第9話 BKS①
『魔法』とは魔術やそれに属する現象の総称で、この魔法というものの存在は太古の昔からあった訳ではない。
50年前まで、この世界に魔法という概念は存在しなかった。
それこそ映画やおとぎ話の中だけの空想上の力に過ぎず、どんなに頑張ったところで習得する事なんて出来なかった力である。
それが50年前に突然芽生えたのだ。
全世界で目に見えてはわからないような突然変異が起きたのである。
それが魔力因子と呼ばれるものであり、これこそが魔術を使う上で核となり、人々に新たな力を与えるに至った。
では何故50年前、全世界で突然変異が起きたのか。
その答えがこの八目島にある。
学校が終わった後、私は自前のスクーターに跨り人気の少ない道を颯爽と駆け抜ける。
去年必死にバイトして免許取ってバイクを買っておいて良かったと今は去年の私を褒めてあげたい気分だ。
まさか今年になっていきなりこんなに山の上に引っ越す事になるとは思ってもみなかったわけで。
何か買い物に行くにもこの周辺の店じゃたかが知れているので、本気で買い物をするには八目島の商業地区に行かなければならない。
この八目島メガフロートは巨大な島であり一つの都市でもある。
元々は人口一万人に満たない程の島だったようだが、50年前の事件が原因でこの島に人が集まるようになったため、都市開発が進み今では学生も含めて人口30万人程まで膨れ上がっている。
故にこの島の中にはいくつもの町が存在していて、地域も細かく分かれているようだが私にはよくわからない。
商業地区周辺と港部分から広がるメガフロートに至るまで非常に近代的な側面もある一方、島の奥地の方は自然が豊かで長閑な風景となっている。
私の今いるZクラスの校舎がある場所はその中間と呼べる位置で、商業地区にアクセスするのも決して近いとは言えない。
一応バスも出ているがいちいち待ってるのも時間の無駄な気がしてならないという性格の私にはバイクという乗り物はピッタリと言える。
私が魔力暴走を起こしたのは春休み。
バイトの帰り道、いつも通らぬ道を何となくツーリング気分で通った時、私は恐怖体験をした。
あれからバイト先には一度も顔を出せず、そのままZクラスへの編入となってしまったので、今日は以前のバイト先へ顔を出しに行く事が目的である。
下り坂を風を切って走るとまるで世界が違って見える。
見えてくる木々や街灯が一瞬で後方へと押し流されていく。
それを感じるとまるで私は風になった気持ちになるのだ。
風、それは私の主属性。
まさに私を表しているような属性。
しかも篝先生は憑依と言っていた。
風の憑依はつまり風を纏うというような使い方をするみたいで、自身の周りに風を発生させて身体能力の補助をするような役割だという。
使いこなすと、一時的に飛行に近い状態を作り出すことも可能だと聞いた時は心が弾んだ。
私が空を飛ぶ日がいずれ来るかもしれない。
それは一体どういう気持ちなのだろう。
力のコントロールに意識を集中し過ぎて空を飛んでいるなんて感じる余裕が無いのか、ピーターパンのように自由に飛び回って楽しめるのか。
そんな事を考えていたらバイクのスピードメーターは制限速度を大きく上回ってしまっていた。
無意識のうちにかなりの速度が出てしまっていたが、幸い事故を起こすことも捕まる事もなく、想定よりも随分早く商業地区まで下って来る事に成功。
当初の予定だとここに辿り着くのは日が暮れた後くらいだったが、水平線の向こうにまだ沈みきらない太陽が半身を水につけている。
周辺の建物は下ってくるにつれて大きくなっていき、商業地区に入る頃には巨大なビル群が待ち構えていた。
飲食店や居酒屋、ショッピングモール、ゲームセンター、カラオケ、ホテル、事業所など様々な建物が所狭しと立ち並ぶ光景は壮観である。
この八目島は今や世界でも有名な観光地なのだ。
何故ならここには50年前、宇宙から降ってきたあの
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