Data.196 弓おじさん、勝負の分かれ目
「それはどうかしら」
ネココがバックラーとの会話に割って入る。
「確かにあなたはおじさんをお城から引き離して、ワープアローも使わせた。でも、それで満足して良いのかしら? その間に失ってしまったものもあるわ」
「ふんっ、それはいったいどういう意味で……」
バックラーが言葉に詰まる。
いや、詰まったというより遮られたんだ。
今まさに頭の中に響いている……味方がキルされたことを告げるアナウンスに……!
「ありがとう、おじさん。おかげさまでまずは1人倒せたわ」
ネココは寸前まで追い詰めていたスラッシャーを倒しきっていた!
これでプレイヤーの数は4対3!
戦況が……傾き始めた!
「このまま畳みかけるわよ! サトミくん!」
「ええ、頃合いです!」
今、この場所には敵味方のほとんどが集まっている!
ネココはスラッシャーを撃破して駆けつけ、サトミはスイーパーを追ってきた。
アンヌは元から教会付近でクラッシャーと戦っていたし、俺はバックラーから逃げてきた。
まさに大集合……!
それでいて、敵は俺たちよりメンバーが1人少ない。
ここが勝負の分かれ目だ!
「
ミラクルエフェクトの効果によりサトミが新たに2体のユニゾンを召喚する。
猿のゴチュウ、豚のブゥフィ、河童のカパパルトの3体はそれぞれ火、風、水の3属性の攻撃を得意としている。
そして、彼らのスキル奥義はステータスの『魔攻』と『魔防』によってダメージ計算を行う『魔法攻撃』が多い。
バックラーは物理と魔法のどちらに対しても堅牢だが、どちらかと言えば物理寄りで、これまでの試合でも魔法攻撃の方が良く効いていた。
俺は物理、ネココも物理、アンヌはもちろん物理!
そんな中で魔法担当のサトミたちの存在は非常に大きい。
あとNSOは回復をアイテムに頼るのが一般的なゲームとはいえ、回復担当も一応サトミだ。
このパーティはかなりサトミに依存している。
わかったうえで、今回も頼りにしてるぞ……!
「そうは問屋が卸さない……僧だけに!
相手プレイヤーの1人、僧侶のクラッシャーがそう宣言すると、突然体が重くなった!
そのままバランスを崩し、教会の屋根から地面に落下する……!
「ぐっ……! これは……!」
今までの試合では使われていない技だ……!
俺の予想だとミラクルエフェクトだと思うが確証はない。
しかし、仲間全員を一瞬にして地面に叩きつけられれば、それだけ特別な技だと思いたくもなる!
この効果はクラッシャーの周囲数メートルの範囲にいるプレイヤーに対して平等に作用しているようだ……!
それこそ、味方に対しても……。
「ちょちょちょ、ハゲ! 私まで巻き込んでるんだけど!」
「逃げ遅れるおぬしが悪い。事前に説明はしておいたぞ」
「ぐぬぬ……! 私のミラクルエフェクトの効果はまだ終わってないのにこれじゃあ台無しよ!」
「フッフッフッ! まあ、そこでおとなしく見ておれ!」
やはりスイーパーの【ガンシップ・ブルーム】はミラクルエフェクトだったか。
系統としてはペッタさんの合体奥義【天使降臨:
飛行能力はおまけで、本命はその飛行能力が発動している間だけ使うことが出来る技……。
スイーパーの場合は極太のビーム砲がそれだろう。
彼女の口ぶりからしてまだあのビームを何回かは放てるのだろうが、現状は銃口が明後日の方向に向いていて、こちらを狙えそうにもない。
そして、バックラーもまたこの高重力の空間に囚われている。
そもそも重い彼にさらに重くすれば、ほとんど動けなくなってしまう。
しかし、それで不都合はない。
こんな状態では動けなくなったバックラーすら倒せそうもない……!
何よりまずいのは、この効果を発動したクラッシャー自身が効果の影響を受けていないことだ!
このままじゃ1人1人倒されるのを待つだけ……。
なんとかしなければ!
「舞風!」
重力を強くする効果なら、そもそもの重量を軽くしてしまえば動け……ない!?
這ってじりじり動くことは出来ても、立ち上がれない……!
「残念ながら弓使い殿、これは空間内に高い重力を生み出す効果ではないのだ」
なにっ……!?
いや、でも冷静に考えればそうだ。
俺は教会の屋根、それも十字架の上にいたのだから、そのまま高重力に襲われれば真下に引き付けられ、十字架に刺さるなんていうパターンもあったはず……。
しかし、実際は俺の意志に関係なく屋根を転がり落ち、地面に激突した。
まるで地面に吸い付けられるように……。
そうか……!
これは対象を地面に強く吸い付ける効果なのか……!
だとしたらマズイ……!
放った矢もすべて地面に吸い付けられてしまう!
「ご理解が早いですな。やはり、貴殿は危険だ。真っ先に往生してほしい……。しかし、あの天にも昇る大技のせいで近寄るのが怖い怖い……! 後回しにさせていただく!」
クラッシャーはサトミの方へと向かった!
くっ、何か手はないのか……?
相手の言ってることをそのまま信じるのもアレだし、試しに矢を撃ってみるか……?
いや、ネココがいま放った【
実体のない雷ですらあれなのに、実体のある矢がこの効果から逃れられるとは思えない……!
「ガァ……。ガァ……」
「っ!? ガー坊?」
どこからともなくガー坊の鳴き声が聞こえてくる。
かなり小さい。だが、遠いというわけではない。
声が何かに遮られているような……。
「あ……!」
マンホールだ……!
地面に描かれた円形のイラストはただの装飾だと思っていたが、これはマンホールなんだ!
そこからガー坊の声が聞こえてくる!
このフィールドはジャンボアスレチックパークよりも狭いと思っていたが、その理由は地下にも移動可能なエリアがあったからだったのか……!
地面に耳をつけるとかすかに水の音が聞こえるあたり、そこはおそらく下水道エリア!
ガー坊は最初から地下スタートだったか、なにか理由があって地下に入った。
そして、ユニゾンは孤立した場合、一番近い味方プレイヤーの元へと移動する。
全員がここに集結しているわけだから、ガー坊がここに来るのは必然だったというわけだ。
さて、こうなると選択肢は一気に増える。
ガー坊との合体奥義【
おそらく、この空間の中でも直進してくれるはず……。
問題はそれで誰を狙うかということだ。
この吸い付く空間を生み出しているクラッシャーか……。
最も厄介かつ苦手で、今は動けないバックラーか……。
ここが本当の勝負の分かれ目だ!
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