After Data.8 弓おじさん、炎に導かれて
◆Vフェニックスアーマー
種類:胴体<軽鎧> 攻撃:40 防御:50 魔防:50
武器スキル:【自動修復】【自動回復】
武器奥義:【不死鳥の双炎翼】
胴体装備なのに攻撃が上がるだと……!
炎のような真っ赤な見た目は伊達じゃないってことか!
その分、防御と魔防のステータスは控えめだが、すべての数値を合計すると140もある。
これは進化前の風雲装備よりも高いステータスだ……!
第2の主力装備候補にいきなり出会えたな俺は運が良い!
スキルも見ていこう!
【自動修復】
装備の損傷が自動的に修復される。
完全破壊された場合、この効果は発動しない。
【自動回復】
毎秒自動的にHPが少量回復する。
【自動修復】は『風流の蛇襟巻』の武器スキルと同じものだな。
装備が完全に破壊されない限り、細かい傷は勝手に直っていく。
でも、発火現象のように完全に装備が燃え尽き、破壊されると直らない。
このスキルを持っていても油断は禁物だ。
【自動回復】は要するに『HPリジェネ効果』だな。
じわじわとHPを回復してくれるので、長時間のフィールド探索に最適だ。
こちらも一発でHPをゼロにされると意味がないので過信しすぎないようにしよう。
さて、最後にネーミングが非常にカッコいい武器奥義を確認しよう。
【不死鳥の双炎翼】
この奥義は以下の2つの効果からどちらかを選択して発動する。
クールタイム:3分
●
背中から敵を焼き尽くす赤色の炎の翼を生やす。
持続時間は24秒間。
●
背中からHPを回復する緑色の炎の翼を生やす。
持続時間は24秒間。
な、なんだこの奥義は……!?
効果を2つ持っているぞ……!
どちらも背中から24秒間炎の翼を生やす効果だが、それぞれ『攻撃』と『回復』で用途が分かれているようだ。
でも、クールタイムは共有されている。
【
2つの効果を1つの奥義にまとめることで、『攻撃』と『回復』を同時に行えないようにしているんだ。
これはまた新しい制限のかけ方だな……。
NSOだけでなく、あらゆるゲームにおいて制限のキツイ効果ほど強力なのは常識だ。
この2つの翼も相当なポテンシャルを秘めていることだろう。
本当に良い物に出会た気がするな……!
何よりこの装備があれば火山のさらに上に進めるかもしれない。
なんてったって不死鳥の力を宿した鎧だ。
熱さに負けるはずがない!
そう、思っていたのだが……。
「うわぁ!? 普通に燃えたぁ!?」
火山のさらに上へと足を踏み入れた瞬間、速攻で発火した!
普通にHPも削られたぞ……!
なぜ不死鳥の力を装備しているのに燃えるんだ……!?
「いや、不死鳥だから燃えるのか!」
だって火の鳥だもの。
むしろ燃えやすいイメージすらある……!
そういえば、戦ったフェニックスも常に体が燃えていたなぁ……。
「とりあえず、この鎧を装備しても火山の頂への道は開かれないわけか……」
また手掛かりを失ってしまった。
俺の予想だと、ボスを倒す、上に行けるようになる、上でボスを倒す、さらに上に行けるようになる……という流れだったのだが、完全に当てが外れた。
もしかしたら、フェニックス以外にもボスがいて、そいつを倒せば……。
いや、俺のゲーマーとしての勘がここら辺にフェニックス以上のボスはいないと言っている。
そもそも、発火現象の起こらない範囲はあらかた探索したし、怪しい物もこのトンネル以外全然なかったからな。
こうなったら、もっと別の手段を探る必要があるのかもしれない。
いっそ新奥義で生やした炎の翼で空を進むか?
いや、最初と同じ過ちを繰り返すだけだな。
むしろ灼熱地獄に炎の翼で突っ込むなんて、最初の時より体がアチアチになりそうだ。
「ん……? 体が……アチアチに?」
この新装備『Vフェニックスアーマー』は燃えるような熱さを防いではくれない。
それはフェニックス自身がよく燃える存在だからだ。
しかし、凍えるような寒さは防いでくれるのではないか……?
常に燃えているフェニックスだからこそ……!
「まさか……そういうことなのか!?」
俺の頭に圧倒的ひらめき……!
紅蓮と白雪の双子山には、それぞれ熱さと寒さを防ぐ装備が眠っているのではないだろうか?
そう、火山には寒さを防ぐ装備、雪山には熱さを防ぐ装備が……!
プレイヤーは2つの山を行ったり来たりして、交互にその耐性装備を集めなければならない。
つまり、この双子山の攻略は同時に進める必要があるんだ!
確証はないが、ゲーマーとしての勘はそれが正解だと叫んでいる!
何よりこのギミックならば火山と雪山を並べて配置する意味が大いにある!
「行ってみよう……雪山へ!
俺の背中から炎の翼が生える!
空を飛ぶ姿をイメージするだけで、翼は思うように羽ばたいてくれる!
数ある飛行スキルや奥義の中でもずば抜けて制御しやすい気がするぞ!
さらに速度もかなり出る!
これは
語呂合わせというだけでなく、これを何分も使えたら俺は上空から長射程を生かして攻撃するだけでどんな敵でも倒せてしまう。
前衛職のプレイヤーが使っても自由自在な飛行能力と炎の翼による攻撃は魅力的なはずだし、強いぞこの奥義は!
「それでも、もうちょっと長く続いたらなぁって思う欲張りな俺だったり」
風にノッてきたというところで地上に降りる。
24秒の飛行でもまあまあの距離を飛び、雪山へと続く雪原の手前まで来た。
乾いた荒れ地と雪の積もった雪原があるラインでスッパリと別れている。
これもまたリアルではありえない地形だな。
「さて、フェニックスアーマーに寒さを防ぐ能力は……」
……ある!
武器スキルにも武器奥義にもなぜか効果が書かれていないが、確かに寒さが和らいでいる!
雪原の上を歩いているとは思えないほど快適な温度だ!
「いける……! 俺の予想は当たっているぞ……!」
ずんずんと雪原を進む。
時折、吹雪が吹いて視界が悪くなるが、巨大な山の姿が見えなくなることはないので、進むべき方向を見失うことはない。
ただ、両足装備が雪の上を歩くのに適したものではないので少し苦戦している。
もうすぐクールタイムが終了するし、また炎の翼で……。
「あ、誰かいる」
この雪原はまだ誰でも入れるフィールドなわけだから、他のプレイヤーがいてもおかしくはない。
でも、俺はあの人がどこからか歩いてくる姿を見ていない。
突然その場に現れたような……。
でも、ワープや透明化のスキル奥義を使えばそれも可能なことだな。
俺も俺の仲間もよくやっているじゃないか。
「追いつけたら挨拶しよう。こんなところで会うなんて何かの縁だ」
俺はまだまだずんずん歩く。
少しづつその人の姿が大きく見えるようになってきた。
なぜなら、その人はその場を動かず、俺を待ち構えるようにずっと立っているからだ。
全身を覆うもさもさした物……ギリースーツだっけ?
FPSやTPSなどでよく見るあの装備の赤いバージョンを身に着けているその人物は、雪原ではよく目立ち、俺も一度気になってからは目が離せない。
俺を待ち構えているファン……とは思えない。
本日何度目かのゲーマーとしての勘が、その人物を只者ではないと言っている……!
でも、ここは対人戦が許可された『ヴァーサスフィールド』ではないし、戦いになることはない。
ちょっと不気味だけど、もしかしたらボーッとしてるだけかもしれない。
気にせず横を通らせてもらおう。
「来たか……」
突然、くぐもった声が聞こえた。
声の主はもちろん……目の前の赤いもさもさだ。
俺はギョッとして立ち止まる。
赤いもさもさはおもむろに腰から2本の刀を抜き、構える。
そして……俺に向かって飛びかかってきた!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます