第11話 仲直り
統一歴173年6月23日 火星外縁HG-8D
この時、星空達の乗るアドミラル・クズネツォフ級空母3番艦である信濃は改明石級ドック艦1番艦熱海による補給と整備を行っていた。熱海に横付けした状態で非戦闘状態になっている。この時ほとんどの乗員は休みに近い状態だ、だが今はちゃんと勤務途中であるため最低限の節度とマナーは守っている。
星空は熱海の食堂で信濃の砲術員のハインツ・アインホルンと話しながら食事をしていた。
「星空お前、鈴と最近話してないよな。なんかあったのか」
と、ハインツが話しかけてきた。
「いや、まあちょっとな」
少し濁す形で星空は答える、この前どこかの隊長に強引に酒を飲まされた挙句それで酔った星空を鈴の部屋へ連れていき、寝ぼけてる鈴に星空を預けた結果とんだ誤解が生まれてしまい、今のこのギクシャクとした関係へと繋がる。
それを見たハインツが呆れ顔で。
「道理でさっきから、こっち見てる人がいるわけだ」
彼の向けた視線の先には鈴の姿があった、目が合った瞬間すぐにもの陰に隠れてしまった。あの時からだいぶ経っているが、未だに仲直りので来て居ないのだ。
「何があったか詮索はしないが、作戦行動するなら仲直りしといた方がいいと思うぜ。お前らは命を預けてる者同士だからな」
星空もそれは重々承知だ、だから何度も話をしようと鈴に話かても、スルーするかそもそも避けられている気すらする。いや、確実に避けられている。
「ふう、そうだなちょっと行ってくる。ありがとな」
ハインツの好意に感謝しながら星空は鈴に今度こそ必ず謝ってこのギクシャクした関係を改善することを決めた。
鈴のいた通路の方へ向かい周りを星空は見渡す。通路の奥の方で右に消えていく少し茶色がかった髪が見えた、星空はそれを追いかけた。
「鈴、待ってくれ話がある」
声をかけると鈴はまた星空から逃げるように走り出した。星空はそれを本気で追いかけた、鈴も軍人だそこら辺の一般市民と比べれば体力はある部類に入るが相手は軍人の男だ、星空はすぐに鈴の手を掴んだ、少し強めに。
「ちょっ、離してよチビ星空」
捕まえてそうそう鈴は暴言を吐く。
「おいおい、そりゃあねぇだろ」
「だってチビじゃん私と背ほとんど変わんないじゃん」
(痛いところを指してくれるなコイツ)
フツフツと込み上げてくる怒りを星空は抑えながら自分の要件を話した、ちゃんと今までどうり馬鹿やったりしたいと言うこと。自分が悪いことをしてしまったこと。そして、それを謝罪させて欲しいと彼女に伝えた。
鈴は少し俯いて...
「アンタは何もしてないわよカメラ見たから」
彼女の言うカメラと言うのは協商軍艦艇の艦には基本備わっている個人部屋のカメラのことだ、隊員同士でのトラブルの時のために設置されていて本人でないと閲覧できないようになっているので、最低限のプライバシーは保証されている。
「だから、星空は何も悪くない。謝らなくていい、謝らないといけないのは私」
そう言い鈴は顔を上げた。
「そ、その...変な心配かけて悪かったわね...」
そう言いながら今度は右に目線をそらす。その後少しの間静かな時間がすぎた。
鈴はこの空気に耐えられなくなったのか『パンッ』と手を叩き。
「はい、この話はここまで」
と、言いながら星空の手を引いて元来た道を戻ろうとした。
「おいおい、どこ行くんだよ鈴」
「誤解?仲違い?なんだかわかんないけど仲直り出来たんだし、なんか飲もうよ。もちろんアンタの奢りでね」
強引に話を進める鈴はいつもどうりの笑顔になっていた。そんな鈴を見ながら星空は『やれやれ』と思いながら鈴に引っ張られて行った。
「もう、酒だけは勘弁してくれよ」
「馬鹿、当たり前でしょうが」
パット笑いが生まれる。
食堂はいつも慌ただしいことが多いのだが、この時はいつもより一段と騒がしかった。あるものは「おいおい、まじか」と言い、「これ、不味くないか」と不安な声を上げていた。声のする方を見ると、大人数の隊員達が食堂中央にあるホログラム画面に映し出されているニュースに釘付けになっていた。
ホログラム画面には、巨大な彗星のような、小惑星のような、しかし所々の隙間から人工的な何かが姿を見せている。それが地球に落ちていくところだった。
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