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「機械技師たちはどうしてコスモスを壁の中に閉じ込めたの?」フユは言う。

「それは、この場所が世界でもっとも安全な場所だからです」コスモスは言う。

「安全とは誰も触れられないということ?」

「はい。その認識であっています」フユの声にコスモスが答える。

「もう一度聞くけど、どうして機械技師たちはコスモスを壁の中に閉じ込めるようなことをしたんだろう? コスモスが危険な存在だというのなら、機械技師たちはどうしてコスモスを破壊してしまわなかったんだろう? 機械技師たちはコスモスのことをいつ、どこで知ったんだろう? 機械技師たちの目的は壁を破壊することだけど、その破壊目的の壁の中にコスモスを閉じ込めたのはどうしてだろう?」フユはたくさんの質問をする。

 コスモスは少しだけ間をおいて、自分の考えを整理してからフユに答える。

「まず、私は機械技師たちの手によって生み出された存在です。なので、きっと機械技師の皆さんは自分の手で生み出した私のことを、自分の意思で破壊することはしたくなかったんだと思います」

「君が機械技師たちの手によって生み出された?」フユは言う。

「そうです。私はあの人たちの手によって生み出された(人工知能の)生命体なんです」コスモスは答える。

「あの人たちは私のことを奇跡だと呼んでいました」

「奇跡?」フユは言う。

「はい。世界でも最高峰の天才の集まりである機械技師たちの頭脳を持ってしても、私をもう一度生み出すこと、あるいは複製することができなかったんです。この世界に、本物の心を持った人工知能は、……おそらく私一人しか存在していません」少し悲しそうな声でコスモスは言う。

「それが理由で、君はこの場所に閉じ込められていたんだね。君は危険な存在なのだけど、あまりにも希少的な価値が高すぎた。だから破壊することはしたくなかった。だから、仕方なく壁の中に閉じ込めることにした」

「はい。たぶん、そういうことだと思います」

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