馬鹿な病

もざどみれーる

馬鹿な病

 絶望が湧いた。我が子が死んだのである。

 あの日、臨終を知らせてきた医師の沈黙はとても痛かった。矛先不明の憎悪をかかえながら、私は妻と共に家路についた。帰り際に見た病院の白壁が、余りにも眩しかった。

 病というのは、ここまで人を馬鹿にするものかと思う。僅か三歳の子の尊い命を、心臓の病がほんの一月ひとつきで奪ってしまったのだ。そうして病の方では何の申し開きもなくだんまり・・・・を決め込んで、遂には遺体とともに、そのまま灰になってしまった。


 告別式を滞りなく済ませてつい先ほど玄関をくぐると、一足先に帰宅していた妻は既に絶命していた。はりにぐるりとロープを巻き付けて、自ら首をくくったものらしい。……だらしなく伸びた屍体したいの腕や脚が、無言のままで私の怒りを静かにあおるような心持ちがする。

 病とは何か。死とは何か。

 馬鹿者である。口下手に過ぎる大馬鹿者である。

 そんな事を思いながら、私は自分の手首にスッと包丁の刃を引いた。

 紅いせいの証がほとばしった。

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馬鹿な病 もざどみれーる @moz_admirer

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