第4話

「ブレイドダンサーって言うのは二刀流なのですか?」

 京花は首を傾げながら聞いてくる。

「基本は二刀流だな、高火力で敵を攻撃するのが役職となるな」

「そなのですか? まだ何かを隠していそうな気がしますが、そこはまた今度聞く事にしますね」

 嘘が下手なのか京花が人を見る能力に長けているのかわからないが、いずれはわかってしまうだろう。

 準備があらかた整い、京花は何処かに連絡を入れると、屋敷の前に昨日乗ってきた車が止まっていて、それに京花と堂真は乗り込む。

 昨日と同じように外を眺めているが、昨日よりも良く見え、自分達が見て来て過去の日本より発達しているのだと感じる。

 天空の塔と言われる塔を近くで見ると本当に不思議な建造物である。 

 白い外壁に覆われながら円形の建物が空高くまで上っているのだ。地震や台風が来ると壊れてしまうのではないかと思ってしまう程まで高くなっている。

 その塔を眺めていると車はとあるビルの前に着く。

「ここは? ビル?」

「えぇ。ここで塔の中に入るための許可書をもらわないといけないのですよ」

 いわゆる冒険者登録みたいなものだ。

 堂真は木造の建物で剣と盾が目印になっている様な事を想像していたのだ。

 京花はビルの中に入ってく、その後ろを堂真はついて行くと、ビルの一階には、色々な武具を装備した人で賑わっていた。

「おぉ~」

 あまりの事に声を漏らす。その声を京花は聞いていたみたいでクスリ笑う表情に虜にされそうになる。

 軽く咳払いをして堂真は向き直る。

「すいません」 

 京花は一つ空いているカウンターの女性に声を掛ける。

「あら? 京花様ではございませんか? どのような要件でしょうか?」

 くりっとした目に泣きボクロが目立ち大人の女性をかもし出している美人の受付嬢が対応に答える。

「今日は彼のカードを発行したくて来ました」

 美人の受付嬢と目が合うと一瞬であるが目が少し開き大きくなっていた。

「あのイケメンの彼とどういった経緯でお知り合いに?」

 受付嬢は京花にいきなりフレンドリーな対応をしているが、貴族が絶対など逆らえないと言う事ではない。

 貴族が居るだけで平民は頭を下げないといけないと言う事は無いが、色々な場面では貴族と言う方が上と言う感じである。

「まぁ色々とありまして……」

「彼氏と言う事ではないのですね?」

「まぁ知り合って一日しか経っていませんからね」

「なるほどです」

 受付嬢はカウンター下をごそごそとしながら書類を出して来る。

「すいませんお名前を聞いても良いですか?」

「堂真と言います」

「堂真さんですね。これからいくつか質問をしますので、お答えの方をお願いします」

「はい。わかりました」

 ゴホンと咳払いをして用紙を見ながら質問をしてくる。

「え~ 本日は冒険者登録と聞いていますが、言いにくいのですが、塔の中で発生した事故などには管理局は基本責任を取る事は出来ませんが、よろしいでしょうか? 内部で見つけたアイテムは拾った人の所有物になります」

「大丈夫です」

 堂真は受付嬢が言っている事は登録時に確認を取るためなのだと思い、話を聞いていく。「次に、冒険者ランクですがF~Sまで存在しています。階級が上がれば組合に関係のあるお店等で割引があり優遇されるので頑張ってください。ただAランクより上になると、緊急依頼で急な呼び出しがあったりします。ただ報酬の額が多くなります。そしてランクの上げ方ですがランクBまでは討伐数ですが、Aランクから上になると、魔物図鑑に登録されている指定魔物を倒す事によってレベルが上がります」

 簡単な説明と質問を淡々と聞いてく。

「そう言えば昨日モニターに映っていたのはなんですか?」

「あぁ、あれは冒険者が塔の中で戦っているのをリアルタイムで放送しています。何個かモニターがあり、上に登るにつれてテレビに映る可能性があるので頑張ってくださいね。昨日映っていたのは暁の地平線と言う大型ギルドですね。堂真さんもギルドに入るのをオススメしますよ。色々な人とパーティーを組みやすくなりますからね」

「なるほど、京花も映った事ある?」

「私は何回かあるみたいですけど、実際は映っている本人はそんな事を気にして戦いが出来ませんよ。むしろ知らないうちに映っていると言った方が正しいですね」

「早く塔に行ってみたいものだ」

「頑張ってください。応援をしています。本日の担当の八雲 香です。彼氏募集中なので気軽に声を掛けてくださいね」

 両手で握手をしてくる受付嬢である。

 この時、堂真の手の中に一枚の紙があり中には渚の名前と電話番号が記されている。

「あっ俺電話持ってないわ」

 正確には持っているが、現代日本の電話回線が違うせいで電話をしてみたが、繋がる事がなかったのだ。

「携帯を持った時にでも登録をしていてください。まぁ私はこのカウンターで大体は居ますので、冒険の事やプライベートの事などなんでも聞いてくださいね」

 アバターの姿でなければこれ程女性に言い寄られる事は無かっただろうと思うが、アバターの姿で良かったと思うこのごろであった。

「また何か困った事があればよろしくお願いします」

 堂真は香にお礼を込めて頭を下げる。

「堂真さん! 早く塔に行きますよ! 此処まで来たのですから一階ぐらいは見に行きましょう!」

 京花は少しむくれ顔で堂真の手を引きビルの外に出ていく。

 その間、渚は堂真に向かって可愛らしく小振りで手を振ってくれている。

「そんなに焦ってどうした?」

「焦ってなんかいませんよ! うつつを抜かしていたら怪我をしますよ。今から戦いに行くと言うのに……」

 少し怒った京花とビルから塔の移動中はあまり会話がはずまなかった。何に対して怒っているか堂真は気がつかなかったのだ。

 それどころか、初めて歩く街なみに目を引かれキョロキョロとしていた。

 都会と言えば至る所に食品系や服屋など色々な店が並んでいる。堂真が見てきた街であるが、この世界では塔の近くになるにつれて、RPGのような武器や防具や鍛冶屋と複数あり、重そうな鎧を装備している者や魔道師の様な顔をフード形のローブなどと見られる。近未来RPGのゲームの世界に居る様な感覚になってしまう。

 冒険者の格好をした人以外は堂真も知っている現代風のファッションをしている男性や女性といるが、隣には重装備をした騎士のような人が歩いていると、何とも不思議な気分になってしまう。

 いよいよ塔の入り口に向かう門を潜ると、そこには先ほどと違い一般人の様な人は、ほとんどいなくなっている。

 むしろ堂真の黒服と黒いズボンが浮く状態になっているが、一応これも防具と機能していると京花に伝え防具屋にはいかなかったのだ。

 実際に塔の中で出てくる防具に普段着に能力が付いている物は存在しているが、どれも実戦で使うのには心もとないが、低下層なら大丈夫だろうと言う判断で京花も日ごろ塔に潜る装備をしていない。

 入口に着くまでに京花は何人かの人に声を掛けられ話している姿を見る。

「京花は意外と有名人なのか?」

率直に聞いてみる。

「少し有名っていう所でしょうか? 主に家が公爵と言う事と何度かモニターに映ったのが原因だと思いますよ」

「そのうち俺も有名人の仲間入りかな」

 カラカラと笑う堂真である。

 話をしていると塔の入り口に着く。

 塔に入る前に警備をしている人に冒険者カードを見せると中に入れるシステムである。

 カード見せた二人は警備員に許可をもらい小さめな門を潜ると、雰囲気ががらりと変わる。

 ダンジョンのゲームの様に周りには石壁で覆われていて、正面には塔を上る階段があり、右側には濃い青色をした次元の狭間のような空間があり、何名かはその中に入って行き消える。何処かにワープをしたように消えるのだ。

 左側はなにも無い空間から次々と人が出てくるのだ。

 この時、堂真は右側が何処かの指定した階層に行き、左側は帰還する時の出口のようなものだとおもった。

「なるほど、本当にゲームのようだな」

 呟いたつもりが思った以上の音量で京花に聞こえていたみたいだ。

「ゲームですか? それは何ですか?」

 この世界にはゲームが存在しない。

 ゲームではないが、遊び場として娯楽施設はあるが、テレビゲームと言う存在が無い。

「まぁ娯楽の一つかな」

「是非一度してみたいものですね」

 携帯が充電できるようになれば京花にもゲームをさせる事はできるが、充電器機が無い今は電気をあまり使いたくないと思う。

 堂真は京花に言われた階段を上がりきると、薄暗い洞窟内に出る。

 冒険の始まりの合図に心が躍る。

 花右京家から貰ったソードを両手に持ち、一歩ダンジョン内に足を踏み込む。

「どうですか? 冒険の始まりは」

「あぁ、すごく心が躍っている。早く魔物と遭遇してみたい」

「では進みましょう。低下層は罠の心配をしなくて大丈夫ですよ。十階からは気をつけなければなりませんが」

 罠も存在する事に本当にゲームなのかと思ってしまう。

 二人はしばらく歩くと京花が立ち止まる。

「そこの曲がり角に魔物が居ます」

 この時、堂真も京花と同じように曲がり角に何かいると感じ取っていた。

 現実世界と認識している堂真は初めての現実での戦いに表情は少し硬くなっているが、京花の言われた通に曲がり角を曲がると、そこにはウルフが居た。

 このウルフは堂真がしていたゲームに出てくる敵に似ているが、現実でもゲームなんかでもウルフはあまり変わらないのだと思った。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る