幼馴染来襲編



 僕と白井さんはリビングに向かいふたりお茶を飲みながら会話をしていた。


「透さん、よかったら今度ふたりでどこか行きませんか? 」


「うぅぅ。行けたら良いんだけどねぇ」


「休日に早く出掛けたらどうですか? 今日みたいに早く来たら透さんの家でこうやってふたりきりで話ができているんですから」


 葉子は結構気付くもんだなあと僕は思った。おまけに行動力もあるし。というか気になったことがあったなと思い出す。


「そういえばさ。僕の家よく分かったね」


 と僕が聞くと


「それは透さん達をつけ……いえいえ。人から聞いたんですよ」


 と葉子はそっぽを急に向きなにかごまかしたような気がした。けれど拘る必要もないわけだし言いたくないなら無理して聞く必要もないかと僕は思い直す。


「で……お出かけだったね。でも多分できるのは1回だけだと思うよ。気付かれたら最後、以後は待ち伏せされる気がするから……だから一回限りだと思ってどこに行きたいか考えといて」


 と僕が言うと


「まあ、このやり方が駄目になればまた別の方法を考えますので。とりあえずわかりました。考えときますね。よかったら来週同じ時間にまた来ますのでどこか行きましょうね」


 そんな会話をふたりでゆったりとした。いつもあのふたりに囲まれて……慌ただしい日々を送っているからかふたりきりでこうやって話すのってとても良いなあと本当に思う。


「うん。わかったよ」


「なにがわかったの? 透くん? 」


 ん? 今柚の声がしなかったか? と思っていると葉子が少し不機嫌な顔になって


「透さん、後ろですよ。妖怪おさななじみさんは」


 なんてことを言ってきた。僕は後ろを見ると、柚に翔が仁王立ちして僕たちを見ていた。


「なにが妖怪おさななじみだ。まあそれは置いといてなにがわかったんだ、透? 」


 と今度は翔が僕に尋ねてきた。というか母さん撃退するんじゃなかったっけか? 釘も刺すって言ってた気が? 


「ふたりともよく家から抜け出してきたな? 」


 と僕が尋ねると


「あーー。家に居なさいって言われたの透くんのせい? まあ気にしないで来ちゃったけど」


「そういえば俺も言われたな。気にしなかったけど」


 母さん……糠に釘だったよ。意味なしだったよ。


「でさ。どうやって入ってきた? 」


 とまた僕が尋ねると


「あー。さっき飛びかかってきたの透の母ちゃんか。ごめん。避けて入ってきた」


「私は翔についてきただけだからごめん、わかんない。ただ、なにか飛んでったのは見たけど」


 って母ちゃんなにしてんだよ。飛びかかってどうすんの。「今日はお客さん来てるから帰って」とか言うだけで良かったじゃん。


「はぁ……何やってんだ、母ちゃんは」


 と呆れ果てていた僕に幼馴染ふたりは


「で、話は戻るけどなにがわかったの? 」


 とふたりは忘れておらずまた僕に尋ねてきた。


「えーと、ふたりでデートできたら良いなあって話してたんだよ。お前らが居るからなかなかできないからな。いつかできたら良いなって」


 と僕が言うと


「へぇ。いつかねえ」


「ほんとほんと。いつかっていつなんだろねぇ?」


 となんだか何かが分かってるような口ぶりでそんな事を言う幼馴染ふたり。僕は葉子の横に行き


「葉子。もしかしてふたりに聞かれたかな? 」


 と葉子だけに聞こえるよう小さな声で尋ねてみた。


「いえ、多分聞かれていないと思うんですが」


 と葉子から返事をもらうと僕は


「なら聞かれていないってことで話を進めるから」


「わかりました」


 と葉子との話し合いを聞こえないよう終わらせた。




「というかさ。なんでふたりきりにこだわるの? 4人で行けばいいじゃない? 」


 と柚は言ってくる。すると


「それはふたりきりで透さんの手を繋いだり腕を組んだりそしてそれ以上……キャッ恥ずかしい」


 と当初は柚に説明していたんだろう葉子さんだったけど次第に想像してしまったのか悶始めたんだけど。うぅ葉子さん何考えてんの。


「別にふたりきりじゃなくても出来るでしょ? ほらこうやって」


 と言って柚は俺に腕を組んできた。すると葉子は悶ていたはずがすぐに元に戻り


「柚さん、そういうことは止めてください。透さんは私の彼氏なので」


 と止めるよう柚に告げていた。


「えー。幼馴染なんだし良いでしょ? 」


「いえ、それは彼女の特権ですから駄目です」


 と葉子と柚は言い合いを始めてしまう。それを他所に


「あいつらほっといて俺とふたりでゲームでもするか? 」


 と翔は僕をゲームに誘ってくる。いや……ほっとけないでしょ? と思っていると


「翔くん、柚ちゃんあんたたちね。なんで私を避けるのよ。転けちゃったじゃない」


 とちょっと汚れた母さんが戻ってきたようだ。


「いや、母さんさ。なんで飛びかかるんだよ。わけわかんないよ」


 僕がそう言うと


「いや、昔を思い出しちゃって。昔はあんたたちとよく遊んだなあって。思わず飛びかかっちゃったわ」


 と言いながら照れた顔をする母さん。でもごめん。今ここにはその照れた顔の需要はないから。


「まあ揃っちゃったし、そろそろお昼だし昼飯でも作ろうかね。みんな食べてってよ」


 と母さんの一声がみんなにそう伝えた。その声に葉子さんは


「すいません。お昼までありがとうございます、お義母さま」


 とお礼を慌てて返していた。それを見た柚と翔は


「お義母さまありがとね」


「お義母さん今日もありがとな」


 なんて真似して言う。それに対して母さんは


「白井さんはともかくあんたたちまでお義母さま言われる筋合いないよ? 」


 と言い返していた。というか……葉子が居るといつもより余計に賑やかになっている気がするんだけどなんかおかしくない? なんて僕はひとり不思議そうになぜかを考えてしまっていたのだった。





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