第3話

 あきらかに凝って作ったキャラクターは女性達から見ると、とても魅力的な男性に見えている。

 街で居た時もこそこそと女性達が見ていたが、堂真は気がついていなかったのだ。

 そんな話をしているとも知らず、堂真は夢の中に旅立っているのだ。

 準備も終わり部屋を出た所で、堂真を案内していたメイドが立っている。

「京花様。先ほどお客様をお呼びに行きましたが、どうやら寝てしまっているようですが……。どうなさいますか?」

「そうですか、確かに環境の変化で疲れが出てしまったのでしょう。そのまま寝ていてもらって大丈夫ですよ。ただ途中で起きたなら、私に一言くださいね」

 京花はメイドに言うが、堂真は朝まで起きる事は無かった。


「んっ……」

 暖かい日差しに目を覚ます堂真は昨日の出来事を思いかえしていた。

 何か大事な事を思い出せないぼーとした頭を軽く振るうと京花が来ると言っていた事を思い出す。

「やってしまったな」

 他人の家に来たものの家主に挨拶をする事なく部屋で寝てしまった失態にどうするか悩んでいると部屋の扉がノックされる。

「どうぞ……」

 茶色い髪のメイドが部屋に入って来る。

「おはようございます。ぐっすりと眠られていたようですね」

 クスリと笑う笑顔に顔が熱くなる衝動に駆られる。

「お蔭様で、ぐっすりと眠る事が出来ました」

「それではお食事の方にしたいのですが、移動をしても大丈夫ですか?」

「大丈夫です」

 堂真は服を直してメイドの後をついて行く。

 この時代に来るまでは堂真は仕事を終えた後に夜遅くまでゲームをするサイクルを繰り返していた。

 久しぶりにじっくりと寝られた事に爽快感が芽生えていた。

 しばらく歩くとメイドは立ち止まり、扉をノックして扉を開けると、長方形のテーブルがあり、20人程なら座れる程の大きさである。

 その一角に京花が座っているが見え、上座には京花と同じ金髪で少し目つきが鋭い男性が座って、京花の正面には母親だと思われる人が座っている。

 明るい茶色の髪でおっとりとした表情に少し垂れ目が印象である。

 その隣には金髪よりも茶髪よりの明るい髪の少女が座っている。

 京花の妹なのだと思う目は母親似て少し垂れ目であるが、とても可愛らしい容姿をしている。 

 どうやら京花の目は父親に似たのだと感じ取れる。

 堂真は座っている京花達と目が合い軽く会釈をする。

 貴族の挨拶の交わし方など知らない堂真はとりあえず自分なりに頑張る事にする。

 京花の隣に案内された堂真はメイドが椅子を引いてくれたので、その椅子に座る。 

「君が堂真君かね?」

 京花パパが話を切り出して来る。

 緊張の中で堂真は何とか返事を返す。

「はい…… 昨日は挨拶をする事無く寝てしまって申し訳ありませんでした」

 深々と頭を下げる。

「その事は気にしないでくれ、京花から事情は聞いているのでな。私は京花の父の金治と言う。大変な事に巻き込まれてしまったみたいだね。家族と決めた事だが、しばらくは君をお客として家に居てもらう事になるが、大丈夫かね?」

「お願いします。今の俺では帰る場所など何処にもありませんから……」

 堂真は頭を下げたまま自分の太ももに置いてある手をズボンごと握りワナワナと震える。

 最後に話した過去の家族の事を思いだして、溢れそうになる物を必死に堪えていた。

「絶対とは言えないが、君が過去に戻れる方法を私達も探して見るつもりではあるが…… 可能性は低いと思っていてほしい。可能性があるなら、君も見たと思うが、天空の塔にある最上階に願いが叶う宝玉が存在していると言う話を古文から見つかった事があってね。あれなら目指してみるといいよ。ただ現在攻略されている階数は70階とまだまだであるが、無理をせず頑張ってみるといいよ。私達から教えられる事はこれぐらいしかなくて、すまないね」

「私は京花の母で渚と言います。堂真君はこの世界で知っている人が居ないと色々と大変な事もあるとおもいますが、私達が見ていますので、自分がしてみたい事などあれば言ってくださいね。協力をしますよ。私の隣に居るのが、次女の菜々です」

 ブロンドヘアーの渚は二児の母と思えない程にスタイル良く、京花の姉としても通用しそうな程、若く見える

「菜々だよ! 堂真のお兄ちゃんよろしくね! とてもイケメンだから将来私の婿になっても良いよ!」

 とても元気で明るい少女がキラキラとした視線を堂真におくり続ける。

「それは光栄だね」

 中学一年ぐらいだろうか、とても元気が良く、自分のはなす順番が来ると席から降りて堂真の座っている膝に手を置いて下から黄色い瞳が見上げてくる。

 あまりの可愛らしい仕草に堂真は幼女好きと言うわけでは無いが、つい口元がにやけてしまいそうになるのを抑えて、菜々の頭を優しく撫でる。

 朝食をご馳走してもらったが、この世界の料理質が低いと言う事に感じる。 

 塩など調味料と使っているが、どの料理も少し辛めに作られている。

 軽く皆と話すと京花は冒険者に慣れる素質があるかを調べる装置がある部屋に堂真を連れて行く。

 部屋の真ん中にルーンの様な文字で書かれた石版が置いてあるだけの部屋である。

「あの石版に手を置いて石版が光り終えるとステータスと唱えてください。そうすれば堂真さんの能力が見られると思いますので」

 京花の言うととおりに堂真は石版に手を置くと青白い光がルーンの文字を照らし、部屋全体が明るくなる。 

 そして光は徐々に消えていく。 

 消えた事を確認した堂真はステータスと口に出して言うと、どういった原理なのかわからないが、自分の目の前にステータスボードが出てくる。

  

名前 赤崎 堂真 20

 職業 ブレイドダンサー

 レベル 1

 スキル等の記入枠は無く、名前と職業とレベル表記と簡単な名刺の感じで浮かび上がってくる。

「どうでした? 戦闘職なら問題なく冒険者に慣れますよ! ちなみに堂真さんは戦士と見ました! 当たっていますか?」

 何を思って戦士と確信しているのか、わからないけれど、自分の表情で戦闘職と言う事は京花にも伝わっているだろう。 

「ちなみに職業って言うのは色々あるのか?」

「そうですね。 まぁ大体は戦士 僧侶 弓使い 魔法使いとありますが、稀に上位職を最初から得る人もいますね。 レベルをあげると誰でも二次職に就く事も可能ですが、レベルを50まで上げないといけないのですよ」

「そうか…… 戦士のレベルをあげると派生はしないのか? 例えば重戦士や騎士と言った前衛と役目は違うが、元は同じ戦士系だろ?」

 大体のゲームだと転職をする時に派生があり、完全防御型のナイトや皆を守りながら戦う聖騎士等と色々の派生先があるのだ。

「さすが堂真さんです。戦士の先には色々な派生先が存在します。ですが、戦士から次に何になるかはレベルを上げて解放しないとわからないのです。ある者は重戦士であったり騎士であったりと、条件がわからないのですよ」

 もしこの世界がゲームと同じ条件で職業が解放されると言うならば、京花で試してみたいと堂真は思った。

「そ・れ・で、堂真さんの職業は何でした?」

「ん~ ブレイドダンサーかな?」

「ブレイドダンサー? 戦士系の職業だと思いますが聞いた事が無いですね」

 初めての職業に考え込む京花であるが、ゲームのキヤラクターでなっていた職業なので、知るよしも無いだろう。もしこの世界でブレイドダンサーと言う職業があるならば最上位職になるだろう。

「まぁ戦士系の職業だな。これで俺も冒険者になれると言うわけだ。早速だが、塔に行かないか?」

「いきなりですか? 無知で行くと危ないですよ?」

「あぁ~ 確かに武器が必要だな」

 ステータス画面を開きっぱなしにしていた堂真は何気なにしインベントリをクリックする。 

 そこには普段のキャラクターが装備している武器とアイテムが入っていた。防具は無いのかと見ていると、見てみると防具はすでに装備されている状態であった。

 大体のゲームは防具にアバターを着せて見た目を変えるシステムが存在していて、堂真は派手な衣装では無く無地の黒服とズボンを着ているのだ。

 見た目はあれだが、当時の頃では最強シリーズに君臨していた神龍シリーズ武器防具を一式集めていた。

 この装備は作るのには大変な労力と時間が必要とされた。

 一年かけて作り上げた性能は抜群で一式揃えている者は少ないと言う。

 ただこの装備があると言うだけで少し安心感は出てくる。ゲームの中と言え使い慣れた武器があるのは嬉しいものである。

 だが、この装備の事は黙っているのが一番であると思い堂真は知らないふりをした。

 この世界の武具の性能を確認してからでも遅くないと判断したからである。

「だったら、武器を置いている倉庫があるので見に行きますか? お父様に言えば少しくらいはもらえると思いますよ」

「そう言うのだったらお言葉に甘えよう」

 京花の足取りは軽く、金治に武器が欲しいと言うと、考える暇なく許可をもらえた。

 

 二人は武器庫に来ると、そこには様々な武器の種類があり、剣、槍、斧、短剣、弓、杖、棒と誰が来てもその人に合う様に置いてある。

 堂真は刃が90㎝程のソードを手に取り軽く触る。

 適正なのかしっくりと来るので、堂真はソード二本貰いインベントリの中にしまう。

 この世界では誰もがインベントリを持っているみたいで、京花も持っているが、しまう事が出来るのは10枠しかないのに堂真は課金で上限を増やしているので100と膨大な数である。

 その中には課金アイテムなど色々なポーション類が複数存在している。この世界に置いてかなり高額なアイテムだと知らない堂真である。

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