第14話「ファルシュの罠」

「じゃあ、アイリ僕は教室戻るからアイリはもう帰ったほうがいいよ。あんまり長居するとまずいから」


「うん、わかった。今日の帰りは昨日と同じ時間?」


「えーと…それがね、今日は補習呼ばれちゃったからちょっと遅くなりそう」


「ホシュウ…?補習って何」


「うん…まぁ簡単に言っちゃうと、勉強が出来なかった人のために残ってもっと勉強するってことかな…」


「そうなんだ…じゃあノエルってあんまり勉強出来ないんだね」


アイリが結構ストレートできついことを言う。


「ま、まぁそうだね」


「じゃあ学校と補習頑張ってね」


「遅くなりそうならこの前渡した携帯に連絡するから」


「わかった!じゃあ学校と補習頑張ってね!」


そう言ってアイリと別れた。


教室に戻るとメリッサとアレックスがこちらに駆け寄ってきた。


「大丈夫だった?ノエル君…」


「あ…うん大丈夫」


「結構説教長かったみたいだな…大丈夫か?」


そういえばメリッサとアレックスには何も伝えずに教室を出てしまったので僕が外でアイリと昼食を取っていたことを知っているわけがなかった。この時間まで僕がファルシュ先生にお説教を食らってたと思うのは無理もない。


「あ…いやその…実はお説教はすぐ終わったんだよ。その…呼び出された理由も小テストの結果が悪かったてだけで…」


「えっ?そうなの」


「じゃあ何でこんなギリギリの時間に教室に戻ってきたんだよ」


「その…なんか戻るの気まずくて、外でお弁当食べてた…はは」


心配そうな顔をしていた2人が一気に肩の力が抜けた感じだった。


「もう…変に心配させないでよね!」


「なんかノエルらしいっちゃらしいけどな」


そして放課後…


「おいノエル帰ろうぜ。帰りゲ-セン寄っていかね?」


「あっごめん…その…」


「ん…なんだよ?」


そういえばアレックスには補習のことは話していなかった。


「僕小テスト悪かったからちょっと補習くらっちゃって…」


「補習って歴史の…?」


「うん」


「そっか、じゃあ仕方ねぇな…」


「ごめんねアレックス」


「…ノエル」


「何?」


「バックレないか?」


「え…バックレないかって…補習を?」


「あぁ…」


少し返事の間が空いた…。いつもふざけているアレックスじゃないってことは僕でもわかったからだ。


「い、いやぁ…さすがにまずいでしょ」


「ま…まぁそうだよな」


「うん」


「その、なんだまぁ…気をつけろよ」


「えっ?」


「なんかわからないけど、最近のお前ちょっと変だからよ…。今日窓から来た女の子のこともそうだけど…別に無理に話せって言ってるわけじゃない…話したくなったら話してくれれば良いよ」


「アレックス…」


「じゃあ俺帰るわ。お先」


そう言うとアレックスは教室を出て行った。アレックスは予感してたのかもしれない・・・。このあと僕の身に降りかかる出来事を…


そして職員室の前まで来た。


コンコン…

職員室のドアをノックをしドアを開ける。


「失礼します、ファルシュ先生いますか?」


尋ねたがファルシュ先生はいないようだ。


「あれ…いないのか。じゃあまたちょっと後で…」


「ノエル君」


「ん?」


後ろから声をかけてきたのはファルシュ先生だったようだ。


「あ…先生」


「ごめんなさいね、ちょっと準備に手間取ってしまって」


「そうなんですか。僕のほうはもう準備出来てるんで」


「…じゃあ行きましょう」


ファルシュ先生と並んで歩いて行く。


「あの…先生…」


「何かしら?」


「なんか服装がいつもと違いませんか?」


「あら?ノエル君はこういうの嫌いかしら?…どうこの服?似合うかしら?」


「え…?」


「えっ…て先生ノエル君のために気合いれて着替えて来たんだけどなぁ…」


上目遣いでこちらを見てくる。


「あぁ…はい、とっても似合っていますよ。」


「ウフフ、ありがとう」


「ところで補習終わるのってどれぐらいになりますかね?」


「そうね…まぁノエル君次第ってとこかしらね」


「そうですか…」



1回校舎から中庭の通路を歩いて行く…。僕は少し違和感を感じた。


「あの…先生?こっちは旧校舎ですよ…」


「ええ、そうよ。新校舎のほうはうるさくてあまり集中出来ないと思って、あえてこちらを選びました」


旧校舎はあまり整備が整っていなくちょっと不気味だ。廊下を歩くとキィキィと木が軋む音が聞こえる。そして薄暗い教室に着く。


「さぁ、入りましょう」


「…はい」


ガラガラと開けると何やら掃除している人がいた。


「あっ…ここ使いますか?」


掃除をしている用務員のお爺さんが訪ねてきた。


「えぇ…ちょっと今から使うもので、使ってもよろしくて?」


「すいません、今出て行きますね」


そういうとその用務員のお爺さんは教室から出て行った。


「(あんな用務員の人うちの学校にいたっけ…)」


「さぁ、では補習を始めます。教科書を開いて」


「はい」


だがしかし一つ気になったことがあった。


「先生…その教卓に置いてある赤い水晶何ですか?」


「あぁ…これ?気にしないでちょうだい。ノエル君は前を向いて授業に集中してくれればいいから」


「え…あ、はい」


いつもと同じように今日授業でやった内容をもう1度補習でやってくれた。しかも物凄く丁寧に。1対1の授業なので僕が下を向くとちゃんと前を見て!と言われる。


そういえば僕が気になったのが小テストだ…。僕は確かに小テストはお腹が空いていたので適当に小テストをやったのは覚えている。でもあんなにひどい点数になるほど手を抜いた記憶もない。先生に僕の回答消しました?と聞きたかった。しかし半分は怖くて聞けなかった。もう半分は回答を消す理由がわからなかったからだ。


補習を開始してから数十分経った。


「そういえばノエル君…」


「はい?」


先生が僕に近寄ってきた。


「な、何でしょうか…?」


顔に先生の豊満な胸が当たりそうな距離で少しドキっとした…。


「フフフ…」


先生が笑うと僕の前で指をパチンッと鳴らした…。



「ん…?」


先生が僕の方を見てしかめっ面を突然した。


「ノ、ノエル…くん?」


「だから何でしょうか先生」


もう一度先生は指を鳴らした。…が僕には意味がわからなかった。すると先生が口を開いた。


「ノ、ノエル君…今日授業中に外から入ってきた女の子はあなたの知り合い?」


「え…ど、どうしてそんなこと聞くんですか…?」


突然の質問に心臓がドキッとした…。ここに来てこのタイミングで説教か何かが始まると思った。


「あ…いや、何でもないわ、忘れてちょうだい…」


「そ、そうですか…。でも先生こそいきなり指鳴らしてどうしたんですか?癖か何かですか?」


「えっあぁこれね…そ、そうちょっと癖なのよ(何でこの子催眠状態にならないの…?水晶の効力が切れたのかしら)」


「おせっかいかもしれないですけど、人前ではやめたほうがいいですよ」


「そ、そうね…ごめんなさいちょっと職員室に補習で使う資料を忘れちゃってきて待っててもらえるかしら?」


「あぁ、はい別に構わないですけど…」


そう言うと先生は教卓に置いた赤い水晶を持って教室から出て行った。


「あの赤い水晶何なんだろう…」





教室から出て小走りに職員室とは違う方向へ走るファルシュ。そして先ほどの用務員の老人に話しかけるた。


「ラング、この水晶効力が切れているわよ…。新しいのと交換してちょうだい」


ラングと呼ばれる用務員の老人が帽子を取り、ファルシュが差し出した水晶を手にとって良く見てみる。


「いえ…そんなはずはありません。今見ましたが効力が切れている様子はないですね」


「そんなわけないわ!さっきターゲットの生徒にこの水晶を使ったけど全く効かなかったのよ。いいから新しい水晶を渡すか、直接あんたが術を使うかよ」


息を荒くしてしゃべる。


「妙ですな…。この水晶が効かない人間など特別な訓練でもしてない限り早々いるものではないのですが…」


「じゃあ何私が悪いっていうの!?」


「わかりました…では私めが行きましょう…。しかしヴィオラル殿…念には念をと言ってましたが…」


「えぇ、言ったわよ」


「その念がいま必要になったかもしれませんな」





一方その頃家でノエルの帰りを待っているアイリはというと・・・


「アハハハハ!」


アイリがテレビの前で爆笑していた。夕方のお笑い番組を見ていたのだ。


「このお笑い芸人の人面白いなぁ!後で動画ネットで調べようっーと」



ブゥーン!ブゥーン!ブゥーン!


机に置いておいたノエルから渡された電話のバイブ音が鳴っていた。


「あっ!…ノエルからだ。もう補習終わるから連絡来たのかな」


すっと電話を取るアイリ


「もしもしノエル、もう帰ってくるの?」


「フフフフ…」


「えっ…誰?あなたノエルじゃない…」


電話の声の主はノエルではなく女の人の声だった。


「えぇ…残念ながらノエル君じゃないわよ。ノエル君は今ちょっと電話に出れない状況でね…フフフ」


「ノエルに何したの!」


「別に何もしてないわよ…でもアイリちゃんが私の言うことに従わなかったら何かするかもね」


「私の名前…何で知っているの?」


「あなたのことなら良く知っているわよ…。人間ではなくヒューマノイドブレードでありType-11という名称。正式名称YHB-011って名前もね」


「…!?」


アイリは驚きで声を出せなかった。なぜこの電話の相手は自分の秘密を知っているのだろうと…。


「とりあえずこちらの言う指定場所に来てもらおうかしら?拒否すれば・・・わかっているわよね?」


「…わかった。そっちの言うことに従うわ。でももしノエルを少しでも傷つけたら絶対にあなたを地獄の底まで追いかけて…殺す!」


「フフフ、怖いこと言うのね…。大丈夫、あなたがこちらに従えば約束は守るわよ。場所はあなたの電話に座標を送ったからその場所に来てちょうだい」


「わかった」


「じゃあ、待ってるわよ…ウフフ」


そう言うと電話が切れた。アイリは指定された座標を確認し、一目散に家から出て行った。


(ノエル無事でいてね…今助けに行くから…!)

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