第5話 鹵獲作戦2/2

 電子砲の銃口の奥の赤色がだんだんと濃くなっていく陽電子砲の砲口は星空のいるコックピット部分を完全にロックオンしていた、それにこの距離では回避したとしても助かる見込みはない距離だった。


 だが、陽電子砲が星空へ向けて放たれる直前ヘッドホンから女の声が聞こえた


『星空右に回避!!』


 その通信を聞き星空は言われた通り右に大きくブーストする。


「ぐぅ...」


 急な動きをした事で少し強めのGがかかる、それと同時に特異型に大きめな光の粒が当たる、特異型は大きな音を出して左へと大きく吹っ飛ばされる、対物理フィールドを搭載していて傷が着くことがなくてもぶつかった時の衝撃を全て受け止めることまでは出来ないのだ、衝撃は大きいものでそれにより特異型の放った陽電子砲は星空機の左足を吹き飛ばす程度にとどまった。


 だが星空のメインカメラやレーダーには特異型しか映ってはいなかった、それほど遠いところからの狙撃ということだ。だがそんな芸当が出来る女性パイロットなど、


「助かった鈴リン」


 そう言われた彼女は


『バカなた!!隊長が言ってたでしょ、出来るだけ傷つけるなって。だから多少傷つけるぐらいいのよ』


 そう声を大きくして怒鳴りつけた


「わかった、悪かったからで特異型は?」


「特異型ならさっき撤退したわよ」


 よく見ると正面にひとつも光が見えていた特異型のブースターの光だろう、鈴が言うにはおそらくさっきの狙撃で制御システムのどこかがイカれたのかおかしな挙動で去っていったらしい、その時バックモニターに明るい光が映った赤、黄色、青、の撤退信号だ、その光の後ヘッドホンから隊長の声が聞こえた。


『全機作戦終了撤退だ』


 そこ言葉を聞いた星空はほっとする「今日も生き残ることが出来た」そんなことを考えながらスラスターをふかそうとするが、機体は動かなかった、さっきの強制ブーストによりエンジンが完全に焼き付いて使い物にならないのだ、


「あんた、何機ダメにしたら気が済むのよ」


 鈴は呆れたように話しながら自機のハンドアームを伸ばす。星空はこれまでもいくつかの機体をスクラップ場送りにしたことがあり、工作艦明石所属の整備長のバトエルデネ・ツェツェク班長によると彼は「機体をゴミ扱いしてる」「ちゃんと扱え」などよく怒鳴られている。


「機体が...」


「もろすぎるんでしょ」


 言おうとしたことを言われた、鈴は「やれやれ」という感じに首を振る。


「そうだそれに、反応が遅い」


「あっそ」


 鈴は星空の機体のショルダーアーマーにアンカーフックをつなぎ牽引しながら母艦である信濃に帰還した。



 今回の戦闘は戦術的勝利だった。敵の機体を5機鹵獲し残りの機体は撃破もしくは撤退した、だがこちらの被害も小さくはなかった。星空の目の前で撃破された3機を含む7機が撃破未帰還となった。


 しかし、星空達の出撃前に出ていた第三十強襲偵察部隊の隊長ツィプラコフ・アレクサンドリア少佐の機体が発見され近くにあったコクピット部分から救出されたそうだその後に病院船モーリタニアに移送が決定した、残りの2人は完全にコックピットを潰されていたらしい。


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