第10話「魅惑の補習授業」
歴史の授業、今日もファルシュ先生が授業を行っている。
しかしアレックスは居眠りをしているようだ。歴史の授業気合入るぜと最初は言ってたのにもうこのザマだ。そしてその居眠りがファルシュ先生に見つかってしまったようだ。
「ではアレックス君、この問題の答えをお願いします」
「アレックス、アレックス!」
僕は肩をトントンと叩き、アレックスを起こした。
「何だよ…人が気持ちよく寝ているのに…」
起こした僕に愚痴をこぼす。
「アレックス、指されているよ」
「俺?」
「アレックス君、この問題の答えをお願いします」
「あっ…」
どうやら自分の置かれている状況を理解したようだ。
「えっ…いや、あの…す、すいません、わかりません…」
「そうですか…ちょっとアレックス君は放課後残っていて下さい」
「えっ!?」
「放課後個人授業をします。放課後職員室に来てください」
「こ、個人…授業。ゴクリ…」
アレックスは息を呑んだ。
キーンコ-ンカーンコ-ン
授業の終わりの鐘が鳴った。
「では本日の授業はここまでとします」
「起立、礼、ありがとうございました!」
休み時間教室がざわついた。
「アレックス…ずっとニヤけているけど」
「いやーノエル…ファルシュ先生と個人授業だってさ…ちょっと嬉しいかも」
「アレックスちょっとニヤニヤして気持ち悪いわよ」
メリッサも似たようなことを思っていたようだ。
居眠りをしていて補習を言い渡されているのにさすがアレックスというべきか・・・と僕は思った。
「おい、アレックスうらやましすぎるぞ!俺と変わってくれよ」
他の男子からはかなり羨ましがられているようで、何人かは同じ思考の男子がいるみたいだ。
「いやーすまないねみんな。どうやらここから俺の青春ドラマは始まるみたいだな。さようならみんな…俺は大人の階段を登ってしまうようだ」
「お、大人の階段…?」
「そう、大人の階段!いやーお子様のノエルにはわかんないかな~美人女教師と2人っきりでの授業。何も起きないわけがないでしょうが!。アレックス君…実は前からあなたのことが…先生ダメですよそんな!」
アレックスのくさい1人芝居が続いた。
「想像しすぎなんじゃないかな…」
「妬くなってノエル。大人の階段を登ってもお前とは友達関係のままでいるからよ!」
もはや聞く耳持たずという感じだった。
そして放課後…
「ファルシュ先生ー、来ましたよ」
言われた通り放課後職員室にいるファルシュ先生をアレックスは訪ねた。
「じゃあ早速教室に移動しましょう」
「は~い♪」
2人並んで歩いて行くと、何やらいつも使う教室の方向とは違うほうに歩いて行く。
「先生・・・なんか歩く方向違うんじゃないんですか?教室向こうですよ」
「ごめんなさい、新校舎の教室で授業を行う許可が下りなかったもので今日は旧校舎の空き教室を使います」
「はぁ…そうですかなるほど」
アレックスはまだファルシュ先生が新任のため道を間違えていたのかと思っていたがどうやらそうではないらしい。
(へへへ…先生と人気のない教室で2人っきり…もしかして先生、マジで俺に気があったりして?)
ニヤニヤしつつも、整備の整っていない古びた校舎の廊下を2人で歩いて行く。
「さぁ、入るわよ」
教室のドアを開け入り、さっそく授業の準備を始めた。教材などを出しているようだが、見たことがない綺麗な赤い水晶のようなものを教壇に置いた。そして補習が始まる。
「では、さっそく授業を開始いたします。今日の補習内容はフィールランド連合王国樹立までの歴史の部分をもう1度やりたいと思います。元々フィールランド連合王国は3つの別々の国でした。ここまでは覚えていますね?」
「はい」
淡々と授業を始めていく…。しかし退屈になったアレックスは質問をした。
「先生!」
「何かしら?」
「その教壇に置いてある水晶は何ですか?」
「あぁ…これね…」
ファルシュ先生にそのことを聞くと少しニヤリとした表情をした感じがした。
「これはね…」
パチンッ!
突然目の前で指を鳴らした…。
「あ…れ…」
アレックスの目が虚ろになった。
「どうやら、ラングの言うとおりちゃんと効果はあるみたいね…じゃあまずは手始めに…あなたのフルネーム教えてくれる?」
「は…い…アレックス・テイラ-…です…」
「じゃあ、昨日の夕食は何を食べたかしら?」
「はい…昨日は…ローストチキンを食べました…」
「右手をあげてくれる?」
「はい」
すっと右手を上げるアレックス。
「どうやら、うまくいったみたいね。それと軽い命令なら聞いてくれるみたい。さてお試しはここまでで本題に入ろうかしらね。ねぇアレックス君」
「……」
「ちょっと前にこの学校の立ち入り禁止区域で事故が起こったのは知っているわよね?」
「はい…」
「その事故について何か知らないかしら?」
「知りません…」
「あなたは事故が起きた夜の時間の前後何をしていたか覚えている?」
「はい、あの日は学校が終わって家に帰ってゲ-ムをしていました。なので俺は立ち入り禁止区域で何が起きたか知りません」
「その事故についてわかりそうな人、もしくは間接的でも目撃してそうな人わかる?」
「…運動部で遅くまで練習して自主練とかしている人たちならあると思います…。特にバスケ部は大会が近いので・・・」
「なるほど」
「あとは…」
「あとは?」
「俺の隣の席のノエルがその日、歴史のカ-ネル先生に授業中ゲ-ムをしているのがばれて怒られて居残りをさせられてたみたいなのでもしかしたら見たかもしれません」
「ふぅ~ん、なるほど」
「そのノエル君って子、最近変わった様子はなかったかしら?」
「いえ…特には」
「そう…どんな些細なことでもいいわ」
「強いて言うなら…」
「強いて言うなら?」
「最近まで食堂で昼食を取っていたんですけど、ここ最近弁当を持ってくるようになりました・・・それでえっと…」
「続けてちょうだい」
「ノエルは最近妹が出来たって言って、どうやらその妹が弁当をノエルに作ってあげているみたいです」
「ふぅ~ん」
(最近出来た妹ねぇ…)
その後の催眠状態での質問は続いた。
「まぁこんなものかしらね…」
あらかた質問をし終えたようだ。今日は水晶の実験がメインなので遅くまではしないことにした。
「フフフ、ありがとう…アレックス君」
パチンッ!
再び指を鳴らした。どうやら正気に戻ったようだ。術の解き方は再び対象者の前で指を鳴らせば解けるらしい。
「あれ…俺…」
「アレックス君、大丈夫?ボーっとしていたけど?」
「えっ…そうなんですか?」
アレックスが時計のほうを見るとずいぶんな時間が経っていた。
「はい、では今日の補習はここまでとします」
「え…も、もうですか?」
「えぇ、アレックス君の体調も悪そうなので今日はここまでとしておきます」
「え…あ、はい…」
アレックスは少し残念そうなしぐさをして片付けをして教室を出て行った。
「…ノエル、よく覚えていないけど確かアレックスの隣にいる生徒ね、たしか。でもあんな影薄そうな子がまさかね…」
次の日…
「おはよう、アレックス」
教室に入った僕はアレックスに挨拶した。
「おう…はよー…」
なんだか朝から落ち込んでいて元気ではないようだ。まわりもアレックスには話かけずらい雰囲気を醸し出している。
「え…どうしたの、朝から暗いけど」
「あぁ…ちょっとな」
「もしかして…昨日の補習授業で何かあったの?」
アレックスに何かあったとすればそれしか思いつかなかった。
「…まぁな」
「すごい怒られたとか?」
「別に怒られてはねぇよ」
「そうなんだ」
「まぁ、あえて言うなら期待はずれだったてところかな…」
「期待はずれ……?もしかして昨日言ってた大人の階段登るとか言ってたやつ?」
「2人っきりだから何かあると思ったんだけどな…」
「いや…さすがに想像しすぎでしょ。そもそも居眠りしてたのが原因だし…」
でも僕はちょっとこのすごく前向きな考えのアレックスがうらやましいと少し思った。
「普通に授業やっただけでしょ。どんな内容だったの?」
「それがよぉー、あんまりよく覚えてねぇんだ」
「え…覚えていない?」
「いや…最初の方は覚えているんだけどさ、先生曰く途中なんか俺がぼ-っとしてたみたいで気付いたら時間が経ってたんだよ」
「へぇー、そうなんだ。でもなんか1対1の授業でぼ-っとして記憶にないってもしかして病気なんじゃ…」
少しアレックスが心配になった。
「あぁ…まぁ心配だから一応今日の学校の帰り病院で診てもらう」
「そうなんだ…まぁ無理はしないでね」
「そうする」
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