After Data.18 弓おじさん、ユニゾンチェックⅡ
「さあ、チェックだチェックだ!」
ログアウト後、俺はすぐにPCで公式サイトへアクセスした。
我ながら、そんなに早く確認したいのならばゲーム内でやればいいじゃないかと思わないでもないが、一度確認を始めると時間を忘れてしまうからな。
リアルに戻ってからやった方が、いろいろと良いのだ。
「マイページにログイン……ステータス確認……ユニゾン……」
ユニゾンのページには確かに『ビッグフットキャノン』の名があった。
よかった……。調査から帰還したらUMAに関するすべてのデータが消えていたみたいなオチにならなくて。
そういうオチはちょっと胡散臭いオカルト番組だけで十分だ。
あの戦いも、その後の出来事も、すべて現実に起こったことなのだ。
「さあ、ベールに包まれた真実を解き明かす時だ……!」
俺は『ビッグフットキャノン』のステータスページを開いた!
◆ユニゾンステータス
名前:ビッグフットキャノン
属性:氷/機械
Lv:45/100
HP:100/100
MP:100/100
攻撃:135
防御:145
魔攻:175
魔防:145
速度:50
スキル:
【雪崩の守護者】【アイシクルウォーク】
【ブリザードブレス】【スノーウェーブ】
奥義:
【ムーンキャノン】【ダイヤモンドダストショット】
こ、こいつ……魔法攻撃型なのか……!?
毛むくじゃらでガッチリした体形から『防御』や『魔防』に優れているのは予想してた。
長距離砲撃を得意とすることから『速度』が低いこともまあわかる。
それなりに『攻撃』のステータスに優れているのも見た目通りだと思う。
だが、素のステータスで一番高いのが『魔攻』とは完全に予想外だった……!
お、落ち着け……。確かにそこは驚くところだが、全体を見るとそこまで突出して『魔攻』だけが高いわけではないな。
ガー坊は明らかに『攻撃』だけが高く、あとはせいぜい『速度』くらい。
その『速度』も進化前の魚時代は水中でしか発揮されず、地上では【オーシャンスフィア】の発動中くらいしか役に立たなかった。
振り返ってみると、とんでもなく尖りまくったユニゾンだなぁ……ガー坊。
そう考えると、『ビッグフットキャノン』はわかりやすいバランス型だ。
唯一『速度』だけをバッサリと切り捨て、それ以外のステータスにポイントを均等に振りつつ、特徴を出すために『魔攻』を気持ち高めにしている……いわば、重魔法戦士!
こういうステータスの振り方は、ゲームによっては器用貧乏になる。
NSOでもプレイヤーがこのステータスだとあまり強そうに見えない。
しかし、ユニゾンとなると事情が違う。
ユニゾンはいわばこの世界における生物の一種だ。
彼らにとってステータスは生まれ持ったものであり、自分の意思で変えることは出来ない。
ゆえにそのステータスを補って有り余る、またはそのステータスだからこそ活用できる独自のスキル奥義を覚える。
本来、地上で真の力を発揮できないガー坊が、それを補うための【オーシャンスフィア】を覚えていたように……な。
それにバランス型には1つ大きな利点がある。
装備を変更するだけで戦いごとに特化させる部分を変えられることだ。
俺の場合は『射程』に振りまくっているから、攻撃に特化しようと装備をいじっても最初から攻撃特化のプレイヤーの足元にも及ばないだろう。
もちろん、完全なる特化型にはバランス型だってかなうはずがない。
しかし、やりようによっては足元を通り越して腰くらいまでには及ぶ。
攻撃なら攻撃、防御なら防御で役割を果たせるくらいにはなるはずだ。
いうなれば、戦場に合わせてサポートメカを換装するロボットみたいなものだな。
デッカイ大砲を持たせて射撃に特化させてみたり、デッカイ剣を持たせて格闘に特化させてみたり、デッカイブースターを持たせて機動に特化してみたり……。
もちろんそれぞれの役割に合わせて根っこから設計された機体には及ばない。
でも、その場で装備を変えるだけである程度いろんな戦場に対応できるのは便利だ。
ビッグフットキャノンにも同じことが言える。
俺もガー坊も物理オンリーだから、素直に『魔攻』を伸ばす装備も良し。
逆に『攻撃』を伸ばして接近戦をするのも悪くない。
大砲を背負っているのに接近戦というのは意表を突けるし、その巨体や大きな足のインパクトを存分に生かせる。
『防御』または『魔防』を高めて壁になってもらうのもアリだな。
ガー坊は耐久面のステータスが低く、雷属性という明確すぎる弱点もある。
あえて攻撃を受けるという役割は、ビッグフットキャノンにしか果たせないかも。
うーん、ワクワクするなぁ。
自分の装備の修理もままならないというのに、ビッグフットキャノンにいろんな装備を作ってあげたくなってきたぞ。
でも、その前にまだスキルと奥義の確認が済んでいないじゃないか。
ここを把握しておかなければユニゾンに上手く命令を出してあげることは出来ない。
一度装備の妄想から離れて入念にチェックするとしよう。
【
自身および自身が発動する氷属性スキル奥義への火属性ダメージを50%減少させる。
また、特殊環境『灼熱』の効果を無効にする。
【アイシクルウォーク】
雪や氷の上を歩く際の悪影響を無効化し、速度を20%上昇させる。
【ブリザードブレス】
口から吹雪のような息を吐く。
【スノースタンプ】
雪をまとわせた足で地面を踏みつけ、その衝撃で周囲に雪の波を発生させる。
……気になるスキルがあるが後回しにしよう。
まず【アイシクルウォーク】は俺が手に入れた新装備『Aビッグフットブーツ』の武器スキルと同じものだ。
そもそもの『速度』が低いので数値の上昇は控えめになってしまうが、無いよりはマシだろう。
【ブリザードブレス】はスキル名そのまんまの効果だ。
屈強な手足や背中のキャノン砲どころか、口からも攻撃するのだからすごいモンスターだなぁ。
【スノースタンプ】はボスとして戦った壁画のビッグフットがやっていた攻撃と同じかな?
まあ、攻撃の形は似ていても性能まで一緒と考えるのは早計か。
ネクスの頑張りがなければ全滅していたかもしれないほどの雪の波をスキルで起こせるとは思えない。
さて、問題の【
『自身への火属性ダメージを50%減少させる』だけなら普通のスキルだ。
ビッグフットキャノンは氷属性を持っているし、弱点である火属性を実質的に弱点ではなくせるというのは素晴らしい。
しかし、『自身が発動する氷属性スキル奥義への火属性ダメージを50%減少させる』とはどういうことなのだろうか?
そのままの意味で受け取るなら、本来苦手属性である火属性の攻撃とぶつかった時、そのダメージを軽減し、属性相性抜きの純粋な力比べに持ち込む効果と考えられるが……。
「……あ、そういえば」
壁画のビッグフットとの戦いでは、ネクスの火属性奥義【大紅蓮鉄火弾】が氷属性の攻撃に相殺されていた。
それに火山で戦った壁画のフェニックスも本来火属性が苦手としている水属性攻撃をいとも簡単に防いでいた。
ならばやはり、この効果は氷属性の攻撃が本来苦手としている火属性の攻撃とぶつかった際、その相性をないものとしてダメージ計算を行うものと考えて良さそうだな。
相性がなくなれば後はスキルや奥義本来の性能が物を言う。
別にこの効果があるからと言って、火属性に有利になるわけではない。
あくまでも50%のダメージ軽減は、弱点を突かれて倍増しているダメージを元に戻す効果だということを覚えておこう。
ここまででも十分すぎるほど効果が盛りだくさんだが、【
それが『特殊環境『灼熱』の効果を無効にする』だ。
特殊環境『灼熱』とはなんなのか、俺は身をもって知っている……!
そう、あの火山の高いところがそれに該当すると見て間違いない。
装備すら勝手に燃やしてしまうほど暑いエリアが『灼熱』と呼ばれているんだ。
つまり、ビッグフットキャノンは特殊な装備なしであのエリアに足を踏み入れることが出来る!
これは正直ありがたい……!
ガー坊をあの火山や雪山の奥地に連れて行くには、俺が手に入れた『Vフェニックスアーマー』や『Aビッグフットブーツ』のような特殊な装備を持たせる必要があった。
しかし、ユニゾン用の特殊装備をどうしたら入手できるのかというのはまったく不明だ。
でも、ビッグフットキャノンならばこのまま火山に連れて行っても問題なく活動できる。
それに氷属性を持っているから、雪山の寒さも苦にならないどころか、恩恵を受けられる可能性もある。
あの双子山の攻略に関してはビッグフットキャノンに任せた方が良さそうだな。
なんといっても地元のモンスターだし。
そうと決まれば後は奥義を把握しよう。
奥義の仕様さえ把握しておけば、後は実践あるのみだ。
【ムーンキャノン】
満月のごとき光の砲弾を2発放つ。
クールタイム:5分
【ダイヤモンドダストショット】
細かく硬質な氷の粒を乱れ撃つ。
クールタイム:3分
超シンプル、ゆえに安定感がある奥義たちだ。
【ムーンキャノン】はやはり氷属性ではなく光属性の奥義だったか。
その威力に関してはすでに体験済みだが、敵として出てきた時と味方になった後では性能がまるっきり違うなんてことゲームではありがちなので要検証だな。
お次の【ダイヤモンドダストショット】はデカい砲弾で攻撃する【ムーンキャノン】とは違い、細かい氷の粒をばら撒いて飛んでくる攻撃を撃ち落とす、いわゆる弾幕を張る技だろう。
攻防それぞれ1種ずつの奥義というのもバランス型らしい配分だ。
すべてのステータスを確認し、ビッグフットキャノンというユニゾンについてまとめると……。
・灼熱や極寒の厳しい環境でも活動できる。
・バランスの取れたステータスによる優れたカスタマイズ性能。
・以上の要因からくる汎用性の高さが最大の魅力。
ふむ、ガー坊との差別化は十分すぎるほど出来ている。
これからはユニゾンを交換することでさらに有利に戦いを進めることが出来るだろう。
ただし、ビッグフットキャノンはガー坊に比べてレベルが低いし、俺との合体奥義も解放されていない。
やたら無理させて傷つけてばかりいては『絆ポイント』も溜まらないだろうし、無理はさせずに慎重にそのポテンシャルを引き出していこう。
何はともあれ、明日は装備の調達からだ。
そして、装備をある程度整えたら火山に向かう。
雪山で『Aビッグフットブーツ』をゲットしたから、火山のより暑い領域にも入っていける。
「やりたいことが多いって素晴らしいなぁ」
PCの電源を落とし、ビッグフットキャノンの名前を考えながら、俺はリアルの生活に戻った。
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