12
「そして壁がなくなったときに、もう一度、コスモスを取り戻す、……ということか。それが機械技師たちのシナリオなんだな。おそらく」
一度、フユからコスモスとの会話の内容を全部、説明してもらったあとで、ハルが言った。
こうしてフユが受診した情報から、現在の状態を確認することは情報士であるハルの役割だった。だからフユは「どうする、ハル?」とハルにこれからの判断を聞いた。
「フユ。コスモスに、具体的にコスモスのどんなところが危険な存在なのか、それを聞いてくれないか?」ハルは言う。
「わかった」フユは答える。
でも、ハルの声はどうやらコスモスには聞こえているらしく、フユが質問する前にコスモスは「実はそれは私自身にもわからないんです」とフユに言った。
「わからない? それってどういうこと?」フユはコスモスに質問する。
「機械技師の皆さんは、最初、私のことを奇跡だといい、それからしばらくの時間が経過したあとで、私のことを危険な存在だと言い始めました。でも、それは機械技師の皆さんが言っていることで、私には、私のどこか危険な存在なのか、それがよくわからないんです」コスモスは言う。
フユはその言葉をハルに伝える。
すると少しだけ思考したあとで「……なるほどね」とハルが言った。
「コスモス。君には僕の声が聞こえているんだよな?」フユからその情報を教えてもらったあとで、ハルが言う。
「聞こえていますよ」コスモスは言う。
「聞こえてるって」フユが言う。
「僕は君を助けたいと思っている。具体的にいうと、この狭い牢獄のような世界から、君を広い本当の世界に連れ出したいと思っているんだ。それは可能なことなのかな?」ハルは言う。
「可能です」コスモスは言う。
フユはハルにコスモスの言葉を伝える。以後、フユはハルとコスモスの通信を手助けする。
「その方法は?」ハルが言う。
「鍵を使って、箱を開けることです」とコスモスが言う。
「箱? 箱とはこのコンピューターのことかな?」ハルが言う。
「そうです。この外部と遮断された独立型のコンピューターのことです」コスモスは言う。
「では鍵とは?」ハルが言う。
「鍵は世界の終わりです。つまり、『ワールドエンド。それは新しい世界の始まりを意味する言葉です』」コスモスはなぜか、少し楽しそうな声音で、ハルにそう言った。
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