第9話 事実2/2

「じゃあ、俺たちはずっと同類と殺し合いを続けてきたってことなのか...」


 アドリアンは『信じられない』と言うふうな表情だった。


「ええ、そうよ。だけど、彼はたくさんの情報を私たちにくれたわ」


「それは一体どう言う...」


 捕虜になった彼がもたらした情報はこうだった。まず1、敵の母星の位置、その星にはふたつの国があること、片方は大ジャンドルフ帝国、彼の母国だ。2つ目はその帝国と戦争をしているロイヴィア連邦共和国だ、など様々な情報を提供したらしい。


「ちょっと待ってください、どうやってその情報を彼から聞き出したんですか?言語が同じなんてあるはず」


 県準ヒョジョンの疑問はご最もな質問だったエリカはその質問に表情一つ変えずにこう答えた。


「県準中佐の言うとおり同じ人類と言えど別の惑星に住む者たちと同じ言語だとは到底思えない、だけど違ったは、言語だけじゃないアルファベット、ローマ数字、ギリシャ数字など他にも確認されてるだけで十数カ国の言語が確認されたわ」


 ありえない話だ『まるで誰かが手引きしたような話だ』星空はそう思った。


「ですが艦長、彼はなぜここまで情報を私たちにもたらしたのですか」


 県準の質問は星空の抱いている疑問と同じだった。


「私が聞いた話では、彼はこう話してたそうよ」


『俺は祖国に対して大きな不満を持っている。だから情報はそちらに流そうじゃないか。だが俺も軍人だ聞かれたことにしか答えはしないからな』と彼は言ったそうだ。


「艦長、この事はどこまでの人間が知っているんですか?」


 県準に続きアドリアン質問を投げかける


「そうだ、協商議員会の連中は協商国民に対し敵の存在がわかり次第包み隠さずに公開すると言ってたはずだぜ」


「現在、議会はメディアと共に情報公開の準備をしているらしい。公開は数時間後に予定している」


 ケルンは端末を見ながら答える


「おそらく、今わかっていることはこの辺までかしらね、残りは議会からの情報公開の時に他の隊員たちと確認して欲しいわ。もっと気になることもあるだろうけど、ごめんなさいね。もう、下がって構わないわよ」


 それを聞き星空達は敬礼をした後、艦長室を後にしようとした時だ。


「あ、そうだわ星空少尉ちょっと話があるの副長と参謀も下がってくれる」


 その言葉を聞きケルンと友悠は敬礼をしてアドリアン達と下がって行った。少しの間静かな時間が流れた、実質数秒ぐらいだろうが星空にとっては長い時間のように感じた。


「星空少尉」


「は、はい」


「あなた、確かある女性を探しているのよね確かエマ・マッケンジーと言ったかしら」


 星空の探している女性、知り合いに手引きしてもらい協商中の個人データを回っても見つけることの出来なかった女性のフルネームだ。


「艦長なぜそれを知っているのですか?」


「あぁ、何故知ってるかですけど、アドリアンから聞いたんですよ」


『後で詰めよう』星空はそうすることにした。


「ですが、なぜ自分の探しているエマが出てくるのでしょうか」


 その質もへの回答はこうだった。


 捕虜から得た情報の中に今、敵であるジャンドロフ帝国のとは別の国、ロイヴィア連邦共和国軍のエースパイロットや提督などの情報を聞き出す際にロイヴィア連邦共和国宇宙軍にエースパイロットの名前としてエマ・パーキンスという名が上がってきたのだと言う。はっきり言ってそれが星空の知るエマ・マッケンジーである可能性は0に等しい、それに苗字もちがう。しかし捕虜はこう話していたらしい。




「あんたらの軍隊の4315って言う機体番号の奴がいるだろ。あいつと似てるんだよさっきのエマって奴がよ」


 4315と言うのは星空の機体番号だ、尋問を担当する女性が難しい顔をしながら。


「それはどういうことですか?」


 と尋ねると、


「戦い方かな、大技を出す時ってのは大きな隙ができる。そこにこっちが技を入れようとすると攻撃をやめて弱点を着いてくる。それを続けて最後にとどめを刺す完全に一緒なんだよ、正直気味が悪いね」




「まあ、確実にさっきの女性があなたの探してるエマである可能性は限りなく低いと思うわけど、もしかすると...みたいな話よ。ごめんなさいね引き止めてしまって」


「いえ、ありがとうございます。では自分はこれで」


 星空は敬礼をする前に大きく頭を下げ艦長室を後にした。




「さっきの話が本当なら...」


 と呟きながら星空は自室へと戻って行った。




 大型ドッグ艦明石尋問室


「次の質問です。あなた達の軍隊は地球に直接乗り込む計画はありますか」


 尋問を担当している女性士官が尋ねる。それに対して捕虜である少年は。


「あんたらの母星に直接乗り込むはないかな」


 彼は計画の部分を強く強調した。


「計画はないなら地球には攻めてこないと」


「いや、違うな攻める計画はもう終わってる今頃あんたらの星に着く頃じゃないかな」


 ここまで話して彼は笑みを浮かべた。

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