復活の勇者
轟々と燃えさかるバランスボールくらいの大きさの大きな炎の玉が、急遽タキエルにこしらえて貰った訓練用ゴーレムに命中し、ゴーレムの表面を軽く溶かし、そしてゴーレムが再生する。
「ふっ。これはメ○ゾーマではない。メ○だ!!!」
「す、スゴいです! 流石マスターさん!! ……メ○ミくらいの威力だと思いますがそれでも、それがメ○だなんて信じられません!」
「ふっこれが大魔王様の実力なんだよ……って言うかメ○ミってなんだよ。一言多いぞ、タキエル」
「えへっ、すみません」
てへっと舌を出して笑うタキエルには後でお仕置きをするとして、俺がやりたかったこととは、ずばりこれだった。
魔法である。
俺は大魔王になったことで魔法が使えるようになったのだ。
完全強化されたステータスや、大魔王の補正は伊達じゃないようで、魔法を使ったのは初めてだがまぁまぁの精度だった。
尤も、大魔王の補正や完全強化を持ってしてもメ○がメ○ミになる程度の強化しかされないあたり、それの自力がどんだけへぼなんだって話になるが……。
世の中才能が全てじゃない。
運とDPがあれば、俺でも勇者と互角に戦えるだけの実力が得られるのだ。
「とは言え、使いたい魔法はこれだけじゃないんだよね」
「へぇ。そうなんですか」
「一応大魔王になったことで初級魔法全般、どの属性も覚えているんだよね、俺」
「へ、へぇ……なんか、ちょっと嫌な予感するんですが」
そしてその属性の中には『精力増強』とか『感覚鋭敏化』みたいな強化魔法から『催淫』などの状態異常系まで様々である。
とりあえず、精力増強を自分にかけて『感覚鋭敏化』と『催淫」をタキエルにかけた。
「へぁっ!? な、なんか身体が熱いです! マスタぁさん……ふ、服がちょっとこすれるだけで、もう……」
「ふふふっ。魔法を手に入れた瞬間から、まずはタキエルにこうして使おうと決めていたんだ!」
「い、いやー」
この後、めちゃくちゃセッ○スした。
◇
「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
「おぉ、勇者死んでしまうとは情けない」
「勇者さん……」
「勇者様……」
時は二ヶ月半ほど遡って、あの地獄の日――あの男に好き放題やられたあげくに、ロード・オブ・オークの残虐な処刑を受け、死んでしまった少し後のこと。
膣内に目掛けて容赦なく突き刺された黒槍の痛みと、愛する仲間が犯され殺されてしまっているというのになにも出来なかったというショックが私の精神を崩壊させていた。
許さない。許さない。許さない。ユルサナイ…………。
ジワンジワンと痛いのか冷たいのか熱いのかさえも解らないが、槍に突き刺された下腹部がひくついているような感触。
子宮を貫かれた喪失感と、本能的な恐怖。
愛する恋人であり、仲間である賢者と聖女が辱められた挙句に殺された哀しみと、それを許可したあの男への憎しみと怒り。
信じられない……かつて仲間だった相手に、あんな非道な事をするだなんて許せない。
人間のクズ……いえ、最早人ですらないのかしら?
その時の私はどす黒い憎しみと怒りに震えていて、自分が死んだことにさえ気付くのに時間が掛かってしまった。
「勇者様!」
「勇者さん!」
でも、そんな私を深い闇の中から救い出してくれたのはやはりというかなんというか、私の愛する仲間である、聖女と賢者の二人だった。
目が覚めると、鼻が触れそうなほど近くには綺麗な女の子の顔があった。
甘い香り。柔らかな感触は……膝枕でもしているのかしら?
「…………ごめんなさい。私……」
「良いんです、勇者様! ……むしろ謝るのは私たちの方で」
「そうですよ! 勇者様は優しすぎます! ……辛い死に方をしたのはむしろ勇者様の方なのに」
「いいえ、それでも……」
「あの、勇者よ。水を差すようで悪いんだけど、そう言うのは生き返ってからにしてくれません?」
「あぁ、申し訳ありません。女神様」
困ったように声を上げたのは、日本を守護する女神様。
本人は「妾に名前はない」と頑なに言っているけれど、多くの人は彼女のことをアマテラスと呼んでいる。
日本を守護する女神様と言えばやっぱり天照大神以外にありえないだろう。
「それでは早速……」
「あの、女神様!」
「なんぞ?」
「その……彼女たちは……」
「当然生き返らせる。彼女たちが死んでから勇者が死ぬまでに二時間経ってなかったからの。……死に方こそ凄惨だったものの、そこだけは不幸中の幸いであったな」
そう言って、私たちを太陽のような暖かい光包んでくれる女神様の言葉に私は心底安心する。
あぁ。私の恋人たちもきっちりと生き返って、また冒険が出来るのだと。
安堵している内に、私たちはいつの間にかとある山の頂上に移動していた。
ここは……気になって軽く鑑定してみると『高千穂峰』と出る。
ってことは鹿児島……いや、宮崎なのかしら? 瓊瓊杵尊も訪れたと言う……軽く見渡してみると、古びた鉄の棒が刺さっている。
これが聖剣『
《あぁ、それと。汝らを生き返らせるついでに、身も綺麗にしてやったぞ。汝らは処女の方が力が出せるじゃろうからな》
「あぁ、ありがとうございます! 女神様……良かったわね、賢者。聖女」
「はい……」
「女神様に感謝です」
私も賢者も聖女も、女神の一言で身体が清められた気がした。
あの屈辱も、苦しみも、絶望も、全ては女神様の救いの手によって綺麗にぬぐって貰えたのだ。
これで、私たちはまた頑張れる。
頑張って、強くなって――それこそあんなクソ野郎なんて剣の一振りで容易く殺してやれるくらいに強くなって、復讐して、大魔王を滅ぼして、世界を救って、女神様の恩義に応えよう。
私は、心の底からそう強く思った。
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