死んでからの転生があると思うなよ

ひのもと

最終話(第一話)

死んだ。





どうやら死んだらしい。



見下ろした先には映画やドラマで見たような、としか言えないほど陳腐な光景が広がっている。

自分が死んでいる。

あーあ、パソコンの中身消したかったな。とか、スマホのデータどうしようだとか(これはスマホもはちゃめちゃに壊れていたから問題なさそうだ)、そんな心配ばかりだ。

なにかと期待されてばかりの人生だった気がする。

それがどうか、こんなになんの変哲もない、ただの会社員として社会の歯車の一つになって、毎日のルーティンをグルグルと回り続けている。いや、いた。

期待に応え続けた結果がこれだ。

若くして事故で死ぬ。

ただ、道路を歩いていただけだ。

ニュース速報じゃあ、歩行者1名が心肺停止の状態、とか言われるんだろうな。


なんだっけ。

そろそろお迎えが来る頃か?

このまま意識が再び飛んで、神とやらの前に立って、よくわからんながらも強い力をもらって、そのまま別の世界にドロンだ。

二次元だけの話かと思ったけど、実際こんな状況になってみると現実味を帯びてくる。

グチャグチャの自分なんざ見たくもないし、そろそろいいんじゃないか?


ニュースじゃあ本名から年齢から晒されて、社会問題に関係した事故だったらしく、なんでかわからんが卒業アルバムまで晒されてしまった。地獄かよ。

そりゃあ当時は社長になりたかったし、実際なれるとも思ってたからそんなこと書いたけど、現実が伴ってないから恥ずかしさ以上に情けなさでいっぱいだよ。

死んでからも感情って死なないんだな。


通夜があって、葬式があって。親が泣いてるとこを見て、親戚が親不孝ものだなんて険しい顔で言ってて。俺のせいじゃねえよ。なんだよ。俺の方が泣きてえよ。

身体もバチバチ燃やされて、あーあ、もう自分が無くなってしまった。もう戻れない。

まだここにいるのに。


もうそろそろさ、転生の準備できてきた頃じゃないか?神様ー、まだ?


一人暮らししてた部屋の片付けをしてる姉ちゃんが、ブツブツ独り言言ってる。

そんなに仲良くもなかったし、片付けさせられてる文句だろうなと思っていると、急に泣き出すし。何で泣いてんだよ。妊娠してるって言ってたし、体に悪いから泣くなよ。


実家はすっかり雰囲気も暗い。

あんまり実家帰れてなかったけど、両親とも老けたな。母親なんて立ち上がる時すげえ膝が痛そうにしてる。葬式ですっと正座だったもんな。大丈夫かな。

父親の方はずっと険しい顔してる。あんまり怒った顔を見たことがないから、心配になる。


まだ迎えは来ないのか。もういいんじゃないか?


会社にも行ったけど、席はもうすっかり片付いてて、なんならデスクマットも新調されてた。なんだよ、死んだやつのものだったらケチがつくから嫌だったとでも?まあ、単純に元からボロボロだったからこれを機に変えたんだろうけど。

隣の派遣の子とか、俺に気があるのかなとか思ってたけど、通夜にも来なかったし、まあ何だ、普通に俺の勘違いだったな。うん。今更ながらお恥ずかしい勘違いをしながら接してたことを反省してる。


もういっそ、転生なんてしなくていいから、

天国とは言わない、地獄だっていい、

もうここから解放して欲しい。


それとも何だ、この今の状況が、まさしく地獄だっていうなら、そりゃ間違いなく正解だろうな。



もう死んでんだ。





でも早く、俺を殺してくれよ。

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死んでからの転生があると思うなよ ひのもと @yocchama

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