年上の彼女編



 僕は白井先輩から告白され付き合うことになった。どういう理由で好きになってくれたのかは聞いていない。僕としてはその理由なんてあんまり気にならなかったから。だって周りからふたりにつきまとう人みたいに思われている中、僕を見つけて告白してくれたのだから。それだけでいい。だからこれからは白井先輩をたくさん知って行きたいと思っている。


 白井先輩とは昼食時と学校の下校時には一緒過ごそうと話していた。ただ、ふたりきりにはどうしてもならなかった。なれなかったが正しいかもしれない。まあ原因は幼馴染ふたりが居るからということなんだけど。


 だけど今日はめずらしく幼馴染ふたりとも用事があるということで白井先輩とふたりきりで帰ることができた。

 だから幼馴染のことを不快に思っていないか少し不安だった僕は先輩にまずは謝ることにした。


「白井先輩、ごめんなさい。いつも幼馴染が迷惑をかけちゃって」


 と僕が告げると


「いえ、気にしていないとは言えませんけど以前から荒川さんを見ていて……周囲はなぜか荒川さんのせいにしていましたが実際はおふたりが荒川さんを慕っているとわかっていましたから。だから気にしないでくださいね。絶対に私が勝ちますから」


 と白井先輩は答えてくれた。けれどなんだろ? 理解してくれているという言葉の後に私が勝ちます? あれ、なんか違和感。


「えーと。今私勝ちますからって言いました? 」


 と僕は疑問に思い尋ねてみると


「はい。幼馴染に勝たなければ荒川さんは手に入れられないと分かっていましたから。なので正々堂々とおふたりとはぶつかっていきたいと思ってます」


 と白井先輩は答えてくれた。ただ……ぶつかるの? と僕がそんなことを考えていると


「そういえば呼び方でも負けていますね。荒川……いえ透さん。私の名前は葉子ようこです。これからは葉子と呼んでくださいね」


 とニコっと笑う葉子はなぜか獲物を狙うそんな動物の目のように見えた気がした。




「では透さん。私を葉子と呼んでくださいな」


 と白井先輩に急かされる形になったので僕は


「うん。葉子せんぱ……」


 僕が呼ぼうとすると


「先輩はいりません」


 と言い終わる前に告げられた。なので


「葉子。これでいいかな? 」


 と僕はちょっとビクビクしながらそう告げると


「嬉しいです。名前で呼んでもらえました」


 と本当に嬉しそうに笑ってくれたので僕は思わず安堵したのだった。それにしても僕は噂では葉子はおとなしい性格とか聞いていたんだけどなんて考えていると


「透さん、どうかされました? 」


 と葉子から尋ねられたので素直に


「いえ、葉子は大人しい人って聞いてたんですこし思っていた印象と違うかなあって思って」


 と僕が言うと


「うーん、そう表立ってなにかしようとしませんしどちらかというと周囲から見れば大人しいのかもしれません。ですが私も欲しい物があれば前に出ますよ? 」


 と葉子は答えてくれた。大事なところではきちんと発言するってことかな? と僕はその言葉の意味をそう捉えていた。


「それにですね。大人しく引っ込み思案なだけだったら告白なんてしていませんよ。まあそれだけ覚悟を持って透さんに告白したと思ってくださると良いかもしれません」


 と続けた葉子さんが軽い気持ちで僕に告白したわけではないとわかるそんな言葉を僕に告げたのだった。




「でも今日初めてふたりきりで過ごせたかもしれませんね」


 今思い返すといつも幼馴染が近くに居たと思う。多分初めてだと僕は思っていると


「だってそれは私が生徒会の人におねが……いえいえなんでもありません。そうですね、絶対初めてですよ」


 と葉子はなにか言おうとしたけれど途中でやめてしまった。まあ良いかと僕は気にしないでおこうと話を続けた。


 話した内容はほとんど葉子のことだった。葉子の方も僕に知ってもらいたいという気持ちがあるからなのかいろんな事を話してくれた。けれど時間はあっという間に過ぎるものでふたり別れる分岐へとたどり着く。


「ここでお別れですね」


「そうですね。気をつけて帰ってくださいね、葉子」


 と僕がそう言うと


「こうやって透さんから気遣って頂ける言葉を頂けるだけで私は幸せです……透さんまた明日」


 葉子はそう言葉を残し僕たちは別れた。




 僕はそんなふたりきりで初めて過ごした余韻に浸っていると


「くそっ透ーー」


「あっいたいた。透くんーー」


 幼馴染ふたりが学校から走って僕を追いかけてきたようだった。ふたりは僕にたどり着くと


「白井先輩とはもう別れたのか? くそっやられたよ」


「ほんとだよね。私達じゃなくても良かったのに……」


 とよくわからないことを言っていた。


「ん? どういうこと? 」


 と僕は訳が分からずふたりに確認すると


「生徒会に俺と柚ふたり一緒に呼ばれて用事を頼まれたんだけど……なんで俺たちが呼ばれたのかわかんなくて。誰でも出来ることだったからね。で、納得いかなくて問い詰めてみたら白井先輩の指示だったってことだ」


「そうそう、ふたりで帰りたいからきっとしたんだよ。やられたわって思ったわ」


 とふたりは文句を言っていた。ってそういえば葉子は私が生徒会の人に……なんたらかんたら言ってたな。こういうことかと僕はふたりの言葉を聞いて葉子は本当にやる気なんだなと


「はははっなにが大人しいだよ。面白いな」


 そう言いながら笑ってしまった。


「だよな。まさかはめられるとは思ってなかったよ」


「翔、ほんとだよね」


 そんな事を言うふたり。

 


 さて、結局最後は3人で帰ることにはなったわけだけど僕は今日の葉子を見せられるとこれなら結構この関係も上手くやっていけるのかななんて思うのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る