第18話 反乱


 西暦XX年 庄の国は滅亡した。


 辛うじて生き残ったものたちは、身を潜めて、離れ離れとなってしまった。各地へバラバラとなったとしても、誇りある庄の民であったことを忘れないように、この地で沢山採れた小さな緑の石を証として、それぞれが持つことにした。


 数年後、後から来たものは、最先端の武器と持ち前の強欲さをもって、本土を制圧した。


 彼らは、自民族とは違う民族を汚いものとして扱い、人が住めない僻地に追いやった。隔離されたものたちは、それはそれは厳しい生活を送ることとなった。



 虐げられた民は我慢の限界だった。


 ある日、小さな緑の石を持ったものたちが集まって、後から来たものたちに反乱を起こそうと企てた。庄の民は、武器を持って戦おうとする抗戦派と平和外交を望む反戦派に別れてしまった。


 厳正な投票の結果、反戦派の方が大多数を占めた。反戦派は荒ぶる抗戦派を必死に戒めたが、抗戦派は徹底的に戦うことを決めた。彼らは人数が少なくても局地戦に持ち込めれば、どんなに厳しい戦いでも諦めなければ、勝ち目はあると判断したのだ。


 ただ一つ、計算が狂った。


 後から来たものは、庄の民たちがいつか結集し、反乱を起こすことを想定した。用意周到に準備をしていたのだ。


 小さな緑の石の偽物を用意し、間者をこっそりと庄の民に紛れ込ませていた。


 後から来たものと庄の民は、性格は真逆であるが、見た目はそっくりであり、全く見分けがつかないのだ。庄の民の反乱軍は、動きが筒抜けとなり、あっさりと鎮圧された。


 庄の民たちは、今後どうするかを再び集まり話し合った。我々には戦いの才能はない。後から来た者たちには、とてもじゃないが、勝てそうもない。


 1人の若者が叫んだ。


「こんな負け続ける生き方はウンザリだ。おれは、庄の国を捨てる。そして、身分を偽って、後から来たものの国へ行くことにする」


 小さな緑の石を壁に投げつけた。年老いたものたちが必死に引き留めるが、若者のほとんどが、庄の国を棄ててしまった。


庄の民の若者たちは、後から来たものの国に潜り込んだ。あるものは、将軍と呼ばれ、あるものは権力者の側近となったという。


 小さな緑の石とともに、庄の国の綺麗な心を棄ててしまったのだ。

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