第14話

 母親の以来、二人きりで会うことは避けるようにした。メールだけのやりとりで、学校でも二人だけで会話するようなことは避けた。

 けれど、彼に別れを切り出すのは難しかった。若い彼が別れることを納得するとは思えない。でも、このままでは彼の将来も、私の立場もよくなることはない。そこまでの覚悟もなしで、彼とつき合ったことを後悔した。彼を好きになったことにではなく、自分の浅はかさに悔いが残る。

 苦しかった。彼を愛おしむ気持ちと、今の生活を守りたい気持ちの狭間に立つ。

 そんな中、一度だけ彼に抱かれた。駅で待ち伏せされ、強引に彼に連れ出されたのだ。彼の最寄りの駅を通り過ぎた先の小さな駅で降り、線路脇を通ってホテル街に行った。バーとホテルが建ち並ぶ一角に、私たちは入った。そこで、取るものも取りあえず服を脱いで抱き合った。彼は夢中で私の胸にむしゃぶりつき、私の中に入って突き上げ、そして果てた。そんなことを何度も繰り返した。獣のような感情の爆発の果てに、二人で横たわり、私は泣いた。後ろから彼に抱きしめられたけれど、それでも泣いた。

「先生、ごめんなさい」

 乱暴にされたことを、私が嘆いたと思ったらしい。背中越しに抱きしめ、肩や髪にキスをしながら、劉天は何度も謝った。私は首を振り、子どものように泣きじゃくった。彼は言葉を失ったように、そんな私をただただ抱きしめていた。

 


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