第7話「忍びよる手」

放課後、日が沈み生徒達も下校が終わり人がまばらになった頃にフィ-ルランド連合王国国立学校に妖艶な女性と老人の2人組が校内に入っていく…。


その2人組が学校に入ろうとすると学校の警備員に呼び止められた。


「すいません…何か御用でしょうか?」


「ちょっとここの校長先生に話があって」


「確認できるものか何かありますか?」


「えぇ…」


女性がそう言うと老人が警備員に近づいた。


「…ん?な、何ですか…」


老人が警備員の目をじっと見つめた。


すると、老人の目が妖しく赤く光り…やがて警備員の目が虚ろになってきた


「……す、すいま…せん…どうぞお通り下さ・・い」


「ありがとう」


その2人組が校舎内に入っていく。


「ちょろいものね…」


「フフフ…ヴィオラル殿、私の術にかかれば容易いことです」


老人がそういうと怪しく笑った。


「疑うわけじゃないけど、こんな場所に例のものがあったとはちょっと信じられないわね」


「はい、確かにこのような学校にあったとは思えませんが、だからこそ逆に探すには一番見つけにくかったのではないのでしょうか?現実に我が部隊にも発見した時油断をして多数の被害が出ています・・・」


「とりあえずしらみ潰しに全員の生徒から情報を片っ端らから聞き出すしかないわね。とは言っても荒っぽいやり方をしたら警察や軍に気付かれてしまう可能性が大きい…そこであんたの術の出番ってわけ」


「はい、お任せを」


2人は校舎内の暗い廊下を歩き校長室の方へ歩いて行った。


「しかし、任務とは言えスーツなんて堅苦しいもの着なきゃいけないなんてね」


校長室と書かれた部屋の前まで来ると人がいる気配を感じた。


「いるようね…」


「はい…」


「じゃあ、手筈通り頼むわよ」


コンコン


女が校長室をノックした。


「はい?どうぞ」


「失礼します」


2人が校長室に入ると校長らしき人物がきょとんとした顔をしていた。


「あの…失礼ですがどなたでしょうか…?私に何か用でも?」


「えぇ、ありますわ。今日からこのフィ-ルランド連合王国国立学校に転任することになったものでちょっとご挨拶を…」


「えっ…!転任ですか?ちょっとそのような話は聞いていないのですが?で、もう1人のそこのお方はどのような御用で?」


「えぇ私はですね…」


そう言うと老人は校長に近づき先ほどの警備員と同じようにじっと目を見つめ、目が赤く光りそのまま見つめ続けた。すると段々と校長の目が虚ろになっていく。


「…転任の手続きをお願いしたいのですが」


女のほうがそう言った。


「そ…そうでしたな…ではこちらの書類を…手続きを致しますので」


「えぇ、あぁこれ私とこの人の身分証明書」


「はい、お預かりします」


校長はその2人を全く疑うこともなく書類を作成し、その後学校のデータべ-スにアクセスし数時間程かけパソコンで2人のデータをいれていった。


「これで終わりです…何か他には…ありますか?」


「はい、ちょっと…お聞きしたいことが…」


「何でしょう…?」


「この学校にある立ち入り禁止区域のことなのですが」


「え…!?き、禁止区域ですか?」


「あそこに何か施設のようなものがありますよね?あれが何なのか教えていただけませんか?」


「え…いや…あの…それは…」


何やら急によそよそしくなった。


「ん?(ラングの催眠術がかかっているというのに口を割らない…余程知られたくないような秘密のようね…)」


「ラング…」


「はい…カァッ!」


ラングと呼ばれる老人が怒声のような声を出すと再び校長が口を開いた


「じ、実は…ぐ…軍の関係者が数年前にこの学校へ来て…私は良く知らないのですが…かなりの金額をもらったらしく…」


「ふぅ~ん軍の関係者が来てお金を…それで?」


「先任の校長が…う…ぐぐっ」


突然苦しみ出した。何かをしゃべろうとしているが頭を抱え、うずくまってしまった。


「何とかならないの?肝心の部分はまだだと言うのに」


「申し訳ありません、これ以上強力な術をかけると良くて後遺症、最悪の場合脳死する場合がありますのでまずいかと…」


「しょうがないわね…やっぱり楽な方法はないか。まぁいいわ地道に調査していくしかないわね…」


「はい…」


「術の効果はどれぐらい続くの?」


「はい、1ヶ月ほどは大丈夫かと」


「それぐらいあれば十分ね…」


2人はそんな会話をすると校長室を出て行き夜の廊下を歩き出て行った。


そして夜が明け……




雨か…

今日はあいにく朝から小雨が降っていた。


コンコン。ドアのノック音が聞こえた。


ガチャッ


「ノエル入るよー」


どうやらアイリがノエルを起こしに来たようだ。


「おっはよーノエル♪」


天候とは真逆の笑顔で部屋にアイリが入ってきた。どうやら起こしに来たみたいだ。


「あぁおはようアイリ」


「今日も学校に行くんだよね」


「うん、そうだよ」


「今日は私が昨日に続いてご飯作ってあげたから食べていってよ」


「え…アイリが?」


「うん、そうだよ」


「う~ん…」


昨日食べたカレーとして振舞われたが、食べてみるとただの肉や野菜をいれたチョコレートご飯であった。結局あの後無理矢理食べようとしたが、途中で気持ち悪くなってしまい半分以上捨ててしまった。

そんなこともありアイリの手料理はかなり警戒している。


「大丈夫だよ、今日は。え-とパンを焼いただけだから」


「そ、そっか…ま、まぁそれなら(確かにそれなら変なことしようがないもんな…)」


リビングに行き食卓につくとじいちゃんが先に食べてた。


「ノエルか、おはよう」


「うん、じいちゃんおはよう」


「ちょっと相談なんだがな…」


「ん?何?」


「アイリのことなんだが」


「うん」


昨日の夜じいちゃんにはアイリのことを色々話した。昨日のアイリの能力や僕が見た戦闘時での能力のこと。これからアイリをどう扱っていくか。


「彼女をうちの養子として手続きしようかと思っている。どうかな?」


「養子?」


「うむ、わしも色々考えたのだが、ヒューマノイドととして国に登録申請するのは色々とまずい上に第三者に色々と疑われる可能性も出てくる」


「うん」


「それにアイリの見た目は完全に人間と変わらないと思う。アイリが普段おとなしくしていればまず気付かれる心配はないと思う。それが一番今のところ合理的だと思うのだがノエルの意見を聞かせて欲しいと思ってな」


「う~ん…」


色々と考えた。これからどうやってアイリを悪用しようとする人などから守って安全にすごせていけるかどうかを。


「僕もそれが一番良いと思う。アイリはどう思う?」


「私はノエルと一緒にいられれば何でもいいよー」


拍子抜けするほど軽い返事だった。


「あはは…」


「うむ、わかった。ではそのように役所などには手続きをしておこう」


「うん、お願い」


「ねぇねぇノエルそんなことより私が焼いたパンおいしい?」


「えっ…?」


アイリが焼いてくれたパンだということをすっかり忘れていた。


「ねぇねぇーノエル」


満面の笑みで聞いてきた。


「う、うん。とってもおいしいよ」


「えへへ、良かった。毎日焼いてあげるからね♪ノエルのおじいちゃんも遠慮せずにいっぱい食べてね」


「ん?あ、あぁ…」


そんな会話をしているとそろそろ2人共家を出る時間になっていた。


「じゃあそろそろ仕事に行くから戸締りは頼んだぞノエル」


「あぁ…うんいってらっしゃい」


「いってらっしゃ~い」


「さてそろそろ僕も準備しないと…」


自分の部屋に戻り学校に行く準備をした。


「じゃあアイリ、一応鍵閉めていくけど留守番頼んだよ」


「うん、わかった!あとこれ」


アイリはノエルに布で包んでいる何かを出した。


「ん?何これ?」


「えへへ♪ノエルのためにお弁当作ったんだよ。私の愛情がこもった愛妻弁当♪」


「愛妻って…」


僕は少しリアクションに困った。


「男の人は女の人にお弁当作ってもらえると喜ぶんだよね?私調べたんだよ」


「う、うんまぁ…一般的にはそうだね…」


「だから、はい!」


そう言うと僕の手に包まれたお弁当箱が渡される。


「これで学校頑張ってね」


「う~ん…」


「あれ?なんか嫌そうな顔してない?」


「いやいや…別に…そういうわけじゃないんだけど、ちょっと怖いなぁって…」


「大丈夫だよ!カレーの時みたいに失敗してないから!」


「ちなみに何作ったの?」


「それはー…開けてからのお楽しみ?」


ますます不安になった。


「とりあえずこれを持って学校頑張って!」


そう言うとアイリは僕のカバンにお弁当をいれた。


「う、うん…じゃあ行ってきます」


「いってらっしゃ~い」


今日もいつものように家を出て通学路を歩いていく。生憎と今朝から雨が降っているため通学路の景色は良くない。


しばらく歩き、学校の近くまで到着すると同じクラスのメリッサに会った。


「おはようノエル君」


声をかけられた。


「ん?やぁメリッサおはよう」


「何か今日は朝から雨で嫌ね。何か不吉な予感がするわ・・・」


「そうなんだ」


「うん、そうなの。今朝のネットの占いも…きゃっ!」


そんな話をしているとメリッサが雨で足を滑らせてこけそうになった。


「メリッサ!」


こけそうになったメリッサを助けようとしてノエルの手がメリッサの腕を掴んだ。


…しかしノエルの手の他にもう1人こけそうになったメリッサを掴んだ人がいた。


「大丈夫かい?」


「あ、はい…」


3年のダグラス先輩であった。ダグラス先輩はかなりの美形でモデルの仕事も学業と併行して行っており、学校でも女子の中の人気ナンバー1だったりする。その人気は凄まじく学校でもファンクラブがあるらしい。


「良かったね」


そういうとダグラス先輩はバランスを崩したメリッサを持ち上げた。


「君、そんなつかみ方じゃ彼女は地面に尻餅をついてしまうとこだったよ。ちゃんと守ってあげなきゃダメじゃないか」


「え・・・あぁ、す、すいません」


僕はダグラス先輩にそう注意された。


「い、いえ…その私が悪いんです。ちゃんと注意して歩かなかったから…」


「そうかい?まぁ気をつけてね」


「は、はい、ありがとうございました…」


メリッサがお礼を言うとダグラス先輩は去っていった。


「大丈夫?メリッサ。ごめんね、ちゃんと掴んであげられなくて…」


「ううん、しょうがないよ。だって両手で掴んだら傘離さなきゃいけなかったし、そうするとノエル君が濡れちゃうよ」


「あぁ…ごめん気が利かなくて…」


「いいっていいって…あ~あ早速占いどおりに…」


「ねぇねぇメリッサ今先輩に何て声かけられたの?」


今の様子を見ていた他の女子数人がメリッサに声をかけてきた。


「え?何って、大丈夫?って言われただけだけど…」


「いいないいな~私もダグラス先輩に手掴まれて大丈夫?って言われた~い」


「私も~今度近くにいたらわざとこけちゃおうかな~」


「いいねそれ~」


メリッサが他の女子に質問攻めにあい、ノエルは蚊帳の外へという感じであった。


「あの…じゃあメリッサ僕先行くから」


「えっ!あぁうん、ほんとに気にしなくていいからねノエル君!」


教室へと向かい歩いて行くとノエルの後ろから1人誰かが近づいてきた。


「なぁにが大丈夫だよ…けっ!」


「ん?」


アレックスだった。しかもかなり不機嫌そうな顔であった。


「あぁ、おはようアレックス」


「おっす…もう何なんでしょうね、ほんとに女って生き物は。ちょっと顔が良い奴に声かけられただけでテンション上がっちまって…たくっ」


「ははは…ていうかさっきのくだり見てたの?」


「あぁ、まぁな…俺が同じことやったら、きゃー触らないで気持ち悪い!とか言われるんだぜおそらく」


「いや、さすがにそれは…」


「いーや!絶対そうだね。女っていうのは相手の見た目でコロコロ対応を変えるからな。そういうもんだ。ノエルお前も気をつけろよ」


「え…あぁうん…」


アレックスはこういう話はすぐ反応して怒るので僕としては早く切り上げたいとこ。じゃないとずっとアレックスの愚痴を聞かされてしまう。


「というかあの先輩、女癖もかなり悪いらしいぞ。彼女とかもとっかえひっかえらしいしあんまり良い噂は聞かねぇしな」


「そ、そうなんだ…」


「何だしらねぇのかよノエル」


「う、うん…(う~ん…何か他に話題は…)」



「ねぇねぇ、歴史のカーネル先生病欠でしばらくこれないらしいよ!」


「ん?」


同じクラスの女子がそう言うと、少しクラスが今の話しを聞きざわついた。


「カーネル先生が病欠?へぇそうなのか。なんかあの人病気するイメージなかったんだけどな」


「そ、そうだね(とりあえず話題はなんとか反らせて良かったぁ…)」


「うちのクラス今日歴史の授業がさっそくあるけど、授業どうするだよ?自習になるのか?」


アレックスが病欠を伝えた女子に質問をすると


「えっ~と、私もよくわかってないんだけど」


「自習ならゲ-ム出来るなぁ…おいノエル今日もクエスト一緒に進めて行こうぜ!」


「何言ってんのよアレックス」


「ん?」


メリッサだった。どうやら他の女子に先ほど解放されて今教室に入ってきたらしい。


「ちょっと言っただけだろ」


「もう…まずは先生の心配をしなさいよ」


「でも、急にだよね。この前まで普通だったのに」


「そうそう、ノエルに説教するほど元気だったのにな」


「ア、アレックス…」


「まぁ今日のHRで先生から何かしらの説明があるでしょ」


そんな話をしていると予鈴がなり担任のユミール先生が入ってきた。


「はい、HRをはじめま~す。全員席について下さい。静かにしないとHR始められませんよ」


そういうと全員が静かになりHRが始まった。


「えーもうみなさん知っていると思われますが、うちの学校で歴史を担当してもらっているカ-ネル先生が病欠でしばらく来られないそうです。それでですが、今日から他所の学校から転任してきた先生がちょうど歴史ということもあり早速担当してもらうことになりました」


そう言うとクラスが少しざわついた。


「何だよ、自習じゃねぇのか」


アレックスが愚痴をこぼした。


「静かに!…えーそういうこともありみなさんに授業を始める前に挨拶しておきたいということなので来てもらいました。どうぞお入り下さい」


ガラッ


入ってきたのは1人のグラマラスな女性だった。


「みなさん、始めまして今日からしばらく歴史を担当させてもらうファルシュ・ツヴァインと申します…どうかよろしくお願いします」

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