「思ったよりも情報量が小さいデータだね」フユが言う。

「これは鍵なんだよ。きっとね」ハルが言う。

「鍵? 鍵ってなんの鍵?」

「ワールドエンド……。世界の終わりは、新しい世界の始まりを意味する言葉なんだ」

「……つまり、このデータは、そのハルの言う新しい世界に入るための鍵だっていうの?」そう言って、フユは首をひねる。

「……うん。そうかもしれない。いや、……でも」

 ハルは思考する。

 しかし、その瞬間、ハルの思考を邪魔するように、コンピューター室の中に突然、大きな警報音が鳴り響き始めて、同時に、部屋の天井にあったランプが非常事態を告げる赤色に点滅し始めた。

「え!? なんで!?」フユが驚く。

「僕たち、なにも失敗してないよね?」

「ああ、していない」

 ハルはフユにそう返事を返す。

 でも、明らかにコンピューター室の中は非常事態を告げる状態に移行している。

『緊急警報発令。緊急警報発令。コンピュータに異常が発生しました。現在、その原因を解析中。解析が終わるまで、全隔壁を作動、通路を遮断。通行を不可能とします』

 そんな人工音声の言葉通りにコンピューター室のドアはがちゃん! と音がしてロックされてしまった。

 ハルはタブレットの電源を落とすと、フユを見て両手を軽く上げて、お手上げのポーズをした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る