第8話 リャクトの正体

 ジガンは俺の正体を明かし始めた。

「あいつはリャクト・シャール・F。ランクSSの賞金首の四人の内、世界二位の賞金首だ。賞金額は五十三億Reで古代兵器の銃を武器に使っている世界で唯一の人間だ。そんな奴がドギなんぞに負けるはずがないってわけさ」

「何!?ジガン、お前知ってたのか?」

 ドギは目を見開き、驚愕といった顔をしていた。

「あぁ。酒場で見たときからどっかで見たことあるとは思ってたが、ここに来て確信したんだ」

「私もそれくらいならとっくに気付いてましたよ」

「なんで教えてくれなかったんだ!」

「気付かないお前が悪いな」

「ジガンの通りですね」

 ドギはその言葉に何故か落ち込んでいた。

「えっ!?リャクトってそんなすごい人だったの??」

「おい、ドギ。お前の負けみたいだし、ナウラもやられたみたいだから俺たちはさっさと退散しようぜ」

「…………」

 ドギからジガンへの返答はなかった。ジガンはそれを承諾と受け取ったのか、階段へ歩を進めようとした。が、一歩歩みでてからジガンは何かを思いだした。

「あっそうだ!タリィ、ナウラは頼んだぞ」

「あなたに指図されるのは気に入りませんが、ナウラは私が承りましょう」

 ドギ一家は静かに退散していった。

「ふぅ、さぁて俺も疲れたから帰るかな。今日はちょっと頑張り過ぎたし」

「そうだ。私はお主に付いていくことにしたぞ」

「はぁ?なんでだ?」

 レロイの突然の言葉に俺は少しだけ虚を突かれた。

「私はお主には勝負に負けただけではなく、命までも助けて頂いた。次は私がお主を助ける番だ」

「なんでそうなるんだ?」

「なんでもだ!もう決めたことだから変える気はない」

「頑固だな。ったく、勝手にしろ」

「はいはいはいはい!」

 サユハは体中が傷付いてるのにもかかわらず、元気良く手を挙げている。

「今度はお前か…なんだ?」

「あのさぁ…なんかさっきから話してるこの人は誰?」

「あぁ、こいつか?こいつは双頭獣だ」

「??」

 サユハは首を傾げ、顎に指を当てた。

「元々は人間らしくて、それに戻ったんだって」

 サユハは黙り込み、考えをまとめているようだ。

「………えぇーーーー!!!」

「煩いな。少し黙れ、サユハ」

「だってだってだってだってだって!!普通驚くじゃん!あんなおかしな生物の本来の姿がだよ?こんな普通の、しかもちょっとカッコイイなんて!」

「あっそ。俺は先に帰るぜ」

 俺は疲れていたのでサユハを無視し、帰路についた。

「私はレロイ・トールと申す。よろしく頼む」

「は、はい。私はサユハ・ノルンドーラです!あっ、リャクト!ちょっと待ってよー!置いてかないで!」

 俺たちは日が傾き始める頃に宿屋へと戻った。



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