第25話 ディナイウイークス、帰還
「ただいま戻ったってな」
「隊長!戻りました」
「…………」
スナァ、アーズ、カリタスの三人はトルテラシティから東に三時間程進んだところにある、ヘールナズシティの仮設本部まで戻ってきた。三人はすぐに隊長の部屋まで足を運んだ。
スナァは隊長の机の前に横に並んでいるソファに倒れるようにして横になった。
アーズはスナァとは対照的に隊長に敬礼をしてから任務の報告をしていた。
カリタスは入口近くの壁に体重を預け、寄りかかった。
「はぁ…疲れたってな」
「隊長、任務の報告を致します。カリタスが護衛に当たっていた光永の星屑は私たちが駆け付けるよりも早く眼鏡をかけたスーツ姿の男と青いバンダナの男、それに茶髪の女に奪われたそうです。それと、スナァは自分勝手な行動を取って任務を放棄し、カリタスは一行に真面目に任務に取り組む様子がありません。以上です」
「スナァ、任務を放棄したってのは本当か?」
隊長の突き刺さるような視線がスナァに送られた。
「えっ?えーっと…まぁ、ちょっとは放棄したかもってな」
「馬鹿野郎!!」
「ご、ごめんってな、隊長。リャクト・シャール・Fがいたから、戦いたくなったんだってな。でも、俺達が着いた時にはカリタスがあれを奪われた後だったから俺は追わなかっただけなんだってな」
「それくらいなら許してやらんわけもない。それより、カリタス!ちょっと来い」
スナァは安心したように軽く息を吐いた。隊長は自分の前まで来るように軽く手招きをした。カリタスはそれに従い、無言のまま隊長の机の前まで歩を進めた。
「なぁ、カリタス。お前、いい加減真面目に任務をこなしてくれ」
「…………」
隊長は両手で机を思い切り叩き、椅子が倒れる程勢い良く立ち上がった。
「わかってるのか!?これで何度目の失敗だと思ってるんだ!今年だけで十二回目だぞ!!それにお前が任務に失敗する度に上からガミガミ嫌味を言われるのは私なんだぞ!!」
「そうだな」
「わかってるならしっかりと任務をこなせ!ディナイウィークスにはまともに任務をこなしてくれるのはアーズとイクメしかいないから、私は頭を悩ませてばかりだ」
「それが貴様の仕事だ」
「貴様だと!貴様とはなんだ!!私は仮にもお前らの隊長だぞ!大体なぁ…」
隊長はその後も延々とカリタスに説教を続けた。カリタスは隊長の話など一言も聞かず、顔を背けてぼーっとしていた。
何十分か経った後、アーズが申し訳なさそうに止めに入った。
「隊長、その辺にしておいた方が…」
「…ん?あぁ、そうだな。今日はアーズに免じて、この辺でやめておいてやろう。いいか、まずはお前もそうだが、スナァもアーズみたいに少しは私を敬え。それと、とにかく任務はちゃんとこなせ!わかったな?」
「気が向いたらな」
スナァからの返事はなかった。
「あぁ、ベクタンテさんとツハセルクさんがいた頃が懐かしいよ。いきなり辞めちゃってどこ行ったんだ、あの人たちは。あの頃はカリタスも……」
「おい、その話をするな」
カリタスは怒りの篭った目で隊長を睨み付けた。
「はいはい、わかったよ。お前、人の説教は聞かないくせに、この話になると異常に反応するよな」
「煩い。黙れ」
カリタスは隊長に背を向け、足早に部屋を出ていった。
「ぐぅぅぅがぁぁぁ」
スナァは騒音のようないびきを掻きながら、ソファで熟睡していた。
「どうしてこうディナイウィークスには協調性のない奴ばかり集まるんだ。せっかく、今日から新人が入ったのに…」
「新人ですか?」
「あぁ、お前ら以外には挨拶し終わったから今日にでもこっちに来てもらって挨拶しておこうと思ったんだが…スナァは寝てるし、カリタスはどっか行っちまうし。やっぱりうちは挨拶一つするにでも集まらないから一人一人回らなきゃならないか」
「仕方ないですよ。私もそうでしたし…」
「そうだな。今じゃ、もう伝統みたいになってるしな。ひとまず、アーズにだけは紹介しておくか。おい!ちょっと来い!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます