第4話「一緒に…」

「ノエル、どうする?あいつら逃げちゃったけど?」


「とりあえず…僕は家に帰るよ…立ち入り禁止区域だからここにいるのはまずいし」


「うん、わかったじゃあ私も一緒に付いていく!」


「えっ…!?付いていくって…僕の家に…?」


「そうだよ、何か問題でもあるの?」


「いや…問題ありまくりっていうか…そもそも君が何なのかもわからないし…どう考えても普通のヒューマノイドドールじゃないし…」


ノエルはアイリが付いていくという言葉に戸惑いを隠せなかった。


「さっきも言ったように私はノエルと一緒にいるのが存在意義なの!だからノエルが行くとこには私も付いていくの」


「話がどうも噛み合わないなぁ…僕が聞きたいのはそういうことじゃなくて…はぁ…」


ノエルはこのまま話していても埒が明かないことを悟りため息をついた。しかしこの少女らしき物をこのまま放置しておくわけにもいかないことも同時にわかっていた。


(もしかして機械工学の研究をしているじいちゃんに何か聞けばわかるかもしれない…今はそれが一番良い様な気がする…うん…)


「わかった…じゃあアイリ一緒に行こう」


「は~い!」


アイリの軽い返事に少し気が抜けながらも舗装されてないガタガタの道を歩き学校の立ち入り禁止区域を出て行った。



立ち入り禁止区域を出て、学校の裏口が閉まっていたので壁をよじ登り校舎外に出た。夜道はすっかり暗くなっていたがアイリはノエルの背中になぜかべったり張りついている。


「ア、アイリ…そんなくっついていると歩きにくいよ…」


「いいじゃん、減るもんじゃないし」


「はぁ…、アイリそれよりさっきの連中また襲ってこないか僕は心配だよ…」


「んーまぁまた襲ってきたら私がぶっ飛ばしちゃうから大丈夫だよ。そんなに心配ならさっきの奴らがいないか周辺を索敵でもする?」


「えっ索敵…?そんなことできるの?」


「うん、出来るよ。ちょっと時間かかるけど、じゃあやってあげるね」


そういうとアイリは目を瞑った。そして数秒経ったあと開けた瞬間瞳の色が変わっていた。


「さっきの奴らのデータを処理して…」


どうやらアイリにはとてつもないパワーの他に、すごい情報処理や索敵能力なども備わっているらしい。そう…まるで…軍事兵器のように。


そして数分経ったあとアイリの瞳の色が戻った。


「終わったよノエル、さっきの連中はここらへんの周辺にはいないみたい。安心していいよ」


「そ、そう…じゃあ安心して帰れるね」


「うん!ノエルの家どんな家か楽しみ、ノエルは誰かと一緒に住んでいるの?」


「僕のおじいちゃんと2人暮らしなんだ」


「そうなんだ!ノエルのおじいちゃんってどんな人なの?」


「優しいよ…僕が悪いことをした時にちゃんと怒ってくれるし」


「怒ってくれるのに良い人なの?うーん、なんかよく言っている意味がわかんない」


「んーなんて言って良いのかな…多分…僕のことをなんとも思ってないなら怒らないと思うんだよね。どうでもいいというか」


「ふ~ん、そうなんだ。ノエルっておじいちゃんのこと好きなんだね」


「えっ…何で?」


「おじいちゃんの話しているときノエルの顔がずっと優しい顔をしていたから」


「そ、そう?自分ではよくわからないかな…」


アイリと2人でそんな会話をしながら夜道を歩いていきやっとのこと自宅に着いた。


そして自宅のドアノブを握った。玄関は開いているようだった。先にじいちゃんが帰っているみたいだ。普段仕事の関係で遅く帰ってくることが多いがどうやら先に帰っていたようだ。


「アイリ、ちょっと家に入る前に事情を説明しておきたいからここで待ってて」


「うん、わかった」


そうアイリに言うと深呼吸をして緊張をほぐし自分を落ち着かせた。


「じいちゃん…ただいま」


自宅の玄関に入り僕の第一声は普段通りにしようと思った。それは多少後ろめたい気持ちを隠すための強がりのようなのかもしれない。


すると部屋の奥からじいちゃんが出てきた。


「おぉ、帰ったかノエル。なんじゃ今日はやたら遅かったな。夕飯は食ったのか?」


「う、うん…それが…」


「ん…どうした?」


2人の間に微妙な空気が流れていたその瞬間…


「こんばんは~ノエルのおじいちゃん!」


「うわっ!ちょっと!?まだ早いって!」


タイミングというのがわからないのか2人の間の空気を察しずに僕の説明もなく急に顔を出してきた。


「説明するより私が出たほうがやっぱ早いかなぁって思ってさ」


「ん?なんじゃノエルこの子は?」


「うん…実は…」


じいちゃんは僕の雰囲気を察したのか急に目が鋭くなった。


「ふむ、何か事情があるようだな…わかった、そこの君も入って来なさい」


「おじゃましま~す!」


僕はじいちゃんと2人で奥のテーブルのある部屋に行き席に着いた。


「では話を聞こうか」


「うん…」


学校で起きたこと、そして学校の禁止区域の施設のことや武装した集団に襲われたこと、アイリのことも包み隠さず全部話した。普通の人にはにわかに信じられない話だ。

でもじいちゃんはそんな突拍子もない話を静かに黙って聞いてくれた。


「なるほどな…」


「じいちゃん…それで聞きたい事があるんだ…」


「彼女…アイリ君のことじゃな?」


「うん…じいちゃんに聞けば何かわかるかもしれないと思って…機械工学の研究をしているならさ…」


「うむ…しかしこんな人間とまるで同じような見た目をしてしゃべったりするヒューマノイドは見たことがない。正直なところワシにもさっぱりわからんというのが本音じゃ、それに…」


「それに…?」


「おそらくお前の話から推測すると彼女は・・・ヒューマノイドブレードだな」


「ヒューマノイドブレード…軍事兵器のヒューマノイド…それってでも…」


「そう、ヒューマノイドブレードは20年前の戦争でかつて我がフィールランド連合王国で使われていた兵器じゃ。そしてその圧倒的な力により、かつて戦争の相手であったアルスティン王国を降伏させた。ここまではお前も歴史の授業で習って知っているな?」


「うん・・・でもヒューマノイドブレードはフィールランド連合王国とアルスティン王国の間に終戦協定が結ばれると同時にまた戦争が起きないようにってオリュンポス条約を結んだんだよね?」


「うむ」


「でその条約の1つに現存するヒューマノイドブレードの破棄と新規製造及び所持を禁止しているはずなんじゃないの?」


「だが…実際にはあった。彼女が本当にヒューマノイドブレードか断言できんがな」


「これってすごいまずいことなんじゃ…」


「まぁ国家機密に触れたようなもんだからな…そして最悪…」


「最悪…?」


「ワシとお前は亡き者にされる可能性もある…」


「…!?じゃあやっぱり僕らを襲ってきたあの連中って…」


「どうだろうな…それについては何とも言えん。」


僕はじいちゃんのその話を聞いて言葉も出ず、顔が青ざめてどうすればいいのかわからなくなってソワソワしまった。


「まぁ待て、あくまでも推測じゃ…ワシからも動いて調べてみる。色々わかったところで行動を起こしてからでも遅くはないだろ。下手にこちらから動けばそれこそ最悪のケースになる場合もある」


「…う、うん」


「今日はもうお風呂に入ってゆっくりして寝なさい。明日も学校だろう?」


「ねぇねぇノエルノエル!」


さっきからキッチンの奥のほうで何やらさっきからごそごそしてたアイリが急に声をかけてきた。重たい空気の中アイリはお構いなしに声をかけてきた。


「この棚にあるお菓子食べて良い?」


「え…あ、あぁ別にいいけど…(あのお菓子楽しみにとっておいたんだけどなぁ…)」


「ありがとう!ノエルってやっぱ優しいね!」


「アイリ君」


じいちゃんが急にアイリに声をかけた


「ん?何?ノエルのおじいちゃん?」


「しばらく君を我が家で預かろうと思うのだが、どうかね?部屋も空いているし」


「えっ!?それってノエルと一緒にいて良いってこと!?」


「まぁそういうことになるな」


「はい!預かられます!嬉しい!これで一緒にノエルと一緒にいられるね!ありがとうおじいちゃん!」


「う~ん…やっぱそういう展開になるよなぁ・・・」


「ん?なぁにノエルは何かあんま嬉しそうじゃない」


ノエルの声のトーンから不安の感じが出てしまい、アイリはそれがどうやら面白くなかったようだ。


「い、いやぁ…そ、そんなことないよ…ははっ…」


「ではアイリ君、空き部屋に案内しようか」


「ノエルのおじいちゃん、アイリ君じゃなくてアイリでいいよ。これから一緒に暮らすんだし!」


「ん?そうか」


「あと、私ノエルと一緒の部屋がいいな」


「えぇ!?」


ノエルはアイリの大胆な言葉に驚いた。


「まぁさすがにそれは…」


「えぇーノエルは私と一緒じゃ嫌なの…?」


「う~ん…別に嫌というか、色々気まずいというか…」


「まぁまぁ、ノエルにもプライバシーというのがある。あんまり困らせないでやってくれ」


「う~ん…ノエルが困っちゃうのか…ならしょうがないかなぁ。でも気が変わったらいつでも言ってね!」


「う、うん」


そんなこんなで僕とじいちゃんの2人暮らしだった中にアイリという家族が1人加わった。これからどんな生活が待ち受けているのか僕には胸が不安でいっぱいでしょうがなかった。




一方その頃とある場所で…


「では存在の確認はしたのだな?」


薄暗い部屋で複数の人間達が集まって何かを報告をしていた。


「はい…確かに確認いたしました。しかしそのヒューマノイドの捕獲を試みようとしたのですが失敗をしてしまい、また武器の損失や隊員の何人かが負傷をしてしまいました。申し訳ありません。」


一人の男がそのグループの中で一番偉いであろうと思われる男にそう告げる。


「構わんさ、存在を確認できただけでもこちらの大義名分が出来た。よくやってくれたぞ。フフッ」


「はっ!」


「しかしわからないことがある…」


「はい…」


「こちらが何年かけても扉のロックの解除方法が全くわからなかったのになぜか勝手に扉が開いていて、そしてターゲットであるヒューマノイドが稼動状態にあった。」


「はい…」


「そしてそのヒューマノイドの近くには例の学校の高等部の学生と一緒にいたそうだな」


「えぇ…そうです、確かにあの制服はフィールランドの国立高等部のものでした」


「ふむ…色々調べて見る必要がありそうだな…」


「その役目、私に任せていただけませんか…?」


その集まりの中にいた女性が突然名乗りを挙げた。


「ほぅ、何か良い策でもあるのか…?」


「えぇ…とってもいい策が…フフフッ」

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