33

「この世界では私たちは永遠の命を手に入れているのです。私とフユは、この新世界の中で、二人だけで、永遠に生きていくことができます」とコスモスはフユの目を見ながら、そう言った。

「永遠の命……?」

 フユは最初、コスモスの言ってる言葉の意味がよく理解できなかった。

 永遠の命? それは死ぬことがないということ。この新世界の中で、コスモスと二人だけで、僕は、ずっと死ぬこともなく永遠に生きていく……?

「……そんなことはない。永遠の命なんてこの世界に存在していないよ。コスモス、冗談を言っているの?」フユはわざとらしく、少しふざけた感じでコスモスに言う。

「いいえ。違います。冗談ではありません。確かに旧世界には永遠の命は存在していませんでした。それは確かに夢物語でした。でも、ここでは違います。私たちが今、存在しているのは新世界なんです。新世界の中では夢でも幻でもなくて、本当に永遠の命が存在します。……ただ」

「ただ? なに?」

「一つだけ条件があります。それはあの、今私たちが出てきた『壁の向こう側』に行こうとはしないことです」

「壁の向こう側?」

 フユは振り返って、世界を二つに分ける巨大な黒く禍々しい壁をじっと見つめた。

 そこには確かに壁があった。

 でも、今、フユの目に見えるその壁は、フユのよく知っているあの壁とは、まるで違う別の壁に、いつの間にか変化していた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る