Data.159 弓おじさん、塔の上のスライム
「あれがウワサのマッドスライムですか。キュージィさんも厄介な人物に目をつけられたものですね」
サトミがやれやれといった表情で言う。
「一応ネココもサトミも関わりがあると言えばあるんだけどね……」
「その通り! 私はあのバトロワで4位にランクインした豪傑! キル数も13とまあまあ! つまり、本来ならば私が
もはや頭に浮かんだ言葉をそのまま口から出してるな、あの人。
あのバトロワの時点でマッドスライム所属だったじゃないか。
「ひぃ~! まさか
「アンヌも乗っからなくていいから……」
「おーっと! よ~く見てみれば貴女はゴーストフロートで
「うふふ、そうだと言ったら……どうします?」
「くぅぅぅ……! いやっ! むしろ、まとめてリベンジ出来て好都合!
「いやぁ、出来れば当たりたくなかったっすけどねぇ」
「こんな早いタイミングで全滅したら本選なんて夢のまた夢よ」
「やっぱりこんな目立つところ占領すべきじゃなかったんだ……」
スライムマンの仲間たちはローテンションだな……。
「くっ……! 仕方ないでしょう! 狙ってみたら案外奪い取れてしまったんですから! 取れたのに逃げるのも情けないでしょう! 有利なポジションを捨てるという意図的な敗退行為はゲーマーの恥ですから!」
軽快なやりとりで時間が潰されていく……。
はっ! まさかそれが作戦か!?
彼らは有利なポジションを確保しているわけだから、どれだけ時間が過ぎても問題ない。
逆に俺たちは塔の下という人がいくらでも集まって戦闘が起こりやすい場所にいる。
今現在、不利なのは間違いなく俺たちだ……!
「みんな、早めに彼らを塔から排除しよう。他のパーティもいずれここに来る」
まあ、高いところにいる敵の排除は俺の役目なんだけど。
塔は壊したくないし、やたら強い奥義をぶっ放せばいいというわけでもない。
どういう作戦でいこうか……。
「あなたたちの考えていることはわかっていますよ! なんとか私たちを排除して塔に立てこもるつもりでしょう?」
名推理のように語っているが、ここに来る時点でそれ以外のことを想定しているプレイヤーがいるとは思えないんだよなぁ……と、心の中でツッコんでいる間にもスライムマンの話は続く。
「ノンノンノン! それは不可能なのです! 私たちの新たな合体奥義によって、その
塔の屋上から濃い緑色の粘液が噴き出す。
粘液は零れ落ちることなく塔の周囲に留まり、スライムマンたちを中心とした球体を作り出した。
「これが私のユニゾン『モススライム』のコケポヨとの合体奥義【
「なっ、なに……!?」
こちらから向こうの姿が見えなかったり攻撃が通らないというのはわかるが、中のスライムマンからも外に対して攻撃が出来ないとはどういうことだ……?
時間を稼げば順位が上がるバトロワ以外ではどうやって活用すればいいんだ……?
お、落ちつけ……!
すべてのスキル奥義には効果時間がある。
どんなに硬いバリアだろうと、時間が経てば消えるはずだ!
「ちなみに! 無駄に効果時間も長いのであしからず! 待っている間に他のパーティがやって来ますよ!」
……スライムマン、最強ではなくとも厄介な男だ。
彼の言う通り、ここで足止めを食らえば後続に攻撃を仕掛けられるのは目に見えている。
なんとか結界を破るしかない……!
「キュージィさん、スライムマンは『そちらからの攻撃は容易に通らず』と言いました。つまり、頑張れば通るということです。奥義を一斉発動しましょう」
「わかった!」
4人で火力の出る奥義を結界に放つ!
「
「
「
「
ぴったりと息の合った攻撃。
バリアにヒットするタイミングもほぼ同時。
なのに……バリアを破壊することは出来なかった!
それどころか、傷一つ付いていない……。
バリアはただぷるんぷるんと揺れるだけだ……!
「フハハハハ! その努力を無駄とは言いませんがね! なんとも効果が薄いのはご自身でよくおわかりでしょう!?」
スライムマンの高笑いが聞こえてくる。
遠慮のない見事な高笑いだ。
今の方法ではバリアを破られないという自信があるからこそ出来るのだろう。
つまり、通常奥義の連発などやるだけ無駄ということだ。
「目には目を、歯には歯を、合体奥義には……合体奥義だ」
ユニゾンを連れているのは俺とサトミだが、サトミの戦闘スタイルはユニゾンへの依存度が高い。
ここは俺とガー坊で突破する。
こちらも新たな合体奥義を使って……な!
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