Data.40 弓おじさん、ユニゾンチェック

 さて、レイヴンガーについてまず知りたいことは……地上に出られるのかってことだ。

 ユニゾンは某有名モンスターゲームのようにプレイヤーの意思で出したり引っ込めたりできる。

 今は引っ込んでもらっているが、これを地上に出したら……。


「いけっ! レイヴンガー!」


 光の粒子が集まり、レイヴンガーを形作る。

 うん、地上でもいけるんだな。

 魚系モンスターを地上に出す時の王道表現、空中に浮く……!

 このゲームも例外ではなかった。


 しかし、動きは水中よりかなり鈍くなっているな。

 某有名ロボット大戦ゲームのようにモンスターにも『地形適応』があるようだ。

 レイヴンガーは魚だから水中適応は『S』あるだろうな。

 逆に地上または空中の適応は『B』くらいだな、これは。


「まあ、地上に出てくれるだけ安心したな……」


 ノリで仲間にして海の中しか戦えませんでは困る。

 海マップっていろんなゲームに登場するが、決してメインにはならないからな。

 それこそ、海を題材にしたゲームでもない限り。


「次はステータスを見るか」


 ステータスウィンドウのページをユニゾンのものに切り替える。


 ◆ユニゾンステータス

 名前:レイヴンガー

 種族:魚/機械

 Lv:30/100

 HP:120/120

 MP:80/80

 攻撃:160

 防御:90

 魔攻:55

 魔防:65

 速度:130


 プレイヤーとの大きな違いは『種族』の存在だな。

 レイヴンガーは魚族と機械族を併せ持つ。

 これは装備やスキルの習得に影響を与えるらしい。


 ユニゾンの装備は基本的に専用の物が用意され、プレイヤーと共有できる物は少ない。

 装備枠は5つで、『頭部』とか『両手』とか部位ごとに分かれていない。

 モンスターによってはそもそも体の部位と呼べるものがないだろうし当然の仕様か。

 スライムとか『腕どこ?』『足どこ?』ってなるだろうからな。


 次に注目すべきは、固有ステータスがないことだ。

 戦士は『気合』、魔法家は『奇跡』、射手は『射程』。

 今の俺を俺にしているのはこの固有ステータス『射程』のおかげだ。


 それがユニゾンにはない。

 まあ、職業以上にたくさん存在するユニゾンモンスターにそれぞれ専用のステータスはめんどくさいというか差別化が図れないか。

 その代わり『固有スキル』や『固有奥義』を覚えるらしいから、後でチェックしよう。


 レベルは100までで、レベルアップごとに強化ポイントは『10』獲得できる。

 いまレイヴンガーは30レベルだから、強化ポイントは『300』振ってある状態だ。


 ちなみにユニゾンの強化ポイントは、あらかじめ決められた箇所に勝手に振られる。

 同じモンスターは最終的にどれも同じステータスになる。

 性格による違いとか個体差は存在しない。

 自分だけの個性は装備とスキルで表現するしかない。


 俺はこの仕様……歓迎だ。

 同じモンスターでも個体によって強弱があると、厳選が始まってしまうからな。

 画面越しのモンスター相手に作業的に繰り返す従来のゲームならまだしも、モンスターと同じ世界にいる感覚が強いVRゲームには合わないと思う。


 それはそれとして、ステータスの数値が単純に高くないか?

 HPとMPの合計が200ある。俺は150しかない。

 攻撃、防御、魔攻、魔防、速度の合計は500。

 ここから強化ポイントの300を引いても、素で200ある。

 第2職『弓使い』の合計は100だ。


 どうやらレイヴンガーというモンスター自体が高ステータスのようだ。

 素のステータスは現時点の俺を上回っている。

 ユニゾンはプレイヤーの上位互換……というワケではない。


 ユニゾンモンスターは100レベルまで強化ポイントが一律『10』だ。

 第2職の時点ではプレイヤーも『10』だが、こちらには第3職がある。

 おそらく獲得できる強化ポイントも増えるだろう。


 それに装備枠はプレイヤーの方が多い。

 プレイヤーは『装飾』を含めると10枠もあるが、ユニゾンはその半分の5枠だ。

 NSOの装備は数値が高いのでこの差は大きい。


 あと、モンスターはAI制御なので動きがぎこちないかもしれない。

 これはやってみないとわからないけど。


「最後にスキルを確認したら、後は実戦の中で学ぶとしよう」


 ◆スキル

 【ストレイトダーツ】

 勢いのままに敵に突進する。


 【毒耐性Ⅴ】

 50%の確率で『毒』状態を無効にする。

 『毒』状態による継続ダメージを50%減少させる。


 【マシンボディ】

 物理攻撃によるダメージを10%減少させる。


 ◆奥義

 【赤い流星】

 流星のごとく超高速の突進を連続で繰り返す。

 クールタイム:10分


 【オーシャンスフィア】

 自身を中心とした球体状の海を生み出す。持続時間は3分。

 クールタイム:10分


「わかりやすいスキルとそうでないスキルの差が激しいな」


 【ストレイトダーツ】はわかる。ただの突進だ。

 【赤い流星】もわかる。すごい突進の連続だ。

 【マシンボディ】もわかりやすいな。物理攻撃に強くなる。


 【毒耐性Ⅴ】はレイヴンガーが『毒』状態になる攻撃を受けた際に、50%の確率で『毒』を無効化してくれる。

 だから、運が悪いと普通に『毒』になる。

 その場合でも『毒』による継続ダメージを半分にする保険のような効果がくっついている。


 【オーシャンスフィア】は……いまいちピンとこない。

 実際にやってみるしかないな。


「レイヴンガー、オーシャンスフィアだ!」


 ガーの周りにどこからともなく水が湧きだしてくる。

 そして、水はガーを中に閉じ込めるカプセルのように綺麗な球体になった。

 半径は2メートルほど。触ってみると確かに海水だ。


 しかし、これが【赤い流星】と同じクールタイム10分の奥義なのか?

 別に海水に攻撃判定もないし、通常の海と同じく中に入っても呼吸は出来る。

 火属性攻撃に対する盾にはなりそうだが……。


「ガー! ガー!」


 急に鳴いたかと思うと、ガーはスイスイと空中を泳ぎ始めた。

 しかも、海水のカプセルはガーを中心にしたまま一緒に動く。


「なるほどな。このスキルは3分間だけ地上でも海中と同じ動きが出来るようにしてくれるんだ」


 それならクールタイム10分も納得だ。

 この奥義が発動している間のレイヴンガーは、まさに水を得た魚。

 物理に対してはそこそこ耐久もあるし動きも速い。

 敵に接近戦をしかけても簡単にはやられないだろう。


 しかし、通常時のガーに地上で接近戦をさせるのは無謀だ。

 動きがゆったりしているから、いい的になってしまう。

 でも、スキルは全部接近戦を考えた構成なんだよなぁ……。


 装備や後から覚えるスキルで、敵から離れていても出来る役割を持たせてあげたい。

 何はともあれ、まずは実際に戦うところを見た方が良いな。

 そうすれば必要なものが見えてくるはずだ。


「竜宮の海底神殿に行こう」


「ガー! ガー!」


 マップを描いてもらうために必要なもう一つの石『竜宮石』はそこにある。

 このダンジョンを踏破すれば、今度こそ南の海の冒険に区切りがつく……!

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