第5話
ウルフが堂真を見つけて威嚇をし始めた時に、堂真は咄嗟にレベル一から覚えているスキルを使ってしまう。
「アタックビート!」
ズバン!と乾いた音を立てて真っ二つになるウルフからは赤色の液が水溜りの様に広がり鉄さびのような匂いが鼻につく。
初めて生き物を殺したが、ざわつく心は無く、まだゲームをしているのではと勘違いをしてしまいそうである。
そんな少し放心状態の堂真に京花が慌てて声を掛ける。
「堂真さん! 今の火力はなんですか!? 本当にレベル一ですか!?」
あまりの京花の驚きに堂真も驚く、そんなに火力がでていたのかと思うが、堂真の基準はレベルがカンストしている自分のキャラクターとの比較であった。
「そうか? あんまり高いようには……」
ステータスと呟き能力画面を見るがレベル一と書かれていたが、スキル項目にアタックビートのスキルレベル85とゲームをしていた時のレベルのままであった。
そう言う事なのかと堂真の中で物事を解決してステータスを閉じる。
「問題がわかったから大丈夫だ。これならサクサクと上の階までいけそうだな……」
「一体何がわかったと言うのですか!? 私に言ってくれないとわかりませんよ!」
「まぁ、その内教えるよ」
鼻歌を歌いながら堂真はダンジョン内を進む。
先ほどまでの緊張は無くなっていているのは、攻撃モーションがゲームと全く同じと言う事なので、もし今後の取得できるスキルも同じであれば何万回とスキルモーションを見てきた堂真は、低レベルでもある程度の各上の敵にも勝つ事が出来ると言うわけだ。
後はレベルが上がって増えたスキルを使い確認を早くしたいと思った堂真は思い切って次の階層まで行く事を京花に伝える。
「この階では少し物足りない。次の階層に行きたいけど良いかい?」
京花は何となくであったが分かっていたと言うそぶりを見せ軽く頷く。
そして二階に到達するが、一階と風景はさほど変わっていない。
「それにしても思った以上に人が見当たらないな」
一階から二階の間に数人の冒険者としかすれ違っていない事に堂真は不思議に思った。
「まぁ今の時期は人が少ないかな? 塔の低下層に人が増えるのは大体春からが多くて、夏が終わる頃には10階ぐらいまで行かないと少ないかな? 春になると学生が増えてきますよ」
どうやら春にから夏に向けて学生が増え始めるみたいである。まぁ新入生として冒険者に登録する者が増えると言う事らしい。
そして春に登録100人したとしたらその内30人は冒険者として活動できなくなっているらしい。
主に魔物に負けて殺されるか大怪我を負い、それがトラウマ等になり活動が出来なくなる者は沢山いる。
もちろんダンジョンと言う事で亡くなる者もいる。学園等であれば一クラス30人の所が一年の間に20人になると言う事もあるのだ。
そう言った話をしながら二階上がる。
しばらく歩くと一階より魔物の遭遇率があがり、大きな猫のプーマや蜘蛛のアイアンスパイダーなど魔物の種類が増え始める。
この魔物もゲームで見た事があり、ゲームと何かつながりでもあるのかと思ってしまう。
アタックビートのスキルを使い難なく魔物を倒していく。
二階の探索が終わる頃にはレベル3に上がるとゲームと同じパッシブスキルをおぼえた。
堂真は間違いなくレベルを上げるとゲームと全く同じスキルをおぼえ、なぜだかわからないがスキルレベルはゲームで上げていた状態で覚える事が出来ると確信した。
やり始めた頃と同じようにスキルレベルを上げるために乱狩りをしなくてもいいと言う反面と裏腹にレベルをとりあえず上げるだけの作業に少し不満をおぼえる。
「今日はこの辺にしておきませんか?」
京花が話しかけてくる。
今日は様子を見に来ただけなので堂真も京花に賛成をして転移石のある場所まで移動してダンジョンから出る。
一階事に転移石は置いていて何時でも抜け出せる仕様になっているみたいだ。
このおかげで命が助かったと言う冒険者は多いという。
ゲームであれば10階層まで上がりきらないと無いのに比べかなり緩いとイメージを堂真はこの時持っていたが、ゲームみたいに死んでも復活すると言うわけでも無いのでこの処置は非常にありがたい。
塔から出た二人は沈む夕日に目を細め、塔の事を堂真は聞きながら屋敷に戻る。
花右京家に戻った堂真は食事を皆で食した後、部屋に戻るなりすぐに眠りにつく。
その頃、とある一室で金治と京花が神妙な顔つきで、コップに注がれた飲み物を飲みながら話をしている。
「今日は彼と塔に言って来たのであろう? どうであった?」
「ハッキリと言えば彼は強いと思います。塔に入った時はレベル一と言うのに出会ったウルフにスキルを使い一撃で倒していました。レベル一と思えない程の火力を出していましたね。レベルが低いので現在の火力は私より少し劣ると言う感じですが、同じレベルであれば私は確実に負けると思います」
金治は深く考え込む。
はっきりと言えば過去からやって来たという堂真に対して金治はあまり信用はできていない。
なにせ過去の世界から来たと言う言葉のせいである。
誰でも過去からやって来たと言ってもこいつ頭がヤバいのではと思うのが普通であろう。
京花のお願いと言う事で一時的屋敷に置いているが、もちろんメイドや執事に監視はつけている。
ただ堂真の持ち物を見ればあながち嘘ではないと思うのも事実である。
「ふむ」
「あっ! それに堂真さんの職業がブレイドダンサーと言う職業となっていましたが、お父様はしっていますか?」
「ブレイドダンサー…… いや聞いた事がないな。戦士の上級職とは思うが……」
上級職は色々と確認されているが、さすがにその上の職業の事については誰も到達した事が無く、この世界にそう言った職業がある事も知らない。
「私が思うには上級職より上の職業ではないかと思っています。そうでなければあれほどの攻撃を出せるわけがありませんし、それに堂真さんは自分の職業について熟知している様子でした。 私達が住んでいる日本帝国の昔はもっと殺伐とした世界だったのでしょうか? 戦いを見ていましたが、素人と言う感じはしませんでしたね」
「私も彼を見た時には剣術は触った事が無い者と思っていたのだがね。何より手が綺麗であったからね」
冒険者をする者は過酷な戦場であるので、日ごろから鍛錬をする者は沢山いる。もちろん京花も毎日の日課で素振りをしている。
令嬢のような綺麗な手をしているが、手のひらには潰れたであろうまめの跡が残っていたりする。
それなのに堂真の手はまっさらと言っても良い程に綺麗なものであった。
「本当に不思議な方ですね」
「そうだな、それとは別で、京花は明日から学校だろ? 堂真君をどうするつもりだ? 学園に連れて行く事は出来ないぞ?」
「明日は過去の出来事について調べると言っていたので屋敷で調べものをしていると思いますよ?」
「そうか、まぁ何かあれば渚や菜々に任せるとしよう。なにかあればまた報告を頼む。我々として彼の事は助けたいとは思っているのでな」
「はい。わかりました。今日はこれで失礼します」
ぱたりと扉のしまる音の方向を眺める金治はこれからの事をどうするか、深く悩。
この事を日本帝国の王である兄に伝えるか伝えないかをだ。
悪用される事はないが、失われた日本の知識や情報を持っている堂真は王家に囲われることは間違いない。
いま深く考えても意味はなさい。金治は伝えるべき時にきちんと伝えようとおもった。
目を覚ました堂真は今日から京花は学校があると言う事で見送った後、メイドに連れられて書物が置いている部屋に案内され、歴史にかかわる本を探していた。
「図書館の様に本が多いな……」
あまりの本の多さに戸惑いを覚えると言うか、公爵と言う身分になれば何もかもスケールが大きいと言う方の驚きがつよかった。
必死に本を探していると、急に肩を叩かれる。
「あの~ 探し物はあちらの机の上に置いておきましたので自由にお読みになってください」
この部屋の中を管理している者なのであろうか、少し明るい茶髪にメガネをかけ、ザ・秘書というような感じの女性である。
「お手数をおかけして申し訳ありません」
ペコペコと何度も頭を下げる堂真。
「大丈夫です。京花お嬢様からも聞いていたので、ただ堂真様が目当てな物かわからないので、違っていたら声をおかけくださいね」
そう言うと女性は本の整理を始める。
堂真は用意されている本を手に取り本を読み漁るように夢中になっている。
気がつけば昼後を迎えている。
簡単に説明をすると、堂真が住んでいた日本はどうやら約2000年前以上という事である。
あくまで文明が出来てきた時期なので本来はもっと過去になるだろう。
約1000年前の人類が初めて過去の遺物を見つけた事が初めてで、色々な研究がおこなわれているが、未知数な事も多い。
その産物が見つかった場所は現代日本では四国と言われ、現在では死の国、略して死国である。
産物を見つけた時には調査隊で1000名と言う規模で捜索が行われたが、無事に帰って来た者は100も満たなかったそうだ。
その中で色々と古代文明を見つけて、現在の建物などでき始めたという。
現在も死の国は黒紫の雲におおわれて、日の光が年中届く事は無い程に暗くよどむ島国となっている。
過去もそうだが、現在も死の国の調査は行われているが、負傷者を出すばかりで、謎におおわれている。
これを読んだ時に堂真は死の国に行けば何かわかるのではないかと、気持ちは高ぶる。もちろん過去に帰れる情報があるなら良いが、成人するまでは四国で暮らしていた堂真は調査が上手くいっていないのであれば、過去のまま残っている物がまだまだ沢山ある可能性を持ち、死の国に行きたいと強く思い始める。
その気持ちが強くなると堂真は先ほどの女性にお礼を言い残して部屋を後にする。
どうやって死の国まで行くかを考えて廊下を歩いていると、目の前にいる渚に気がつかずにぶつかってしまう。
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