7
アリスは通路を歩いていくレインの背中を少しだけ見送ってから部屋の中に入った。指定された席に座る。気持ちがだんだん落ち着いていくのが自分でも分かった。余計な考えが頭の中から消えていく。
試験時刻になると、部屋の中に設置されているスクリーンに映像が流れ始めた。大画面の中に人の顔が映し出される。金髪碧眼の信じられないくらい整った顔をした少年の顔。アリスも何度か画面の中で見たことのある顔だ。できればもう一生見たくもないのに、勝手に私の視界の中に入ってくる鬱陶しいやつ代表の顔。
『皆さんこんにちは。私の名前は『オベリスク』。この街の管理者を束ねる者。そして皆さんと共に人生を歩み、生きる者。『街の代表』として、こうして皆さんにご挨拶ができることを、誠に光栄なことだと考えています。本日は試験に参加して頂いて、本当にありがとう』
オベリスクはここで一度頭を下げてお辞儀をした。部屋の中にいる人たちの数人が控えめにだが、ぱちぱち、と拍手をしている。その拍手の音を聞いた時、アリスは反射的に『気持ち悪い』と感じてしまった。
飼われている奴が拍手なんてするなよ。お前たちは奴隷か、それとも豚なのか? 人間としての誇りはないのかよ?
試験の部屋は前回の成績でわけられているはずだ。つまりこの部屋にいてさっき拍手したやつらは少なくとも成績では私と同じくらいのはず。そいつが管理者に拍手をしている。自分が画面に向かって拍手しているところを想像したら吐きそうになった。ちくしょう。殴りたいが殴れない。
画面の中じゃ私の拳が届かないじゃないか。
それとも拍手したやつをぶん殴ってやろうか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます