第三章 永遠の光

第15話 双獣一族


俺たちはトルテラシティを目指し、歩を進めていた。

「ねぇねぇ」

「なんだ?」

「なんでトルテラシティなの?」

「着いたらわかる」

「それにしても世界も随分と風変わりしたようだな」

 レロイが何もない周りを見渡して呟く。

「そういえばよ、レロイって何歳なんだ?」

「あっそれは私も気になるー!」

「私か?そうだな…二百年くらい前までなら記憶にあるが、それ以上前は私にはわからぬ」

「嘘ぉ!?」

 サユハは開いた口が塞がらないくらい驚いていた。

「てことは推定二百歳ってところか?ったく、どれだけ長生きすれば気が済むんだよ」

「私の年齢は人と殆ど変わりないが、双獣一族は三十歳になれば大人と認められ統合の儀を行うのだ」

「とうごうのぎ?何それぇ?」

「そもそも普通の人間だったが、統合の儀を行うことにより、体の中に双獣を取り込むのだ」

「どういうこと?」

「そうだな…簡単に言えばこういうことだ」

 レロイは右腕を突き出した。レロイの右腕は一瞬にして、俺があの時戦った双頭獣の腕へと変貌を遂げた。

「なんかこれじゃ腕だけ大き過ぎてバランス悪いね」

「そうすることによって、双獣の全てが体と合わさり、寿命さえも双獣の分が足される訳だ。双獣は元々長寿であり、五百年は生きるとされておるから」

「なるほどな。だからお前も長生きになるって寸法か」

「そういうことだ。もう少し我が一族について話そうか?」

「うん!聞きたい!」

 サユハは興味ありげに首を縦に振り、頷いた。

「あぁ、俺も聞いてみたいな。今まで色々な場所へ言ったことがあるが、双獣一族なんて聞いたことねぇからな」

「承知した。双獣一族では統合の儀を終えてからすぐにこうなれる訳ではない。修行を積むことにより、双獣へと変身することができるのだ。この部分獣化が第一段階とすれば完全獣化は第二段階ということになる。元々は双獣一族の先代の長が始まりとされ、それから統合の儀を行われてきた。リャクトが我らを知らぬのは我が一族は人を嫌い、密林の奥地に住み、そこで一生を終えるためだ。私のような人間は例外だが」

 レロイは右腕を元の人の腕に戻した。

「だからか…」

「なんか可哀相……密林の奥地で何百年も暮らして一生が終わるなんて」

 サユハは少し俯き、表情は悲しみの色を写している。

「私はそれでいいと思っておったのだが、あることが起こってもう今では一族が生きているのかさえ私にはわからぬ」

 レロイの表情が一瞬だけ悲しみを写しだしたように見えた。

「ある事?」

「少し話し過ぎてしまったみたいだ。これはお主らには関係のないことだ」

「気になるー!」

「あれはもう終わったことなのだ。今更、話したくもない」

 元気のいいサユハをレロイは冷たく遇った。その態度にサユハも聞いてはいけないと悟ったのか、相槌を軽く打つだけだった。

「そっか…」

 レロイの話を聞いている間に既にトルテラシティが水平線に見えるところまで来ていた。

「見えてきたぜ」

「あっ本当だ!」

「あそこがそうなのか?」

「そうだ。あの見える街が商業街とも呼ばれるトルテラシティだ」

 俺達はすでに日も傾き始めたころにトルテラシティに着いた。

 トルテラシティは街の周りが塀に囲まれ、中心には街のシンボルとなっている大きな会議塔という建物がある。塔と言っているのにもかかわらず、外観は城のような造りをしている。

「やっとだな。ちょっと早いかも知れないが、まぁいい。早速だが、ちょっと宿屋に行く前に寄り道するぞ」

「えぇー。いい加減歩き疲れた」

 サユハはその場にだだをこねるように座り込んだ。

「だったら、サユハは付いて来なくていいぜ。レロイ、行くぞ」

「承知した」

「………ちょっと待ってぇー!やっぱり私も行くー!」


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