も兼ねたお出かけなのだ。粗相は出来ないので携帯電話にメモ欄を作り、じいちゃんの買い物が終わったあとの計画を作る。そして…
「ノエルー!着替え終わったよ」
どうやらアイリが着替え終わったみたいなので呼ばれたようだ。
「今行くよー」
自分の部屋の前まで行きノックをする。
「入るよ」
「うん、どうぞー」
ガチャッ
「エヘへ、どう?」
アイリがそう言うと部屋の中でくるりと一回転をする。
そこにはいつも僕が見ているアイリとは違った印象を受けたアイリがいた。僕の服を着たことによりかなりボーイッシュな印象に変わったようだ。黒いメッシュキャップを被り、上のシャツは白着ている。その上から黄色いパーカーを着て、パンツは膝丈のパンツを穿きかなり活動的でボーイッシュって感じだ。
「うん、結構いい感じだよアイリ」
「ほんと、ノエルに褒められて…エヘへ嬉しいなぁ♪」
「アイリってファッションセンスとか結構あるんだね」
「ノエルはファッションセンスある人は好きなの?」
唐突な質問をしてくるアイリだった。
「え…う~ん、まぁないよりはあったほうがいいんじゃないかな」
「そっか…じゃあアイリ頑張るね」
「う、うん…まぁ程ほどにね。じゃあ出かけようか」
「うん♪」
アイリと一緒に玄関に行き、外へ出る。
「じゃあ、まずはじいちゃんに頼まれた買い物から済ませるよ」
「は~い」
意気揚々と歩くアイリ。すると…
「アラ、ノエルサン、アイリサンオハヨウゴザイマス」
いつものご近所のヒューマノイドドールに挨拶をされた。
「おはようございます」
「あっケイちゃんおはようー」
耳慣れない名前が聞こえた。
「ケイちゃん?」
「うん、この子のあだ名。KB-660だからケイちゃん」
「そ、そうなんだ…」
少しぽかんとしてしまった。
「今日ハオフタリデオデカケデスカ?」
「うん、そうだよーノエルとデ-トなんだー今日は!」
「えっ!?」
デ-トという言葉に戸惑いを隠せなかった。
「アラ、ソウナンデスカ?オキヲツケテ。タノシンデキテクダサイネ」
「うん、楽しんでくるねー!」
そう言うとノエルはそのままスタスタ先を行ってしまった。
「(う~ん、デートではないんだけどなぁ…)」
「ノエル何してるのー?早くいこうよー!」
先に歩いていたアイリに大きい声で呼ばれる。
「あ、ご、ごめん!いやあの…」
「ノエルー!!何してんの!」
アイリが怒りそうなので誤解を解かずにその場からアイリの元まで走っていった。
「オキヲツケテ!」
しばらく歩いて行くと首都ダリアの大通りに出た。ここは交通が盛んで車などの通りが激しい。だがまだ10時前なので交通の量はそこそこという感じだ。そして駅に着いた。
「じゃあ、アイリこれ渡すね」
1枚のプラスチック製のカードをアイリに渡す。
「何これ?」
アイリはカードを手に持ち不思議そうな感じで聞く。
「あれ、知らない?トスカ(TOSCA)って言ってこれにお金を入れてチャージして電車に乗ったりするためのカードだよ。あそこの機械でチャージするんだ」
「へぇー」
「僕がお手本見せるからよく見ててね」
「うん」
駅の入金装置にカードを置きチャージしたい分の金額を押しお金を入れる。そして点滅する。
「この点滅している間はカードを動かしちゃダメだからね」
「うん」
そして点滅が終わりチャージが完了する。
「これで終わり、はい…じゃあアイリやってみて」
「わかった」
アイリにお金とトスカを渡し、やらせてみた。
「えーとカードを乗せて金額を…そして点滅が終わるまで…出来たー!」
じゃあ行こうか
駅の改札へ行き電車のホームに行く。休日の朝方なのであまり人はいない様子だ。
「みんなこれ電車に乗る人なの?」
「うん、そうじゃないかな」
「間もなく4番ホームに電車が参ります。白線の内側に下がってお待ちください」
駅のアナウンスが流れ、電車が来た。
プシューッとドアが開く。
「乗るよ、アイリ」
「うん」
電車に乗り込み、じいちゃんの買い物をする店がある駅まで移動した。しばらくしてそして目的地に着く。
「うわーなんか色んな看板があるビルとか建物がいっぱいだね」
「うん、ここは電気街だから色んなパーツとか部品とか売っているんだ。僕も結構来るんだよ」
「へぇーそうなんだ」
「僕は主にゲ-ム目的だけどね」
電車を降りて駅からじいちゃんの書いたメモを見ながら店を目指す。すでに色んな店が開店時間を迎えているので街が活気づいている。
「新商品入ったよ、そこのお譲ちゃんどう?」
「えっ、私?」
「ほら、この前発売したばかりのメモリとかどう?今がお買い得だよ」
「へぇー…」
「ええとこの辺っぽいなぁ…あれ、アイリって…もう!」
お店の人に何やらつかまって話しかけられているアイリ。何やらパソコンショップの前で店員に話しかけられている。
「ちょっと、アイリ何してんの?行くよ、ほら」
「あっ…うん、ごめんね。おじさんじゃあね」
「もう…アイリああいうのは基本相手しちゃダメだからね」
「えっ?そうなの」
「こういう場所では色んな人に声をかけられるから、イチイチ相手してたらキリがないから」
「そうなんだ。うん、今度から気をつけるね」
しばらくして歩き、じいちゃんのメモにのってた店に着く。
「ここでいいみたいだな…すいませーん」
店内は少し散らかっており、店の中もちょいと暗い。
「…いらっしゃい、何か用で?お客さん」
何やらちょっと頑固そうで職人気質の50歳ぐらいのおじさんが出てきた。
「あっす、すいません、あのーこのメモに書いてある部品が欲しいんですけど、ありますかね?」
僕はそう言うと店主らしき人にメモを見せた。
「ちょいと拝借しますよ…ふむふむ」
店主がメモに目を通す。
「あぁこれなら一通りあるから、今店の在庫から出してくるから待っててください」
「はい」
そう言うと店主は店の奥へと行った。その間暇だったので店内を見回す。中の様子を見る限り結構長くやっている店だというのはわかる。今では中々お目にかからない真空管アンプやら色々な部品が置いてある。時計もアンティークみたいな感じで今時珍しい鳩時計だ。
「なんか色んな機械の部品がいっぱいだねぇ」
「うん、そうだね。でもここならじいちゃんが研究で使う部品が全部揃うのも納得かな。うわ、すごいこんなのまであるんだ…」
「何それ?」
僕が言った一つの緑色の板を見てアイリが聞いてきた。
「基盤って言って昔のゲームで使われていた部品なんだよ。今は全然見かけなくなっちゃたけどね」
「へぇー…そうなんだ」
「お待たせいたしました」
そんなことを話していると店主が裏から出てきた。
「あっどうも…」
「メモに書いてある部品一通りあったので」
「あ、そうですか。ありがとうございます。じゃあお会計お願いします」
「はい、毎度どうも。合計で2万4000フラルになります。」
「じゃあ3万フラルで。あと領収書下さい。」
「はい、じゃあ6000フラルのお返しと保証書です。領収書の宛名は?」
「ウィリアム・ゼーべックでお願いします」
「はい、ええとウィリアム・ゼーべックと…ん?君ゼーべックさんのお子さんか何か?」
「はい、そうです。僕のおじいちゃんですけど、それが何か?」
「いやぁゼーべックさんはうちの店のお得意さんなんでね…最近来ないから元気かなと思ってね」
「そうなんですか、大丈夫です。元気にしてますよ」
「そうか、それは良かったよ。あとそっちの子は?」
「私?」
アイリのほうを見る。
「あぁ…その…妹なんです。僕の」
「妹…ふむ、そうか。いや通りで2人共顔が似ていると思ったよ」
「えっ…」
アイリと僕の顔が似ている?少し困惑した。本当は僕とアイリは何も関係なく、アイリの存在を隠すために便宜上妹としているだけなので本来は似ているはずはないのだが…。
「ん…どうかしたのかい?」
「あっ…いえ、すいません。その…あんまり言われたことないもんで」
「そうかい、まぁ兄妹仲良くしろよ。はいこれ領収書ね。毎度あり」
領収書を受け取りアイリと一緒に店を出る。
「ねぇねぇノエル、私とノエルが似ているだって。似ているかな?」
アイリが僕の顔をまじまじと見てくる。
「う~ん…」
そう言えばどことなくアイリは前から僕の母さんにたまにだがダブって見えることがごくたまにある。それがたまたまなのかわからないが。
「どうだろ、社交辞令で似ているっていう人もいるから」
「そうなんだ。でも私はノエルと似ているって言われてちょっと嬉しかったなぁ。エヘへ♪」
やたら上機嫌なアイリ。ふと時計を見るとそろそろお昼の時間になってきた。そう言えばお腹も空いてきた感じもする。
「じいちゃんの買い物も済ませたことだし、アイリそろそろお昼にしようか。僕お腹減ってきちゃって、どこかお店に一緒に入ろう」
「うん!」
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