うちの母さん編
今日は休日と言っても起きる時間はそう変わらない。ゆっくり寝ても良いんだけどもうこの時間に起きることが癖になっていると言うか。僕は起きて台所に行くと母さんがいた。
「あんたは休みの日も変わらなく起きてくるわね。あっもう父さんは仕事に行ったから」
母さんは僕にそう告げる。ちなみに父さんは休暇を平日に取るように言われているらしく休日の休みは殆ど無い。いつも大変だなあ……おつかれさまです、父さん。
「あんたは今日は予定あるの? 」
と母さんに聞かれたので僕が
「いや、予定はないけどくるんじゃない? あのふたり」
と答えると
「はぁ。あの子達いいかげん透離れできないの? 」
と呆れたように母さんは言う。いや、母さんよ。親離れみたいなそんな言い方止めてくれよ。
「こっちから離れたいって言っても聞いてくれないんだよ。はぁ」
と僕が言うと
「あら、あんたからそんなことは言ってたのね」
と驚く母さん。
「あのふたり付き合っているんだよ? そこに紛れて男が1人……周りからなにあいつって思われてるんだよ。辛いって」
「あら。あのふたり付き合ってたの? 全然わからなかったわね」
と母さんは再度驚く。
「まあ母さんから見たら全然変わんないだろうね。僕たちの関係。幼馴染のままだもん」
と僕は言いながら冷蔵庫から牛乳を出してコップに注ぐ。
「柚ちゃん透にベッタリだったのに変わるものね。で、あんたには彼女居ないわけ? 」
と急に僕に彼女が居ないかと振ってくる母さん。思わず牛乳を吹き出しそうになってしまったじゃないか。
「あ、ああ。彼女できたよ」
僕がそう言うとまたまた驚きながら母さんは
「え? まさか柚ちゃんを翔くんとふたりでとかじゃないわよね? 」
と突拍子もない事を言ってきた。
「勘弁してよ、ちゃんと別の人だよ。機会があればちゃんと紹介するから」
と僕はそのうちにきちんと説明しないとこの母さん……変な想像しかしないかもと不安になってしまうのだった。
僕は着替えてリビングでのんびりとしていた。すると休みだし今日はまだ幼馴染たちが急襲してきていないのでぼーっとしていたせいもあるのだろう次第に眠くなってきた。けれど
ピンポーン
とインターホンの音が鳴った。
「あら。家で呼び鈴が鳴るなんて珍しいわね。あの子達なら勝手に入ってくるものね」
と母さん。というか呼び鈴ってなにさ。
母さんが玄関へと向かいしばらくすると
「透、透、と・お・るーーーーーーーー」
と僕の名前を連呼して叫ぶ母さん。何事かと思い僕は立ち上がり玄関まで行くと
「透さん、おはようございます」
と挨拶をする葉子がそこに居たのだった。でも……あれ? 葉子なんで家知ってんの?
「葉子おはよう。というかなんで家知ってるの? 教えたっけ? あれ? 」
と悩んでいた僕を他所に母さんがまた
「透! あなたその娘誰? 」
叫びながら僕に尋ねてきた。
「ああ、さっき話していた僕の彼女、白井 葉子さんだよ」
と僕が答えると
「白井 葉子です。お義母さまよろしくおねがいします」
すかさず葉子が母さんに挨拶をしてきた。
「お義母さまですって透。こちらこそよろしくね。あっちょっとふたり待ってて」
と母さんは言った後台所へと向かっていった。なんなんだろ? と思っているとすぐに母さんは戻ってきた。そして
「透。あんた白井さんの横行って」
と何がしたいのかわからない母さんは僕に移動するように言ってきた。
「意味分かんないけど……葉子ちょっといい? 」
「はい、いいですよ」
そんなやり取りをしてから僕たちはふたり並んだ。
「うーんと。これでいいの? 母さん」
と母さんに声をかけると
「うん、おっけおっけ。いくよ! 」
といきなり母さんに行くよと言われたんだけどなんだよ、わからん。
カシャ
とスマホの音がした。
「うん、ちゃんと撮れた。透の初彼女の写真ゲット! 」
と喜び勇んで母さんはまた叫ぶ。というかテンション高いよ……ていうより写真欲しかっただけかよ。恥ずかしいぞ、母さん。
「さて、白井さんうち上がっていくのよね。なにか準備しないと」
と異様に張り切っている母さん。
「お邪魔してよろしいですか? なんとなく透さんに会いたくなって思わず来ちゃったものでなんの約束もしていないんです」
と葉子は母さんにそう言いながら僕をチラチラ見ていた。なんか小狡いなあと思いながらも
「うん、いいよ。なにもないけど上がっていく? 」
と僕が言うと
「嬉しい。お邪魔しますね」
と喜んで上がり始めた葉子。
まあそれは良いんだが……もうしばらくしたら幼馴染も来るんじゃないのかなあと思っていると
「透、大丈夫よ。私がなんとかするから」
と母さんが言い出した。ん? 何考えている?
「何するつもり? 」
と僕が母さんに聞くと
「そりゃこんな日にあのふたりに来られたらたまったもんじゃない。翔くんと柚ちゃんのお母さんに連絡入れて寄越さないようにって釘刺しとかないと」
と幼馴染達の対処をしようとしているようだった。けれど
「そんなことしてもあのふたり抜け出して多分くるよ? 」
と僕が言うと
「なら私が来たら撃退しておくからふたり仲良くリビングでお茶でもしてなさい」
と訳わからないことを言い出す母さん。
それでも僕に彼女ができたって知って喜んでくれているんだろうなあと思うと少し笑いが出てしまいながらも
「母さん? 」
「何? 」
「ありがとね」
僕はそう伝えてリビングへと向かっていったのだった。
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