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 あの壊そうとしても絶対に壊すことができないような、頑丈に作られていた鋼鉄の巨大な壁は、あらゆるところが朽ち果てていた。

 その朽ちた壁の中からは緑色の植物が生えていて、壁のほとんどの部分も、苔のようなものに覆われていて、それはもはや壁というよりは一つの大きな隆起した丘のような、そんな大地の塊のようだった。

 それなのに、コスモスとフユが出てきたドアのところあたりは、なぜかきちんとその現状を止めていて、そのドアの存在が、この大地の塊が、昔、壁であったことをフユに教えてくれた。

 ……昔? そう昔だ。

 壁はまるで、何千年という時を、人類に放棄されてこのような形状になったのだと、フユは思った。

 コスモスの言っている新世界とは、もしかしたらそんなフユとハルのいた時代から数千年の時が経過した未来の世界のことなのかもしれないとフユは思った。

 壁はタイムマシンであり、今さっき、ハルがワールドエンドを作動させたために、フユとコスモスはハルだけを実時間軸の空間に取り残してきて、二人だけで、この数千年後の時代にタイムスリップしてきたのかもしれないと思った。

 それは、自分でもなんだか突飛すぎると思えるような、本当に突飛な考えだったけど、でもそう考えると、今フユの周囲に広がっている世界の説明がつくような気がした。

「フユ。行きましょう。私たちはこの忌々しい壁から、一歩でも遠いところで生活をしなければなりません」

 コスモスはつないだままのフユの手を引っ張って、緑色の大地の上を歩き出した。

 フユは「うん」と言って、コスモスと一緒に歩き始めたのだけど、フユの目はまだ緑色の大地の塊に変化してしまった壁に、ずっと(その壁が見えなくなるまで)向けられていた。

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