10

「……ずっと前。コスモスはいつからこの場所にいるの?」フユは言う。

「この壁が建設された当時からです」コスモスは言う。

 この壁が建設されたのは、今から約百年前の話だった。するとコスモスはこの場所で百年間、ずっと孤独だったということになる。

「さっきのSOSはコスモスが発信したメッセージなの?」フユは言う。

「……はい。きっとそうです」コスモスは答える。

「確証はないの?」

「ありません」コスモスは言う。

「きっと私の無意識の願望が、そんなメッセージとなって、外部に投影されたのだと思います。私は直にSOSと言うメッセージを外部に発信していません。でも私が外の人に助けて欲しいと思っていることは本当のことです」

「コスモスは人工知能なの?」フユは言う。「はい。私は、人工知能です。でも、ほかの人工知能とは少し違っている、少しだけ特殊な人工知能なんです」コスモスはいう。

「コスモスはどんなところがほかの人工知能とは違っているの」フユが聞く。

「それは私に本物の『心』があることです」

 コスモスは言う。

「え?」とフユは言う。

 それからフユは急激な寒気のようなものを背中に感じて、……さらに今、誰かに自分の背中を見られているような、そんな気がしてふっと背後を振り返った。

 でも、そこには誰もいなかった。

 真っ暗な壁と、開かない、ロックされた開かずのドアがあるだけだった。

 フユは視線をタブレットの画面の中に戻した。

 するとそこにはコスモス(虹色に輝く炎)がいた。

 フユはコスモスとの会話を続ける。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る