狂域の巫女
電咲響子
狂域の巫女
△▼1△▼
「ハァ……ハァ……
「ざまあねえな。やりたい放題できると思ったボケがよ」
眼前には
「ご苦労。こいつの装備は各々自由にして構わん」
謎の旅人からもらったカネで結成した自警団は、めざましい成果をあげていた。
「リョウさん! この
新米の狩人、スアラが血にまみれたペンダントを差し出してくる。レアメタルで仕上げられた逸品だ。
「うん。それは君のものにしてもいいし、換金して"ロージア"の活動費にしてもいい」
「今すぐ売り払ってきます!」
謎の旅人からもらったカネで結成した自警団は急成長を遂げ、今や
ただ、俺には目標がある。カナデの店がある"惨区"に行かなくては。
「よし、闖入者への対策も整ってきたな。じゃあ、そろそろ行くわ」
「リョウ、本当に行くのか? あそこはマジで
「初志貫徹」
俺は仲間たちに手を振りながら、その場を立ち去った。
△▼2△▼
「がはっ!」
俺は大地に跪き、血反吐を撒き散らす。
「へーい。どうしたどうした」
「もやし野郎が腕試しってか? 冗談きついぜ」
想像をはるかに超えていた。危険だなんてレベルじゃない。いったいこいつらは。こいつらは何者なんだ。
「そろそろトドメさしちゃうかな」
こいつらも変だが、武器の形状も変だ。ぐにゃぐにゃに曲がった棒の先に四枚の刃。使い勝手は最悪だろう。もっとも、まともな武器ならとっくにミンチにされていたが。
「へへ…… これに見覚えねぇか?」
俺は
「……おい」
「ありゃ
「知り合い以上の関係だろうな」
「面倒くせえ。次そのツラ見たらぶち殺すからな」
ならず者たちが姿を消す。助かった。カナデ。あんた、やっぱすげぇよ。
△▼3△▼
幾層にも積み重なった
そこは情報通りの場所にあった。
「お邪魔さま! 宅配便でーす!」
ドアをノックしながら真っ赤な嘘をつく。
「どうぞ」
カナデの声だ。俺は扉をあけ――
ドゴン!
俺の頭を何かがかすめる。椅子に座ったカナデの銃口がこちらに向いていた。
「や、やっとのことで来たのに、その、ひどいんじゃないかと……」
「貴様がリョウという証拠はない。変化の術が流行ってるからな」
「うるせぇ! てめぇにゃ見えねーのかこのボロ雑巾よろしくの体がよぉ!」
「ふふっ」
カナデが銃をおろす。
「ようこそ、ザンカクアへ。ああ…… 一般的には"惨区"だったかな」
「…………」
カナデの治療は医師さながらの腕前だった。最後の包帯を巻き終え、カナデがしゃべる。
「音を
「ふん。何かに集中してれば、わからない時もあるんじゃねぇのか」
ぞくっ。死んだ。と、思った。ほんの一瞬。殺意が俺の首を切り裂いた。
「まあね。でも今日は暇なんだ。一曲奏でようか?」
直後に殺意は消え、カナデが微笑みながら言う。なるほど、これが深部の日常、なのか。
「そうだな。青―― 青系を頼む」
「了解」
カナデは銃弾を手に取り、
想い(音は罪)、
記し(色は罰)、
詠み(心は静)、
念ず(体は涼)。
奏で終えた暁に、"
「ほら。これでどうだ」
「ありがとう。いきなり来て、いきなり注文して、そんで作らせて…… わりぃな」
俺は全財産の札束を机に置いた。
「誠実であること。それは何よりも大切なことだ」
カナデは札束から十分の一だけ抜き取り、残りを返してきた。
「リョウの作った組織の活躍、見守ってるよ」
△▼4△▼
警報が鳴る。闖入者だ。俺はそいつの正体を見極め、
「リョウさん! あの
新米の狩人、スアラが叫ぶ。俺は銃に魔弾を込める。いつか平和が訪れるその日のために、俺は
<了>
狂域の巫女 電咲響子 @kyokodenzaki
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