第9話「ダイスキ?」
「ただいま~」
「あっおかえりノエル」
昨日と同じようにただいまの声と同時にアイリが玄関まで来た
「ねぇねぇノエル、私のお弁当どうだった?」
「え…あぁお弁当ね…」
「おいしかった?」
「んー…」
「まさかおいしくなかった?」
「いやそんなことないけどさ」
ちょっとアイリの表情が暗くなった気がしたのですぐ返事をした。
「そんなことないけど…?」
「ジャムやチョコレートばっかなのはちょっとやめてほしいかなぁ…って」
「えっノエルって甘いの好きじゃないの?」
「まぁ好きなんだけど…お弁当の中身は甘いのじゃないほうがいいかなぁ…」
「そうなんだ、じゃあ今度からそうするね」
「うん、ありがとう」
その頃ノエル達や他の生徒が学校から帰った頃とある場所では・・・
「ヴィオラル殿…どうですか?教師になった気分は?」
呪術を使う老人ラングがそう言った。
「最悪よ。全く…交戦時のデータが全部破損していなければこんなまわりくどいことはしないで済むのに。なんとか一部でも拾えなかったの?」
「はい…一応解析班にまわしたのですが、どうやらターゲットと交戦時に破損したのも原因ではありますがそれだけではないようです」
「どういうこと…?」
「はい、あの施設の周辺立ち入り禁止区域のまわりにはどうやらかなり強力な特殊な電磁波装置のような仕掛けがあるようで、録画や録音の類のデータ媒体はすべて壊れてしまうようです。その証拠に…」
すっと一枚の画像見せた。
「何?これ」
ラングが見せた画像は真っ黒だった。
「例の場所を上空からカメラなどで撮影してみたところ、このような画像になってしまいました」
「なるほど…」
「この施設を作った人物かなりの曲者ですぞ」
「みたいね」
「ヴィオラル」
一人の男が声をかけた。
「はっ」
「調査は進んでいるか?」
「それが思ったよりもうまくいかず…」
「我々には余裕がない…例のターゲット「Type-11」の捕獲のためなら手段は問わない。この施設もいずれフィールランドの軍の連中に気付かれるのも時間の問題だ」
「はい、かしこまりました」
「ヴィオラル殿、この水晶玉をお使い下さい」
ラングが赤い水晶玉をヴィオラルに差し出す。
「これは?」
「私の術の力をこの水晶に封じ込めました。術の力はそこまででもないですが、相手から無意識に尋問をするぐらいならこの水晶で十分です。これを学校の生徒に使い聞き出しましょう」
「まわりくどいけどそれしかないようね…それで使い方は?」
「はい、尋問したい相手の視覚に数分間この水晶玉を入れ、指をならしていただければ準備は完了です」
「ふぅ~ん、使わせてもらうわ」
「はっ!」
そして夜が明け数日後…
いつもの朝がやってきた。
いつものようにじいちゃんと僕とアイリで食卓を囲んでいる。
「ノエルちょっといいか」
「何、じいちゃん」
「うむ、アイリの養子の手続きが完了したんでな」
「そうなんだ、良かったねアイリ。これで外に出られるよ」
「やったぁー、もう家の中でじっとしているの退屈だったよ。これでノエルとも一緒に出かけられるね。ねぇねぇノエルデ-ト行こうよ」
「デート?」
「男と女の人ってデ-トって行くんだよね?私調べたよ」
「デートって付きあってる恋人同士が行くもんなんだよ」
「ノエルと私は付き合ってはいないの?」
「付き合ってはいないんじゃないかな…」
「でもこうやって一緒にお話したり、一緒に食事してるよ」
「それは一緒の家に住んでいるからね」
「じゃあ、どうやったら付き合って恋人になれるの?」
「え…それはう~ん…お互い好きになったりとかすれば…じゃないかな…」
歯切れが悪かった。今まで彼女なんて作ったことがないのでアイリの質問には答えられなかった。
「なら問題ないじゃない。私はノエルのこと好きだし、ノエルも私のこと好きだよね?」
「え…!?」
「えって…ノエルは私のこと好きじゃないの?」
「う~ん…」
「もしかして私のこと嫌いなの?」
「いやそんなことはないけど…」
「じゃあ好きなんだ。だったら恋人同士だよね」
「え、ちょっとそれは…」
「まぁまぁアイリ、そうノエルをいじめてやらんでくれ。こういうのは時間が必要なんじゃ。お互い好きになるっていうのはな。」
ノエルがアイリの質問攻めに困っているのを見かねてじいちゃんが助け舟を出してくれた。
「そうなんだ。じゃあもう少し待っててあげるね」
「う、うん…」
「じゃあワシはそろそろ出かけるから、ノエル戸締り頼んだぞ」
「わかった」
「今日はちょっと遅くなるんでな」
「そうなんだ」
「うむ、ちょっと今医療機器メーカーと共同研究していて、そろそろ試作品ができそうなんでな」
「へぇーすごいなぁ」
「じゃあ、行って来るぞ」
「行ってらっしゃい」
「さて、僕も…」
「ノエル、はいお弁当♪」
「今日も作ったんだ」
「うんそうだよ。今日のお弁当は私のちょっとした工夫があるんだ♪」
「え…ちょっと怖いんだけど」
「大丈夫、味とかには影響してないから」
「そうなの…ま、まぁじゃあ大丈夫かな」
「学校頑張ってね」
「ありがとう、行ってくるよ」
「いってらっしゃ~い」
いつものように授業を受け…
学校での昼休み前の4限目
今日は体育だった。
「そこ遅れてるぞ!ちゃんと走れ!」
体育の先生は今日も気合が入っているようだ。その証拠に笛の音がいつもより大きい気がする。
「は、はい…すいません!」
ノエル達や他のクラスメイトも学校のグラウンドを授業で走らされていた。
「アレックス、大丈夫?」
息切れしているアレックスを僕は心配していた。
「はぁ、はぁ…ちょっとやばいかも」
「あと1週だから頑張ろう」
「あぁ、わかってるけどさ…何でお前そんなに苦しそうじゃないんだよ」
「いや、まぁ多少は辛いけどさ」
「はぁはぁ…お前普段から運動とかしてるわけ…?」
「全然してないよ。せいぜい学校へ来る坂道登るぐらいかな」
「だよなぁ…持って生まれた才能ってやつなのか。お前アスリ-ト選手とかにでもなったほうがいいんじゃないか?」
「う~ん興味ないかなぁ」
「ったく…昼飯前に体育とかほんと勘弁してほしいぜ…」
「そこ、おしゃべりするな!もう1週追加するぞ!」
「す、すいません!」
そして地獄の体育の時間が終了し、ようやく昼休みの時間。
「よーし飯だ飯だ。腹減ったぜ、ノエルお前今日も弁当か?」
「うん、まぁ一応そうだよ」
「俺も今日弁当だから一緒に食べようぜ」
「そうなんだ、珍しいね。いつもは食堂なのに」
「さすがに体育の後に食堂行くのしんどくてさ、だから今日は弁当親に作ってもらった」
「じゃあ一緒に食べようか」
アレックスの机に椅子を寄せ、弁当を置いた。
「さ~てといただきます」
アレックスのお弁当はかなりのボリュームでいかにも男の弁当という感じだった。
「アレックスのお弁当、結構量多いね」
「ん?こんなもんだろ。ノエルのは今日どんなのだよ?」
「あぁ、うん今日のはどんなのかな…」
(そういえばアイリが今日のお弁当は工夫してあるって言ってたなぁ…ちょっと怖いなぁ・・・)
かぱっと開けて見ると…
ノエルダイスキ!とお弁当に文字が書かれていた。
「うわ…」
ノエルは言葉を失った。
(アイリがちょっとした工夫があるってこういうことか…完全に油断してた…)
「おいおいおい、何だお前この弁当!お前彼女いつの間に作ったんだよ!?」
「いや…別にそういうわけじゃ」
「じゃあ何だ?お前自分でこんな弁当作ったならお前相当痛いぞ…」
「う~んとね妹が…」
「妹って、お前妹なんていないだろ?どんな嘘のつき方だよ…」
「ほ、本当だって、遠い親戚の子がうちの養子に最近なったからそれで…」
「んーお前そんなこと言って先に彼女出来たの隠そうとしてるだけじゃないか?」
「えっノエル彼女出来たのか?」
他の男子が会話に入ってきた。前の席にいるキースだった。
「いや、本人は否定しているんだけどさこれ見ろよ」
アレックスは僕のお弁当を指さした。
「ノエルダイスキってお前…ノエルのラストネームはクスガミじゃなかったっけ?」
「いやそうじゃねぇよ!ダイスキってノエルのこと大好きだよってことだろ。こんなお弁当作ってくれるなんて彼女以外ありえないだろ」
キースはちょっと天然なのでこういう間違いを普通にする。
「なるほど、それじゃあ誰と付き合ってんだ?やっぱメリッサか?」
「いやだから、誰とも付き合ってないって」
「なになにどうかした?」
クラスの中でも噂話が大好きなジェシカがニヤつきながら会話に入ってきた。
「えっ…ノエルダイスキってすごいわね。さすがにドストレートすぎない・・・というかこのお弁当どうしたの?」
「ノエルがさ、妹が作ったて言ってるんだけど、さすがに言い訳下手すぎだろって」
「あれ、ノエル君妹いたの?」
「さ、最近できたんだよ…」
「最近?」
「ちょっと事情があって…」
「ふぅ~ん、事情ねぇー」
「じゃあそんなに言うなら今度その妹に会わせてくれよ」
「えっ!」
「あっ賛成、私も会ってみたい!」
「う~ん…」
(アイリの存在をあんまり公にはしたくないんだけどなぁ…)
「どうしたんだよ?なんか会わせられない事情でもあるのか?」
「いや別にそういうわけじゃないんだけどさ、ほら妹にも確認しなきゃいけないから」
「じゃあさ、今度妹さんの歓迎パーティーっていうことで会わせてよ」
「おっそれいいねぇ。それならいいだろ?」
「う~ん、じゃあ今度聞いてみる」
「決まりね」
こうしてお弁当の騒動はひとまず落ち着いた。
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