第21話 リャクトVSラディム
「お前、ラディムとか言ったな」
「あぁ、だからどうした?」
「何故レロイを殺したんだ?」
「それはこっちが聞きたいな。あの野郎、俺たちを付けてきやがってその理由を聞こうと思ったら、エナビィの奴が勢い余って殺しちまったんだ」
ラディムは楽しいのか、口元をニヤけさせたまま話をしていた。
「そうか…おい、サユハ」
「えっ!何?」
「お前は逃げろ。ここに居たら巻き添い喰らうぜ」
「大丈夫!リャクトは私の強さを知らな…」
「わかったわかった。だったらそこで見てろ」
「うん」
「もういいのか?」
ラディムの口元は依然にやけたままだ。
「あぁ、十分だ。どっからでもかかってこい。そのにやけ顔を敗北に染めてやる」
「しかし、こんな相手じゃ俺の美学に付き合ってもらえそうにないな。まぁ、それじゃあ行かせてもらいますかな」
ラディムは背中に携えている大鎌を手に取り、振りかぶりながら俺に向かってきた。
俺も銃を両手に取り、二発の銃弾をラディムに向けて放った。ラディムは大鎌の刃の部分で受け止め、更に加速して迫ってきた。
ラディムは大鎌を振り払うが、俺は大鎌を真上に跳んでかわし、更に二発の銃弾を放った。が、この至近距離でもラディムは冷静にかわした。
ラディムは刃のない方を折り返して、振り払った。俺は空中にいるため動きが取れず、銃で受け止めようとしたが大鎌の方が少し速く俺の脇腹を捉らえ、飛ばした。
俺は倒れずに着地したが、今の一撃で腹の傷が少し開いたことに気付いた。
「くそっ…」
「どうした?賞金五十三億ってのはでたらめか?」
「これからだぜ。セクレイドトゥレジア、第一種・付加銃発動!」
俺は両手の銃に力を込めた。
「自然弾・風の種」
銃はすぐに風を纏い始めた。
ラディムが大鎌を振りかぶって走り出す。俺は向かってくるラディム目掛け、銃弾を放った。ラディムは銃弾を見極めて、大鎌を振り下ろした。
大鎌の刃先は見事に銃弾を捉らえたが、大鎌は弾かれて銃弾はラディムの肩を掠めた。だが、掠めるだけでは終わらず、ラディムを吹き飛ばす。
更にもう一発の銃弾をラディムに向けて放った。ラディムはすぐに体制を立て直して、大鎌の刃の部分で受け止めた。が、銃弾が巻き起こす突風までは受け止め切れずにラディムを地面に足を付けたまま、吹き飛ばした。
俺は銃に別々の力を込めた。
「自然弾・水の種」
「自然弾・雷の種」
右手の銃は水分を纏い始め、左手の銃は銃口が光り出して電気を帯び始めた。
俺はラディムに向かって走り出した。ラディムは大鎌を振りかぶって待ち構えていた。
俺はそのままラディムに向かっていき、ラディムの大鎌が届く範囲まで来た時にラディムが振り払った。俺はその勢いのまま跳んだ。大鎌は空を斬る。
俺はラディムの真上で逆さの体制のまま水を纏った銃の銃弾を放ち、銃弾は周りに水を纏いながらラディムの肩を命中した。銃弾に纏っていた水がラディムにかかり体中が濡れる。
俺はラディムの後ろ側に着地し、更にラディムに向けて電気を帯びている銃の銃弾を放った。銃弾はラディムの脇腹に命中し、全身に電気が走る。
「自然合弾・水雷の奏」
「ぐおぉぉ…」
「どうだ?これで少しはわかっただろ?」
「はぁはぁ…確かに五十三億ってのは伊達じゃないな。だが、俺もやられっぱなしじゃいられないな」
ラディムは小さなナイフを取り出し、いきなり腕を斬り始めた。ラディムはそこから滴り落ちる血を大鎌の刃に与えた。
「生命を吸い取りし鎌(アブソーブサイズ)」
ラディムは刃に血の付いた大鎌を手に、向かってくる。
俺は右手だけの銃に力を込めた。
「力覇弾・衝撃の類」
銃がなんらかの変化を行うことはない。
俺はゆっくりと銃を構えてからラディムに照準を合わせ、銃弾を放った。銃弾はみるみるラディムとの距離を縮めていく。
ラディムは先程と同じように銃弾を見極め、大鎌を振り下ろした。大鎌は見事に銃弾を捉らえ、俺の予想に反して銃弾を真っ二つにした。
大鎌の刃先が地面に突き刺さると、周りが腐植していく。
「ちっ…お前があの死鎌を持つ死神だったとはな」
「死神?」
サユハが少し不安そうに疑問の声を出した。
「ほぉ…あのリャクト・シャール・Fに知ってもらえてるとは光栄だな」
「リャクト!その死神って…」
「サユハは知らないと思うが、こいつの別名は死神って言ってかなり有名な裏社会の殺し屋だ。こいつの戦道にかかれば、どんなものの生命力でも吸い尽くすらしい」
「あらら…そこまで知ってると面白くないねぇ、こっちとしては。まぁ、俺の戦道をとくと味わうといい」
ラディムは走り出し、俺に向かってきた。俺はラディムに向けて銃弾を放ったが、ラディムは軽々とかわし更に速度を増して向かってきた。
大鎌の届く範囲に来てもまだ攻撃を仕掛けてくる様子はない。おれが動きだそうとした瞬間にラディムは大鎌を振り払った。大鎌は先程とは比べものにならない程の速さで俺に向かってきた。
俺は軽く後ろに跳んでかわしたが、大鎌は通り過ぎずに止まった。ラディムは刃とは逆側で俺に叩くように突いてきた。
俺が立ち上がった瞬間にラディムは大鎌を振り払った。その大鎌を紙一重でかわしたが、ラディムはその勢いのまま大鎌を振り上げ、振り下ろす。
俺は大鎌の刃先を右手の銃で受け止めた。
「ぐっ…」
「なんて野郎だよ。今の連撃をかわし通すとはな」
ラディムは何故か銃から刃先を離し、俺と距離を取った。
「いいのかよ?今ので俺を仕留めるチャンスを失ったぜ」
「そうかもな。だが、代わりになるものを得たから十分だ」
「今度は俺の番だぜ」
俺は両手の銃に力を込めた。
「自然弾・炎の種」
「自然弾・氷の種」
左手の銃はみるみるうちに熱気を纏いだすが、右手の銃はなんの反応も示さなかった。
「ちっ…そういうことかよ」
「わかったか?俺の戦道には他の戦道を封じる力、いや、他の戦道を吸い取る力か?それも備わってるんだ」
俺はラディム目掛け、熱気を纏う銃の銃弾を放った。銃弾は放たれると同時に炎を纏いながらラディムに向かってきた。だが、ラディムは大鎌を振り払い、銃弾を真っ二つにした。
「さぁどうする?お前は銃を撃っても銃弾は真っ二つにされる上に片方の銃の戦道は封じられてる。もう降参した方がいいんじゃないか?」
「お前を倒す術なんて、まだ幾らでも残ってるぜ」
「ほぉそいつは楽しみだな」
「例えばこんなのはどうだ?これを使うのは何年振りになるかな」
俺は両手の銃をそれぞれのホルスターに閉まった。
「まさか素手で戦おうって訳じゃないだろうな?ハッハッハ!」
「黙ってろ」
ラディムの表情が少しだけ強張った。
「セクレイドトゥレジア、第二種・極総銃発動!」
俺は後ろ腰に携えているいつもは使わない銃を手に取り、ゆっくりと銃口をラディムに向けた。
「雰囲気が変わったな。こりゃ用心した方が良さそうだ」
俺は銃の照準をしっかりとラディムに合わせた。
「終わりだ」
「それはどうかな?俺だって簡単にはやられないぞ」
俺は銃を下ろし、ラディムを照準から外した。
「もう終わってるぜ」
「は?」
次の瞬間にラディムの両手と両足に銃弾が貫いたような穿った傷が浮かび、血が流れ出していた。
「なっ…!」
ラディムは両足を撃ち抜かれたことにより、大鎌は手から落とした上に立つことさえままならずにその場に座り込むようにして倒れた。
俺はラディムに歩み寄り、額に銃口を向けた。
「どうやった?銃弾の軌道だけじゃなく、撃つ動作まで俺がわからないなんて」
「それは企業秘密だ」
「そうかよ。だが、俺たちの任務は完了したからよしとしようか」
ラディムの口元がにニヤりと笑った。
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