Data.190 弓おじさん、幽霊の絆
ハタケさんの体が黄金……いや、もっと濃いオレンジのオーラに包まれる!
あれは陣取りの時にかけてもらった【
すべての能力を上昇させる代わりに、効果時間はかなり短かった覚えがある。
それにあの奥義は1日1回しか使えない……!
どこまで能力が上がるのかは把握してないが、合体奥義以上にクールタイムが重いということは……そういうことだろうな。
敵パーティはハタケさん1人になったとはいえ、油断は禁物だ。
彼は……奇跡を引き寄せる人なんだから。
とはいえ、こちらに数的優位があることは事実。
無理に奇策を考える必要はない。
数の力で押し込めばいい!
「
【クリアアロー】には矢の威力を下げてしまうデメリットがあるが【ビッグアロー】は奥義だ。
多少威力が下がっても反射スキルで跳ね返すのは難しい。
いや、そもそも見えないから反射のタイミングを合わせることすら困難だ。
これを1発当てたところでハタケさんを倒すには至らないかもしれないが、攻撃を食らったことで生まれる隙をネココとアンヌが見逃すはずはない。
彼女たちの追撃で試合終了だ!
しかし、ハタケさんは迫る見えざる矢に対して、驚くべき行動をとった。
発射と同時に現在地から素早く移動し、アンヌに対して接近戦を仕掛けたのだ!
「そんな……!」
ハタケさんが俺の矢の発射タイミングを知ることはできないはず……!
なぜなら、俺は遥か遠くにいるのだ。
これがお互いの姿が見える距離感ならバレバレだっただろう。
しかし、今回はそれこそ【狙撃の眼力】などの視力強化スキルがないととても……。
「あっ! 視力……強化だ!」
【
確かに『全』と言っているのだから、普通のスキルでも強化可能な視力を強化することが出来ない方がおかしい!
そして何より、ハタケさんはこの状況でも俺の動きを見張っている……!
視野が広いということは、それだけ冷静だということだ……!
今、【
それに対してハタケさんは一瞬ビクッと反応した。
……あれ? 明らかに驚いたよな……?
まさか、回避行動に見えたあれはただアンヌに攻撃を仕掛けたかっただけなのか……?
「くっ……落ち着け! ハタケさんは1人だ。まず近場にいたアンヌを撃破しようと動くのは普通じゃないか……!」
彼のペースに飲まれてはいけない。
とりあえず3分耐えれば【
そうなれば……確実に勝てる!
今は無理にキルを狙わず、動きを制限して時間を稼ぐんだ……!
弓を構え、ハタケさんを見据える……。
だが、矢は撃てなかった。
「なるほど、接近戦をすることで誤射を誘っているんだな……」
ハタケさんは上昇した速度を利用してアンヌの懐に潜り込み、旗を使った格闘戦を繰り広げている。
あの距離で星球は使い物にならない。
防戦一方のアンヌに対して激しく位置を入れ替えながら攻撃を加えるハタケさん。
援護したいのはやまやまだが、この距離ではあの速度には対応できない……!
長射程の弱点の1つが発射から着弾までのラグだ。
現在の距離500メートル前後だと、撃ってから実際狙った場所に矢が飛んでいくまで数秒かかる。
今までは味方と敵の距離が一定以上開いていたので、特に誤射を気にすることなく射撃を行えた。
アンヌはハンマーを振り回して敵を遠ざけてるし、ネココに至っては穴の中に引きずり込んで援護する必要がない状態にしてくれた。
実際、ハタケさん、ペッタさん、シンバの3人を気にしながら援護するのは難しかったし、その気遣いには本当に感謝している。
だが、今はアンヌとハタケさんの位置が近すぎる。
それに動きが速くて、数秒後どの位置にハタケさんがいるのかまったく予測できない。
手の出しようがない……!
でも、アンヌのHPはそろそろ限界だ……!
「こうなったらシスターらしく自己犠牲といきましょうか!」
アンヌが攻撃を仕掛けてきたハタケさんに抱き着いた!
「ネココちゃん! 私ごと……!」
「雷神絶空!」
一瞬ネココの姿が消え、次の瞬間別の位置に出現する。
見えないほどのスピードで敵を切り裂く【雷神絶空】……!
俺の【風神裂空】の近接版のような奥義は、確かにハタケさんの首を捉えた……はずだった。
「うぅ……まさかパワー負けしてるなんて……!」
アンヌは振りほどかれ、一瞬で位置を入れ替えられていた!
『
ハタケさんの代わりに首を斬られたアンヌはHPがゼロになり脱落する。
「とにかく時間切れを狙ってください! この状態の彼にダメージを与えるのは難しいです……!」
アンヌは最後まで戦いのことを考えながら消滅した。
彼女の言う通り、今のハタケさんにダメージを与えるのは難しい……。
これだけ上がった速度を捉えるのも難しいが、捉えたところで防御もかなり上昇していると考えられるからだ。
ネココはアンヌの言葉通り自分の速さを生かしてハタケさんをかく乱する。
流石に速さを極めているネココには容易に追いつけないが、ネココの方もまたハタケさんを振り払えていない……!
時折動きを読まれて追いつかれ、戦闘が発生する。
こうなると、火力があるハタケさんに分がある……!
まずい……間に合え! 俺の思い付き……!
「ネココ、助けに来たぞ!」
「えっ!?」
思わずハタケさんが振り返る。
そこには……ジョギングする『俺』がいた!
走り方が完全に中年だが、それがまた『俺』っぽくてナイス!
ここまでまったく出番がなかったグロウカード〈鏡写しのミラアリス〉の持つデコイ召喚スキルの存在を知らなければ、数秒間は思考が停止する。
それに加えて【レターアロー】で音声まで送り込めば、俺がのこのこ接近してきたと思ってもおかしくはない……!
もちろんネココの方もギョッとしている。
しかし、彼女はプレイヤーで唯一〈鏡写しのミラアリス〉の効果を知っている……!
なぜなら、このカードは彼女との冒険で手に入れたものであり、彼女の目の前で効果を検証した。
さらにこのカード入手後、俺は初めて『
覚えていてくれ……ネココ!
「
ネココの奥義が動きの止まったハタケさんに直撃する。
青い稲妻が……その体を貫いた!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます