Data.6 弓おじさん、調べる
モンスターに追い回されたが、なんとか街に帰還しログアウト。
俺の意識は現実世界へと帰還した。
食事とか睡眠とかトイレとかを済ませると、またすぐに遊びたくなってきた。
だが少し我慢。
情報端末を操作してネットサーフィンだ。
調べるのはもちろん『Next Stage Online』のこと。
別にwikiを見てその通りに進めたくなったということではない。
みんながどんな感じで遊んでるのかを知りたいなぁと思っただけだ。
自分で攻略方法を考えるのももちろん楽しいが、友達とどこまで進めたか、どうやって進めてるのかを語り合うのもゲームの醍醐味だと思う。
しかし、今のご時世なかなかリアルでゲームの話をするのは難しい。
ゲーム数は膨大だし、ゲーマー仲間でも同じゲームをやっているとは限らないのだ。
そういう時に頼りになるのはやはりネットだ。
ネットならば同じゲームを遊んでいる人だけが集まるコミュニティなどいくらでもある。
ただ、いきなり掲示板を見るのは怖いな。
勝手なイメージだが、オンラインゲームの掲示板というのはよく荒れている気がする。
運営への不満ならまだいいが、プレイヤー同士でプレイスタイルの押し付け合いや、煽り合いが繰り広げられているのを見ると萎えてしまう。
ここは攻略サイトでも見てみるか。
『Next Stage Online 攻略』で検索すると、いくつかのサイトがヒットした。
一番上に表示されてるのから見てみよう。
「……あまり情報がない」
どのサイトも同じだった。
そりゃそうか、発売一ヶ月も経ってないオンラインゲームのwikiが充実してるわけもない。
だがしかし、わかったこともある。
まず、『射手』は本当に不人気のようだ。
充実してないサイトの中でも特に情報がない。
スキル関係はもちろん、武器関係もほぼ真っ白。
やたらブーメランのページだけは充実してたが、これは熱狂的な愛好者がいるのだろうか?
それとも他の射撃武器よりは気持ち攻撃力が高めだから人気なのか?
この疑問の答えこそが、ステータス配分以外で『射手』が嫌われる理由につながっている。
『弓』『銃』『手裏剣』などは、そもそも敵に当てにくいという評価のようだ。
その点『ブーメラン』は手に持って剣のように振り回せるから、投げて当たらなくても最悪接近戦で戦える。
だから他より人気なのだ……と思ったが、それなら戦士で剣を振った方が良い。
やはり、攻略サイトを更新する手間も惜しまない熱狂的なファンがいるんだろう。
世の中は広いな。
それにしても、俺は弓を当てにくいなんて思ったことはないけどなぁ。
サイトのコメントを見る感じ、弓も銃も射撃に関して補正などはかからず、素の腕前が求められるなんて書いてあるが本当か?
俺は弓道なんて習ったことないが、ストンストン当てられたんだが……。
個人差なのか、不具合なのか。
結構怒ってるコメントもあるなぁ。
ここに『俺は簡単に当てられますよ』なんてコメントしたら、事実であっても煽りにしかならない。
何もせず、そっとブラウザバックした。
さて、もう一つ面白い情報を得た。
それはスキルの獲得に関することだ。
俺は戦士時代に【空波斬】というスキルを『戦闘中に本気で素振りすること』で手に入れた。
だが、サイトに書かれている情報によると『武器を振った風圧でダメージを与えること』でも手に入るらしい。
つまり、同じスキルでも獲得方法は複数あるということだ。
このゲームはスキルに関してあえて謎を多く作ってある。
いろんなことを試して、探していくしかない。
いつか自分しか持っていないスキルを獲得することだって夢じゃないかもな。
オンリーワン……最高の響きだ。
テンションが上がったところでNext Stage Onlineの世界ネクスタリアへ戻ろうか。
今回のまとめとしては、『人に聞く前に、自分で考えた方が早い』……かな。
まだ情報が出そろってない。
自分で情報を集めてトップを走るくらいの気持ちでいこう。
本当に気持ちだけだ。
おじさんにはオンラインゲームでトップになる気持ちはあっても体力はないからね。
◆ ◆ ◆
さあ、冒険の再開だ。
その前にウィンドウを開いてやることがある。
「お、本当だ。一定レベル到達でスキルが獲得できるんだな」
ステータスウィンドウのちょっと目立たないところに書かれているもんだから、攻略サイトを見るまで気づかなかったぞ。
こればっかりはサイトを見といて良かったと思う。
さて、今回は初期職の5レベル到達特典だ。
手に入るスキルは選べない。
ゲーム側がこれまでのプレイスタイルから導き出した最適なスキルを与えてくれるらしい。
俺の場合は、とりあえず弓矢に関するスキルだろうな。
――ぴこんっ! 新たなスキル【バウンドアロー】を獲得しました。
◆獲得理由
『初期職Lv5到達特典』
初期職のレベルを5まで上げた。
【バウンドアロー】
物に当たって跳ね返る矢。プレイヤーやモンスターに当たるか、最大射程に到達するまで跳ねる。
トリッキーなスキルだ。扱いは難しいだろう。
だが、一つの場所から動かないスナイパースタイルを目指す俺には、最高のスキルだと思う。
角度的に当てられない場所にもバウンドを使いこなせば当てられるはずだ。
さらにバウンドすることで矢が本来飛んできた方向、つまり俺の位置を誤魔化せる。
「これは人のいないフィールドで練習したいな」
街の公園で見せびらかすには惜しいスキルだ。
こっそりスキルの練習をしつつ、レベルを10まで上げよう。
もうすぐ初心者向けのイベントもある。
しかも、ガッツリ対戦系だ。
ちょっと尻込みしている自分もいるが、参加するからには優勝を目指すぞ!
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