「悪い。寝坊した」

「寝坊したじゃないでしょ! 遅刻よ、遅刻。ほらとりあえず移動するよ。文句は歩きながら聞いてもらうからね」アリスはレインの手を取り引っ張るように歩き出す。


「大丈夫だよ。まだぎりぎり間に合う」レインが言う。アリスはむかついたのでレインの足首を思いっきり蹴り飛ばしてやった。レインが声にならない悲鳴をあげる。


「お前、いきなりなにするんだよ!」

「次は顔面をぶん殴るわよ!」


 拳を握って威嚇した。それ以降、レインは余計なことをじゃべらなくなった。まったく手間のかかる人だ。二人は東区の駅まで移動する。乗車する電車はオレンジ線と呼ばれているオレンジ色の電車だ。

 レインの言っていた通りぎりぎり電車に間に合った。こういうところはさすがだ。適当に言っていたのではなく本当に計算していたのだろう。車内は比較的空いていた。時間がいつもより遅いためだろう。席に座ることもできたがレインがドアのすぐ近くに立ったまま動かないので、アリスもその隣に立つことにした。

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