Data.197 弓おじさん、選択する
クラッシャーを狙う利点はハッキリしている。
この吸い付く空間を生み出しているのは彼だし、この空間の中を自由に動けるのも彼だけだ。
もし彼をキルしてもこの空間が解除されなかったとしても、自由に動ける者がいなくなるわけだから、全員で地面にへばりつきながら効果時間が切れるのを待てばいい。
問題は【
【流星弓】と違って矢の速度自体は大したことがないし、手練れならば見てから回避も余裕だろう。
確実に当てたいなら、仲間の助けが必要だ。
でも、この状況で相談なんて出来ない。
何か行動を起こせばすぐにバレる……!
では、バックラーを狙うのはどうか?
彼を倒したところでこの空間からは抜け脱せないが、今この瞬間が彼を倒す絶好のチャンスであることは確かだ。
なぜなら、彼は盾を満足に構えられない状態だからだ。
この空間内でも手足を動かすことは出来るが、バックラーの持っているような巨大な盾を持ち上げて正面に構えるのは難しい。
ネココの爪のように手と一体化している小型の武器なら何とかなるが、地面と接地している面積が大きい武器はそれだけ吸い付く力が強いのだ。
つまり、今は【パリィワープ】が使えない……!
俺の攻撃がスカされた挙句、接近される心配はない。
そもそも、パリィワープはすべての攻撃に対して成立するのだろうか?
普通の奥義ならまだしも、合体奥義やミラクルエフェクトまで対応できるならあまりにも強い気がする。
しかも、連発しようとしているあたり【パリィワープ】は奥義ではなくスキル……!
【ワープアロー】が奥義送りにされているのに【パリィワープ】はそのままというのは考えにくい。
おそらく、クールタイムがない代わりに他のデメリットがあるはず……。
だが、それを検証しているような時間はないか……!
「
狙うは……バックラーだ!
マンホールから飛び出してきたガー坊が変形し、1本の矢となる!
【
俺の体は勝手に動いて弓を構え、ためらうことなく矢を放った!
思った通り【
そのまま動くことが出来ないバックラーに直進する……!
それを見たクラッシャーは飛び出んばかりに目を見開く。
「い、いったいどこからユニゾンが……! くぅぅぅ、効果を解……」
「うろたえるなっ! 効果を維持するのだ!」
「こ、心得た!」
効果を解除し、盾を使わせようとしたクラッシャーの気遣いを跳ね除け、バックラーは宣言した。
「
バックラーの体が白銀のオーラに包まれる……!
だが、変化はそれだけで相変わらずバックラーは地面に伏せたままだ。
【
「……まあ、お前さんとの試合では使わざるを得んだろうと思っていた。前衛職、それもタンク職として史上最強のミラクルエフェクトを!」
バックラーは無傷だ!
装備すら傷ついてはいない……!
このミラクルエフェクトの効果はただ1つ、無敵になること!
「確かに最強の効果だな……」
古来より無敵化はあらゆるゲームで最強の効果だった。
中でもあの超有名2Dアクションゲームの無敵化では流れるBGMすら変わる。
容量が少なく、音楽1つ入れるのに苦労する時代のゲームから無敵化は特別だったんだ。
だが、無敵になればすべて解決するわけじゃないことも俺は知っている。
バックラーは無敵化しても吸い付く効果から逃れられていない!
「手早く頼むぞクラッシャー」
「はっ、早急に!」
無敵化は敵に触れても死ななくなるが、ステージギミックには普通に殺されてしまうこともある。
特に落下死からは逃れられないため、足場が不安定なステージでは無駄になることもしばしば……。
バックラーの【
その1つが味方のミラクルエフェクトだったというのは皮肉だな……なんて、余裕ぶっこいてる状況じゃないぞ!
ものの見事にバックラーに踊らされ、ガー坊を失ってしまった……!
そして今、クラッシャーの手によってサトミも撃破されようとしている……!
彼が消えればユニゾンも消えるので、真っ先に狙われているのだ。
「鎮魂粉砕!」
クラッシャーのメイスがサトミに振り下ろされる……!
「いけいけ、
「ぐおおぉぉっ!?」
アンヌから放たれた鉄球がクラッシャーに衝突し、派手にぶっ飛ばした!
「やった! 大当たり! 吸い付く効果は元から地面に接地しているスキルへの影響が薄いんですよ!」
なるほど……!
俺やネココの飛び道具は空を飛ぶので、地面に叩きつけられた瞬間消滅してしまう。
しかし、【
それを超速で撃ちだせば、多少地面に吸い付けられてもしばらくの間は勢いを維持できるというわけだ!
「どんどん当ててあげます!」
不意打ちに対してクラッシャーは対応が遅れ、2発目の鉄球もモロに受けて吹っ飛んだ。
その瞬間、地面に吸い付けられる効果が消滅した。
「し、しまった……! ここは空間の外か……!」
どうやら、効果を維持するにはクラッシャー自身があの空間の中にいる必要があったらしい。
これでやっと自由に動ける!
「やはり小細工だけでは倒せんか、弓使い!」
そうだ……!
俺が自由になったということは、無敵状態のバックラーも自由になったということ……。
「ふっ、これはもう……」
逃げるしかないな!
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