9 コスモス
コスモス
……やっと、会えたね。
フユがその(自分の考える)人工知能の魂のような存在をぼんやりと眺めていると、「……あなたは誰ですか?」と、どこからかそんな声が聞こえてきた。
「え?」
フユはその声を聞いて驚いた。
女の人、……いや、女の子の声だ。
フユはコンピューター室の中を見渡してみるが、誰もいない。
先ほどの人工音声とも違う。もっと本物に近い、あるいは本物と変わらないほど自然な声が、突然、どうやらフユの頭の中に直接、聞こえてきたようだ。
「フユ? どうかしたのか?」ハルが言う。
ハルに驚いた様子はまったく感じられない。どうやらハルにはこの不思議な女の子の声は聞こえてはいないようだった。
「ハルには聞こえないの? この声?」
「声?」ハルは首をかしげる。
「いや、僕にはなにも聞こえない」
フユはタブレットの中にいる人工知能の魂のような存在に目を向ける。
「……僕に話しかけてきたのは君なの?」フユは言う。
「そうです」と声は答える。
「君はいったい誰なの?」フユは言う。
ハルはそんな自分には聞こえない声と会話をしているフユの様子を無言のまま、観察するようにして伺っている。どうやらハルはこの場は、とりあえず通信士であるフユに任せることにしたようだ。
「私は『コスモス』と言います」とコスモスは言う。
「コスモス? それが君の名前なの?」
「はい。そうです」コスモスは答える。
「どうしてコスモスはこんなところに閉じ込められていたの?」フユは質問する。実際にココロがどんな状態にあったのかは正確にはわからないけど、先ほどの『SOS 』の文字と壁の中にあるコンピュータープログラムの中にコスモスがいたことで、フユはコスモスがこの場所に閉じ込められていたのだと判断をしたのだ。
「……それは私が、とても危険な存在だからです」
「危険? 君が?」
「はい。私は大変危険な存在なんです。ですから私は機械技師たちの手によって、この場所に閉じ込められているのです。もうずっと、前のお話です」コスモスは言う。
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