第4話 鹵獲作戦1/2

『ローレム隊発艦してください!』


 管制室ガイドルームからの発艦命令が発令された、それと同時にローレム隊隊長アドリアン・チャイコフスキ中佐が全機に対してこう言い放った。


「お前ら帰還したら俺が1人1杯奢ってやっからな!」


 その言葉を聞いたローレム隊隊員たちはその言葉に歓喜した。


 その声を聞きながらアドリアンは


「3401機発艦する!!」


 そう言いながらスロットルレバーを前に大きく倒した、それと同時にバックパックに装備されているF1093陽粒子ジェットエンジンが唸る、それと同時に足を固定しているレールカタパルトがアドリアン機を高速で打ち出す、それに続き計27機が発進する。


「全機、今回は撃破ではなく鹵獲がメインだ、敵艦も、敵機体も、できるだけ傷はつけるな。特に、さっき早期警戒に出ていた奴らの見つけた特異型、あれは絶対に鹵獲する」


 アドリアンは特異型の部分を強調した、それぐらい特異型が危険だということだ。


「編成はいつも通り中隊規模で動くことだ。だが、常に別の中隊の援護ができるようにしておけ、それでは全機作戦開始」


 その言葉とともに大隊は3つの中隊に別れた、


「星空お前は...出来るだけ敵機体に傷をつけるな」


「わかってますよ隊長」


 星空と呼ばれたパイロットはそれを適当に返した。こんな感じにいつもと同じように少しの会話を挟んだ後、数刻もせずにパイロットたちは身を引きしめる。


 その時だ、センサーアイが何かをとらえメインモニターに映し出す、そこには十時陣形を組んだ30機ほどの敵部隊だった。そして中央には、


「特異型...」


 それは、群れの長のごとく他の機体とは比べ物にならないぐらいの異様さを放っていた。


「全機いつも通りに...全機散開、武運を祈る」


 攻撃開始の号令を聞き、ローレム隊全機が自分たちの小隊に別れ行動に移す。


 攻撃型アタッカーが敵部隊に突撃をかけ、それに続き防御型タンクが突撃を援護する形でミサイルなどの飽和攻撃を行い敵機の動きを鈍らせる。最後に後方で狙撃型スナイパーが狙撃や、砲撃などでの支援を行う。


 星空の乗る機体は、攻撃型に分類される機体


 型式番号BB-19 72式戦闘機巧人形『クノイチ』だ。


 近接戦闘に特化した機体で武装のほとんどが近接戦闘をする前提に設計されており、射撃武器も取りまわしの効きやすいPP-7短機関銃を採用、そして特筆すべきは、その加速力と機動力だ、協商軍に採用されていたBBの中でも髄を抜けたものとなっている。しかし、クノイチにはそれゆえの欠点が存在する。それは防御力だ高起動、高速度を実現するために装甲を犠牲にしたのだ、俗に言う「当たらなければどうということはない」と言うやつだ。



 防御型によるミサイルの飽和攻撃で怯んだ敵を、星空達の駆る攻撃型が次々と特殊鹵獲弾を使い無力化して行く、星空も2機ほど無力化に成功したその時だ、目の前で次の敵を探そうと動こうとした味方3機の頭部が粉々になったかと思うと、その3機の前になにか大きな影が現れコックピット部分を大振りなアイアンクリャッシャーで原型を残さないほどの圧力で圧縮する。この攻撃で味方3機が完全に沈黙した。その3機を殺った黒い影が星空の方へ向く、黒い影の正体はさっき十時陣形の中央にいた、


「と...特異型」


 星空は驚きとともに、恐怖、そして、殺気を感じそのまま固まってしまった。


 固まった星空の機体を見つけた特異型はすぐに距離を詰め、さっきと同じようにアイアンクリャッシャーで圧縮死にかかる。星空はその攻撃をあと数メートルのところで避ける、そして間髪入れずに反撃にかかる、左腕に搭載されているリングコンバットと言う手裏剣のような武器を発射するも、


「くそっ...あの距離で」


 相当近くではなったはずだがリングコンバットは空を切る、今度はバックパックに搭載されているPP-7短機関銃を取り出し敵に向け弾をばらまくが、やはり帝国の機体だ、対物理フィールドを搭載しているため実弾でのダメージは与えられない。特異型も機首に搭載されている陽電子砲4門を一斉射撃するも星空は直前でアンチ素粒子装置を起動させ素粒子の加速熱を完全に打ち消す。


「射撃がダメなら」


 そして両方が近接戦へと移行するも両者ともに攻撃を避けるか、いなすかのどちらかが続き決着がつかないなか、特異型が星空にアイアンクリャッシャーを叩きつけるそれをシールドで防ぎ、向き合ったまま特異型と右に旋回する、自機の後ろに太陽が来たタイミングで蹴りを入れ距離を摂り、太陽を背にした状況を作り上げバイザー部分に斬り掛かる。が、特異型は自機を微妙にかたむけ星空の攻撃を避けたのだ、特異型はすかさず自機の下部にマウントしてある陽電子砲を向けた、銃口の奥が淡く赤色に染まり始める。


「しまった」


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