第12話「見つけた…」
昨日の放課後…
人気のない旧校舎の暗い教室で補習が行われていた。
「先生…こんな場所で補習をするんですか?」
「えぇ、あっちの校舎だとうるさいでしょ?集中出来たほうが良いと思ってね」
「そうですか…」
「では補習を始めたいと思います。まずは教科書の48ぺージの内容から。みなさんは教科書を見なくて結構です。先生が黒板に書くのでそれを見ていて下さい。ノートも取らなくて大丈夫です」
「えっノートもですか?」
「はい、ノートを取りながら授業を聞いていると頭に内容が入らないと思います。なのでしっかり私と黒板のほうの正面を見ていて下さい」
「はぁ…わかりました」
黒板の前にある教卓には赤い水晶が置かれ、淡々と補習が進められていく。
「(そろそろ時間ね…)」
パチンッ!
ファルシュ先生が指を鳴らした。
「あ…れ…」
教室にいる補習を受けている生徒全員が催眠に掛かったようだ。
「フフフ…ではみなさんに聞きたいことがあります」
「は…い、何…でしょう…か?」
そして今日の午前中
午前の歴史の授業…
「で、あるからしてこのフィールランド連合王国はこの連合統一紛争を経て、今の国家が樹立され三権分立制が出来上がったのです。これにより今までの王族の権力はほとんど無くなりましたが、完全に無くなったわけではありません。現在でも…」
今日もファルシュ先生が淡々と授業をこなしていた。
「では、ここで小テストを行います。容姿を配りますので後ろの人にまわしていって下さい」
プリントを先頭の席の人に配り終わると、教卓の横にある席に座った。
「それでは始めて下さい!」
合図と共に黙々とみんなが小テストを始める。
{(昨日の生徒達からも特に有益な情報を得られなかった…。まずいわね。これでは司令に会わす顔がないわ…。あと残っているのはあのノエルって地味な子だけど…あんなのが何か情報を持っているとはとても…)」
数十分が経ち
「はい、それでは止めて下さい。では小テスト回収したいと思います。前の人に渡していって下さい。」
全員の小テストを回収し終えた。
「はい、では小テストの問題を解説したいと思います」
ファルシュ先生が小テストの内容を解説しはじめた。
ぐぅ~
誰かのお腹の虫が静かに鳴った。
「おいノエル、さっきから腹の虫がなっているけど大丈夫か?」
「…うん大丈夫だと思う」
ファルシュ先生が解説をしているのでみんなには聞こえていないようだ。
「寝癖つけて遅刻ギリギリで来るとか久々にそんなお前見たよ」
「まぁ…ちょっとね」
「どうせオンラインゲ-ムやってたんだろ?お前のログアウト歴見たけど」
「うん…」
「お前ほんと熱中すると止まらないからなぁ」
「うん気をつけるよ……そういえばアレックス、昨日病院行ったんでしょ?」
「あぁ、行ったよ」
「大丈夫だったの?」
アレックスは2日前に受けた補習でどうやら頭がボ-ッとして記憶が飛んでいたらしいので心配になって病院の診察を受けに行ったようだった。
「あぁ、なんともないってさ。特に問題はなしだと」
「そうなんだ、良かったね」
僕はちょっと安心した。アレックスに何かと心配してしまう。
「でもよ…ちょっと気になったこと聞いたんだよ」
「気になったこと?」
「デビットとマーロンも昨日補習呼ばれたじゃんか?」
「うん、そうだね」
「お前が来る前にどんなだったか聞いたら、最初は普通に授業やってたらしいんだけど…」
「うん」
「途中から良く覚えてないんだってさ…しかも2人共」
「えっ?」
「なんかおかしくね?俺だけならまだしも、2人共だぜ?気付いたら時間が経っていたらしいんだけど」
「…確かに変だね」
ザワザワザワ…
そんなことを話しているとなんだか隣のクラスが騒がしかった。
「なんか隣のクラスうるさいな。何かあったのか?」
「さぁ…」
「先生、ちょっと隣のクラスがうるさくて聞こえずらいです」
「そうね、ちょっとうるさいわね」
先生や他の生徒も同じことを思っていたようだ。
「ちょっと注意してきますね」
ファルシュ先生が教室の外に出て行った。
「どうしたのかな…」
僕も授業中に隣のクラスがうるさいのが気になった。
コンコン!
教室の窓のドアが叩く音が聞こえた。
「いたいたノエルー!」
何か窓の外から聞き覚えのある声が僕の名前を呼ぶ声が聞こえる。
「え……!」
「何あの子!?窓の外にいるけど?」
「うっそだろ!?ここ4階だぜ…」
窓の外に立って叩いていたのは…アイリだった。クラスの全員が驚いている。
「ア、アイリ?…な、何でここに!?」
開いた口が塞がらないということをまさに僕は体感した。
窓を開けひょいっと教室に入ってくる。コツコツとこちらに歩いてくる。
「ノエルここにいたんだね。探すの苦労したんだから!はいお弁当忘れてるよ」
僕に布に包まれたお弁当を渡してきた。
「え…あ、あぁ」
するとファルシュ先生が戻ってきた。
「なんか隣のクラスは窓の外に不審者が…ってえっ…」
「あっ!先生何か知らない女の子が窓から入ってきて…」
ファルシュ先生も驚いていた。
「(タ、ターゲットのtype-11…!?な、何でこんな所に)」
「誰この人?」
アイリが僕に聞いてきた。
「え…あ、あぁ今授業やっていて教えてもらっているファルシュ先生って言うんだけど…」
「ファルシュ先生…そうなんだ、じゃあ私もう行くね。じゃあねー」
窓の外に出るアイリ。すると…窓から外に飛び降りてしまった。
「えー!?嘘ー!!あの子飛び降りちゃったよ!」
クラスメイト全員が席を離れ窓の下を見た。
窓を見るとアイリは普通に歩いていた。
「何あの子!普通じゃないわよ」
そう・・・普通ではない。なぜならアイリは人間ではなくヒューマノイドだからだ。しかしその事実を知っているのは僕だけのはず。
「し、静かにじゅ…授業を再開します。みんな席に戻って」
クラス中がざわめく中、ファルシュ先生がみんなを落ち着かせた。
「そ、それでは小テストの解説の続きをはじめます…(Type-11があのノエルという子と何か話をしていた。やはり何かあの子は知っているはず…ここに来て嬉しい誤算ね。すごい収穫だわ!)」
キーンコ-ンカーンコ-ン…
授業の終了チャイムが鳴った。
「それでは…今日の授業を終わります」
「起立、礼、ありがとうございました!」
そして昼休み。クラスがざわめきに再び包まれた。
「おいノエル、あの子お前の知り合いなのか?」
「え、まぁ一応…うん」
「とんでもない子だったけどすっげぇかわいかったな。おい紹介しろよ」
「ねぇねぇノエル君、さっきの子窓から飛び降りて平気だったけど何か特殊な訓練とかしてるの?サーカスの人か何か?」
予想通り僕の席にクラスの人が集まり質問攻めにあった。
(まずい…非常にまずいぞ。どうする僕…)
ピンポンパンポン
校内放送の呼び出し音が鳴った。
「1‐Cノエル・クスガミ君。歴史のファルシュ先生がお呼びです。職員室に来てください」
校内放送で僕の名前が呼ばれた。
(まぁ…やっぱりこうなるよね…)
「ご、ごめん、ちょっと呼び出されちゃったから…」
僕は席から立ち上がり、その場から立ち去った。
(何言われるのかな…まぁきっと良いことじゃないのは間違いないけど…)
職員室の前に着いた。1回胸に手を置いて深呼吸をする。
コンコンと職員室のドアを叩く。
「ふぅー、失礼します」
ガラガラッ
「ファルシュ先生いますか?呼び出されたんですけど」
「あぁ、ノエル君こっちよ」
ファルシュ先生は奥の席に座っていたのでそこまで歩く。
「まぁ…何で呼び出されたかわかるわよね?」
「はい一応…大体検討は付いています」
すると先ほど授業でやった小テストをスッと渡された。
「ん…?これは」
「何ってさっきノエル君がやった小テストよ。ひどい点数ね…どうしたの?」
確かにひどい点数だった。お腹が減っていたのできっと頭が回らなかったのだろう…。
「今日の放課後補習を行います。放課後職員室まで来てください。いいですね?」
「え…あ、はい…それだけですか?」
「それだけって…他に何かあるの?」
「いや…いえ、すいません。わかりました補習よろしくお願いします」
「はい、じゃあまたあとでね」
職員室を出ると僕は安堵した。
(良かったぁ…きっとアイリのことを色々聞かれて怒られるかと思ったけど…不幸中の幸いって奴だなぁ。助かったぁ…。)
自分のひどい小テストを眺めながら自分の教室へと歩いて行った。
「あれ…でも僕ここの回答書いたはずなんだけどなぁ…」
教室まで歩いて行く途中、小テストを握っている反対の手を見た。ファルシュ先生の小言が長くなると思ってお弁当持ったままだった。
「そういえばアイリが渡してくれたお弁当…どうしよう。また教室に戻るとみんなに色々聞かれるかもしれないしなぁ…う~ん」
しばらく考えた。
「今日はちょっと、外で食べようかな。うん、そうしよう」
テクテクと校舎の裏庭まで歩いて行く。
その時…
「ノーエルッ!」
「うわっ!」
突然声をかけられた。びっくりすると…なぜか僕の後ろにアイリがいた。
「何してんの?」
「え…!?ア、アイリ!帰ったんじゃないの?」
「うん、1回帰ろうとしたんだけど、せっかく来たからノエルのこと探してたんだよ」
「え…そ、そうなの」
「お昼まだだよね?一緒に食べようよ」
「一緒にって…あっちょっと!?」
「いいからいいから」
アイリに無理矢理引っ張られてしまう。
その頃、ノエルに放課後の補習を言い渡したファルシュ先生は誰かと連絡をしていた・・・
「ターゲットのType-11を発見したわ…えぇ。念のためあなたもこっちに応援に来て頂戴。それと例の物も頼んだわよ。念には念よ…フフフ」
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