第22話 カリタスVSエナビィ
「勝てないのかもしれないけど、簡単には負けないよぉ」
「ふん、できるものならやってみろ」
「それじゃ行くよぉ!」
エナビィはカリタスに向かっていき、突きを何度も繰り出す。カリタスは背中の剣に手をかけたまま、突きを紙一重でかわしていく。
「まだまだぁ!」
エナビィは更に突きを繰り出すが、その瞬間にカリタスが距離を詰めて槍の柄を掴んだ。
「そんなものか?」
「まだまだって言ってるじゃん。もう、せっかちだなぁ」
槍が動き出し、先端がカリタスの背中に向かう。だが、カリタスはそれを感じ取り、横に跳んでかわした。
「面白い戦道だな」
「なんかその言い方がムカつくぅ。あたしのインテンションジャベリンをバカにするなんて許せない!」
「来い。一瞬で終わらせてやろう」
エナビィはカリタスに向かっていく。カリタスは今まで手をかけていた剣を抜き、待ち構える。
カリタスに届く距離まで来ると、エナビィは槍をカリタスの剣に絡ませた。
「どう?これならその剣も使えないでしょ」
「甘いな」
カリタスは剣でエナビィを持ち上げ、剣を振り下ろすことでエナビィを地面に叩き付けようとした。だが、エナビィは振り下ろされる瞬間に槍を解き、更に空中でカリタスに突きを繰り出した。
カリタスはそれを掴み取ろうとするが、槍は不規則な動きをしてカリタスの胸に向かっていく。胸を突き刺す直前でカリタスは横に避けたが、槍の先端はロングコートだけを掠めた。
カリタスは掠めたことなど気にも留めずに攻撃に転じ、剣を振り払った。エナビィは空中で体制変え、振り払われる剣の刃に足を乗せて瞬間的に跳んだ。
剣はエナビィを捉らえることなく空を斬り、エナビィは着地した。
「あんたさぁ、戦道は使わないわけぇ?」
「あぁ。貴様のような弱い賊に戦道を使うと、弱いものいじめになるだろう。俺は弱いものいじめは嫌いなんだ」
「何それぇ?カンに障る言い方しかできないのぉ?」
「俺は貴様のその喋り方が不愉快だ」
「煩いぃ!喋り方なんて人の好き勝手じゃない!もう完全に怒ったよぉ!泣いて謝ったって許さないんだからぁ!」
「泣いて謝るのは貴様の方だろう」
エナビィは腰に携えていたもう一本の組立式の槍を取り出し、持っていた槍と組み合わせた。槍は前と後ろに刃の先端がくるように組み合わされている。
エナビィはその尋常ではない程長い槍を手にカリタスとの距離をある程度詰めると、槍を地面に突き刺した。槍は地面に深く刺さり、半分以上は姿を隠している。
「どういうつもりだ?」
「ふーんだ!誰が教えてあげるもんですか」
エナビィは戦闘中だというのに顔だけを横に振り向かせ、カリタスに対してそっぽを向いた。
「そうか」
エナビィはカリタスに視線を戻した。
「インテンションジャベリン、土槍絞刺!」
次の瞬間にカリタスの真下から槍の先端が姿を現した。槍はカリタスの足を突き刺し、貫いた。
「くっ…」
更に槍は足に絡まり付きながらも何度も足を貫き、最後には締め上げてカリタスの片足は立っているのがやっとな程の傷が無数に付いた。
エナビィは槍を地面から抜き取るが、槍は組み合わせた片方の一本だけが抜き取られ、もう片方の槍は地面から完全に姿を現してカリタスの足に絡み付いている。
「なぁんだ、弱いんじゃんこの人ぉ。こうなったらあたしがやっつけてやろぉっと」
「弱いのは貴様だ。今にわかる」
「そんなこと言ってていいのぉ?」
「あぁ、問題ない」
「そういえばぁ一瞬で終わらせるとか格好付けてたよねぇ?」
エナビィは面白そうに笑い、態度からも余裕が伺える。
「終わるときは一瞬だ」
「強がるのは勝手だからねぇ」
エナビィは笑みを浮かべつつ、何度も突きを繰り出す。カリタスはそれを剣ですべてを防いだが、纏わり付いた槍のせいで反撃に転じることはできない。
エナビィは槍の先端を地面に刺して槍に持ち上げられるようにして跳び、カリタスの後ろに回った。
着地と同時にエナビィはカリタスに突きを繰り出した。だが、カリタスも槍のまとわり付いた方の足を軸に反転して剣で防いだ。
カリタスは槍の先端を握り締め、力任せに無理矢理足から抜いた。
「ほらよ」
カリタスは抜いた槍をエナビィに投げ返した。
「そんなことしたら、もう歩けなくなるよぉ」
「その心配はない。もう十分だろ?そろそろ終わりにしよう」
カリタスは声を発し終えた次の瞬間にはすでにエナビィの背後で剣を振り上げていた。
「えっ?」
エナビィが振り返ると同時に剣が振り下ろされ、エナビィは槍を横にしてなんとか防いだ。が、力の差は歴然としていて、エナビィは苦しそうな表情で今にも押し潰されそうになっている。
「ラディムぅ。早くしてぇ…じゃないと…」
エナビィはカリタスの剣をなんとか弾き返したが、カリタスは弾き飛ばされた勢いを利用して今度は剣を振り上げる。
振り上げた剣はエナビィの槍の柄を断ち切った。カリタスは間髪入れず、更に剣を振り払った。
「いやっ…」
剣がエナビィの脇腹を切り裂く寸前で何もなかったかのようにピタリと止まった。更に剣は弾かれるようにエナビィの脇腹から離れた。
「何?一体、何をした?」
「まさかぁ…」
「全く、二人ともこんな状態とは…一応、様子を見に来ておいて正解でしたね」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます