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 その円形の空間の中はいたずら書きでいっぱいだった。

 太陽や月。星。銀河。

 ……そして、星座。

 そんな子供が描いたような絵が、壁のいたるところに描かれていた。それは機械技師たちがよくするいたずら書きだった。

 彼らはこうして、世界中のいたるところに自分たちのテロ行為と一緒に、こういった子供の描いたようないたずら書きを残して、自分たちの存在を世間にアピールしているのだった。

「ほら。これ見て。これは私が描いたのよ」

 ソラの指差しているところの壁には、周囲の壁に描かれているいたずら書きとは少し趣向の違った『風船と子供の絵』が描かれていた。

「風船が私の暗号名なの」ソラは言う。

「それを僕に教えちゃっていいの?」ハルは聞く。

「もちろん」ソラは答える。

「だってそうすれば、どこかのニュースとかでこの風船のマークを見たときにさ、ハルは、ああ、これはソラがやったのか、って、私のことを理解してくれるでしょ?」

 楽しそうにそう話すソラの言葉に、ハルはとりあえずソラの描いた風船を持った子供の絵の表情のように、にっこりと笑って笑顔だけを返した。

 それからハルは自分たちのいる機械技師が掘った円形の空間の様子を観察した。

 すると、今、ソラとハルが通ってきた通気口のほかにもたくさんの出入り口がこの空間にはあることがわかった。

 ここから壁の中にあるいつくかの施設に、あのコンピューター室のように、移動できるようになっているようだった。

「この場所でさ、師匠はいなくなっちゃったんだ」

 独り言のようにソラがぽつりとつぶやいた。

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