一応、補足しておくと私(アリス)とレインは幼馴染だ。レインは普段からこのくらいデリカシーのないことを平気で口にするがそれは幼馴染の私くらいにしか言わない。それだけでも十分問題だけど、とにかく表のレインはとても優等生だ。成績だけではなく外面もいいのだ。まあ猫を被っているのはお互い様なのでその辺の気持ちはわからなくはない。


 そんなことをアリスが考えていると辺りが急に暗くなった。さっきまで見えていた太陽のかわりにオレンジ色の淡い人工的な光が定期的な周期で、二人のいる場所の周囲を照らし始める。どうやらトンネルの中に入ったらしい。レインとアリスは今、普段暮らしている東区から定期試験の試験会場のある中央区に向かって移動している。東区と中央区の間には街を覆っている巨大な灰色の壁と同じような形をした大きな(やはり灰色をした)壁が存在していて歩いて区間の間を移動することはできないようになっている。区間を移動するためには街で唯一の区間移動手段である電車に乗らなくてはならない。つまり二人は今、灰色の壁の中を移動しているということになる。


 嫌な感じ。誰かに見られているような、そんな気配をアリスは感じる。

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