29

 そして、おそらくなんらかのトラブル(その原因はハルがワールドエンドを作動させたことだ)により、壁に侵入した機械技師たち(機械技師のマスターとソラ)はハルと一緒に壁の中に閉じ込められてしまったということだ。

「救助はこないよ。きっといくら待ってもね」とソラは言った。

「OK」とハルは言った。

 ハルはソラと二人で、『これから協力して壁の外に出る』というミッションをこなすことになった。

 コンピューター室の入り口のドアは開きそうにもなかった。

 なのでとりあえず、ソラが侵入してきた天井の通気口を通ってひとまずコンピューター室の外に出る必要があった。

 ソラもそのことには賛成した。(……と、いうかほかに道はなかった)

 二人は通気口からコンピューター室を脱出しようとしたのだけど、その前に最後にやっておかねばならないことが一つだけ、ハルにはあった。

「ソラ。早速だけど、一つ頼みがある」とハルは言った。

「うん? なに?」

 これからの活動のために体をひねったりして、準備運動をしていたソラはハルに言った。

「このコンピューターを破壊してくれないか?」

「……え? いいの?」

 ソラは真剣な顔で聞く。

 新米とは言ってもさすが機械技師だ。壁の中にあるコンピューターを破壊することがどういう意味を持つのか、……ソラはちゃんと理解しているようだった。

「ああ。もうこのコンピューターに用はない。これはもう、ただの中身を失った、……からっぽの箱だ」と冷たい声でハルは言った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る