After Data.7 弓おじさん、灰の中から

「サンダー・ショットガンアロー!」


 水属性は効かないし、おそらく火属性も効かない。

 ならば雷属性主体で攻める!

 なんか鳥には雷が効きそうな気もするしな!


「ガー坊、電気の奔流エレキテル・リバー!」


「ガァー! ガァー!」


 俺とガー坊、そして5体の分身による雷の広範囲攻撃が空間を満たす!

 長射程の俺にとってもこの空間は狭いが、巨体のフェニックスにとってもかなり狭い!

 雷を避けきるスペースがない以上、相殺を狙わざるを得ない状況になる。

 しかし、四方八方から放たれる雷のすべてに対して反撃を行うのは不可能。


 ガー坊の分身の放った【電気の奔流エレキテル・リバー】のいくつかがフェニックスにヒット!

 分身は本物のガー坊よりステータスが下がっているので大ダメージは与えられないが、相手を一瞬しびれさせ、次の攻撃を当てる隙を作るには十分だ!


私は跳ねる矢アイムバウンドアロー!」


 緊急回避に使われがちな【アイムアロー】もこの装備の時は攻撃に使う!

 俺自身が矢となり、燃え盛るフェニックスに突っ込む!


 しかし、ここでフェニックスもボスとしての意地を見せた。

 雷によるしびれから速攻で抜け出し、器用に体を傾けて俺を回避したのだ。

 でも……残念ながら俺の方が一枚上手だ!


「今の俺は……跳ねる! 気分は悪くなりそうだけどぉ!」


 【アイムアロー】に融合した【バウンドアロー】は物体に当たって跳ねる矢を放つスキルだ。

 バウンドが止まるのは敵にヒットした時か、最大射程まで飛んだ時……。

 俺の射程は異常に長いし、最大射程に到達してバウンドが終わることはない。

 つまり、今の俺は敵に当たるまで空間の中を跳ね続ける矢というわけだ!


「早く当たってくれ~!」


 高速できりもみ回転している【アイムアロー】で跳ねまわり続けるのは三半規管がおかしくなる!

 目をつぶって耐えるんだ……!


 ギエエエエエエエ…………ッ!?


 うめくような鳥の鳴き声。

 硬い壁とは違う何かに当たった感触……。


「やった……! 終わった……!」


 奥義がクリーンヒットしたことより回転とバウンドが終わったことに喜んでしまった。

 ……気を取り直して、状況を確認しよう。


 フェニックスは俺の直撃をくらって吹っ飛び、壁に叩きつけられている。

 HPゲージはかなり削れているが、じわじわと回復している!

 流石は不死鳥……HPリジェネ効果くらいは標準搭載か。

 本当に速攻で畳みかけないとジリ貧になる……!


「ガー坊、ブルーオーシャンスフィアからの紅い死喰回転クリムゾンデスロール!」


 水を得たガー坊が高速でフェニックスに突っ込む!

 それに対してフェニックスも反撃の構えを取ろうとする。

 流石は高難易度フィールドのボスだ……。

 ガー坊単体での最強奥義にも反撃の手立てがあると見える。

 しかし……!


「雷鳴風神裂空!」


 雷をまとった超高速の矢がフェニックスの頭を貫いた。

 これでもHPは削り切れないが、フェニックスにとっても頭は弱点だ。

 そこに強い一撃を食らえば、ひるんでくれる……!


「いけっ、ガー坊! トドメだ!」


「ガァー! ガァー!」


 口を大きく開き高速回転するガー坊の歯は、ミキサーの底で回転する刃と同じだ!

 グロ描写はオフなので普通の突進と描写は変わらないが、とにかく威力は非常に高い!

 不死の名を冠する鳥もこの攻撃には耐えきれず、そのHPはゼロになった。


「ふぅー! なんとか合体奥義やミラクルエフェクトを使わずに倒せたな」


 この壁画の不死鳥はこの火山における1体目のボスだ。

 そして、ボスというのは後から出てくる方が強い。

 まだガー坊を引っ込めざるを得なくなる合体奥義と1日に撃てる回数が限られているミラクルエフェクトは使いたくなかった。

 俺はまだまだ上に行くつもりだからな……山の。


 さて、この洞窟はここで行き止まりなのだろうか?

 ボスを倒したというのに新たな道が開かれる様子がない。

 山の内部を通ることで気温の影響を受けずに上を目指せるのではないかと思っていたが、またあの熱い場所に逆戻りなのか……。


 ん? というかボスを倒したのにアイテムすら貰えてなくないか?

 登場演出も凝っていたし、ただ倒すだけのボスということはないと思うが……。


「ガァー! ガァー!」


 ガー坊が威嚇の鳴き声を上げる。

 その方向を見てみると、フェニックスが消えた場所に散らばっていた灰が燃え盛っている!

 まさか、まだ倒せていない……?

 倒せていないから、何も起こらないのか!?


「くっ! まさに不死鳥ってわけか……!」


 さっきの戦いを学習されていたら苦戦は必至……!

 さあ、どうする俺……。


「ガァー! ガ……」


 ガー坊が鳴き止んだ?

 敵が消えたということか?

 確かに燃え盛る灰にHPゲージは表示されていないし、『紅蓮壁画鳥ヴォルケーノフェニックス』というカッコいい名前も表示されていない。

 何だ……? 何が起こっているんだ?


「あ! 灰が一か所に集まって……塊になった!」


 燃え盛る黒い灰の塊が、徐々にその色と形を変えていく……。

 そして最後には、鮮やかな紅蓮の鎧になった!

 揺らめく炎と鳥の翼をモチーフにしたその鎧からは、まるでフェニックスの力をそのまま形にしたような印象を受ける。

 手で触れてみても熱くはなく、むしろ穏やかな温もりを感じる……。


「これがこの火山に眠るすごい物……! 胴体装備『Vフェニックスアーマー』!」


 Vは『ヴォルケーノ』のV!

 そして、ここに来るまでに描かれていた壁画を信じるのならば、装備を持つボスは後2体いる!

 でも、2体だとすべて倒しても合計3つの装備しか手に入らないし、セット装備にはならないな……。


 まあ、そこはすべて倒してから考えればいいか。

 とにかく今はこの装備のステータスをチェックしよう!

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